骨粗鬆症の検査と治療!薬の種類・予防は食事と運動です。
骨折はスポーツなどで多くみられる怪我です。
骨折をあまりにもしやすかったり、少しの力でも骨折してしまう場合は骨粗鬆症の可能性があります。
今回は骨粗鬆症について解説していきます。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは骨密度の低下によって骨が脆くなり骨折しやすくなる骨の疾患です。
主に高齢者や閉経後の女性に発症します。
骨折によって生活レベルの低下が懸念され、特に高齢者の寝たきりやロコモティブシンドロームの大きな要因となっています。
骨粗鬆症は高齢化が進んでいる日本では患者数が大幅に増えており、1300万にもなるといわれています。
その7~8割は女性となっており、年齢が増えれば増えるほど骨粗鬆症に罹患している割合は増えていきます。
骨の新陳代謝について
骨は人が生まれてから死ぬまで新陳代謝を繰り返しています。
皮膚などと同様、常に新しいものが再生され、古いものは壊されて行く仕組みとなっています。
骨の場合は新しい骨を作る「骨形成」と骨を壊す「骨吸収」の2つのサイクルによって新陳代謝が繰り返されています。
このような骨の新陳代謝のサイクルを「リモデリング」と呼んでいます。
骨を形成する細胞は「骨芽細胞」、骨を壊す細胞は「破骨細胞」といいます。
骨芽細胞は、骨の成分であるコラーゲンを生成しそこに血中に含まれるカルシウムが沈着していく事で新しい骨が作られていきます。
その一方、破骨細胞は古くなったコラーゲンやカルシウムを溶かして血中に運びだしています。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症は骨のリモデリングのバランスが崩れてしまい骨の破壊が進行してしまうことで起こります。
骨粗鬆症になると骨を破壊する破骨細胞が活発に働く一方、骨を形成する骨芽細胞の働きが弱くなり、骨の密度が低下してしまいます。
左・・・正常な骨は骨の密度は高い状態です。
右・・・骨粗鬆症になっている骨は密度の低いスカスカな状態になってしまいます。
昔よくあったふ菓子のようなイメージで捉えるとわかりやすいかと思います。
なぜ骨粗鬆症は女性に多いのか?
骨粗鬆症の7~8割以上は女性といわれています。
なぜ女性に多くみられるのか、それはホルモンの働きが関係しています。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンというホルモンは骨の新陳代謝に対して、骨吸収の働きを抑えて、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
女性の場合、閉経後はこのエストロゲンの分泌が弱まってしまい、骨吸収を抑える事が出来なくなります。
これによって骨の新陳代謝のバランスが崩れて骨密度の低下が進むのです。
生活習慣の乱れも骨粗鬆症の原因となる
食生活の乱れや過度なダイエット、栄養不足はカルシウム、ビタミンD不足に陥り骨粗鬆症の原因になるといわれています。
また過度な喫煙や飲酒も骨粗鬆症のリスクが高まる原因といわれており注意が必要です。
その他、運動不足によって骨への刺激が少なくなる事も指摘されており、生活習慣の乱れは骨粗鬆症の原因になるのです。
病気や薬の影響も骨粗鬆症の原因となる
特定の病気にかかってしまうと骨密度の低下が起こり骨粗鬆症となる場合があります。
●糖尿病
●関節リウマチ
●動脈硬化
●慢性閉塞性肺疾患
●腎臓病
など
これらの病気では骨の新陳代謝の関係するホルモンが不足したり、骨形成に関係する細胞に異常が生じることで骨粗鬆症を引き起こす事があります。
また薬の長期使用による副作用も骨粗鬆症の原因となる事があり、代表的なものにステロイド薬の長期使用が指摘されています。
骨粗鬆症の分類
骨粗鬆症はその原因によって大きく2つにわけられます。
原発性骨粗鬆症
閉経や老化によって発症する骨粗鬆症を原発性骨粗鬆症といいます。女性ホルモンのエストロゲンの低下やカルシウムの吸収を助けるビタミンDの不足などが原因となります。
●閉経
●加齢
●妊娠後骨粗鬆症
●若年性骨粗鬆症
続発性骨粗鬆症
何か他の疾患が原因となって発症する骨粗鬆症を続発性骨粗鬆症といいます。
続発性骨粗鬆症はさらに栄養性、薬物性、不動性、先天性とにわけられ以下のようなものが原因となります。
●栄養性
胃の切除後
吸収不良症候群
神経性食思不振症
●薬物性
ステロイド、抗てんかん薬、メトトレキサート、ワーファリンなどの長期使用
●不動性
寝たきり
脳卒中などの麻痺
●先天性
骨形成不全症・マルファン症候群などの生まれつきの病気
●生活習慣病
糖尿病
慢性腎臓病
慢性閉塞性肺疾患
●その他
関節リウマチ
アルコール多飲
肝臓疾患
骨粗鬆症の検査
骨粗鬆症の検査は病院にて機材を用いて行われます。
骨密度は若い人の骨密度の平均値と比べて何%であるかで表されます。検査の種類は以下に分けられます。
●DXA(デキサ)法
一般に腰の骨や大腿骨、前腕の骨を用いて計測されます。エネルギーの低い2種類のX線を使って測定をします。
●超音波法
踵やスネの骨に超音波を当てて測定します。X線を使用していないため妊婦の人でも計測可能です。
●MD法
X線を使って手の骨とアルミニウム板とを同時に撮影して骨とアルミニウムの濃度を比べる事によって測定します。簡易的に行えるため診療所などで普及しています。
この他レントゲンやCT、MRIといった画像検査や血液検査、尿検査による骨代謝マーカーの測定なども行われます。
骨粗鬆症の予防
骨粗鬆症の予防で大切になるのは食事療法と運動療法です。
食事療法
骨を形成するカルシウム、骨の吸収を促進するビタミンDを多く含む食事を取る事が骨粗鬆症の予防になります。
日本人は慢性的にカルシウム摂取が不足しているといわれており、骨量を増やすためには一日800mg以上のカルシウム摂取が必要とされています。
<カルシウムを多く含む食品>
牛乳・乳製品
大豆・大豆製品
緑黄色野菜
魚介
海藻類
<ビタミンDを多く含む食品>
きくらげ
さけ
うなぎ
サンマ
など
またカフェインやアルコール、塩分の過剰摂取はカルシウムの排出を促進してしまうため取り過ぎに注意が必要です。
●運動
運動を行うことによって骨粗鬆症の予防や改善に効果があるといわれています。
骨に適度なストレス負荷をかけることによってその刺激を受けて骨にカルシウムが沈着しやすくなったり、骨芽細胞が活性化するといわれています。
特に骨粗鬆症に効果的な運動としては衝撃や負荷の大きい運動であるといわれています。
アメリカのパメラ・ヒントン博士は週に6時間、ランニングまたは自転車に乗っている20~50代男性の骨密度の違いについて研究をしました。
すると骨粗鬆症予備軍とされる骨密度が低い割合が、ランニングをしている人は19%だったのに対し、自転車に乗っている人は63%だったとの結果が得られています。
つまりランニングのように足からの衝撃の負荷がある運動の方が骨粗鬆症の予防には適している可能性が高いということになります。
その結果を踏まえると予防に適する運動としては縄跳びやバレーボール、ジョギングなどが挙げられます。
しかし骨粗鬆症は高齢者に多く見られるため、これらの負荷の大きい運動は逆に膝や腰を痛めてしまうリスクがあります。
高齢者にオススメの運動は以下のものです。
①カーフレイズ
踵を挙げてつま先立ちをし、床に降ろします。
この時少し勢いをつけて踵に衝撃を加えると骨への良い刺激となります。
②片脚立ち
椅子などにつかまり片脚立ちをしてその姿勢を保持します。
③背筋運動
うつ伏せになって肘で体を支えて状態を起こします。
※腰や背中に痛みがある場合は無理に行わないようにしましょう
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心となります。薬物療法の種類は以下に分けられます。
これらは服薬や注射によって投与されます。
骨が壊されるのを抑える薬
・女性ホルモン
閉経後の女性対象。骨吸収を抑えます。
・カルシトニン
骨量の減少を抑え、痛みを和らげます。
・ビスホスホネート薬
骨量を増加させ骨折を予防します。
・イプリフラボン
骨量の減少を抑えます。
・ラロキシフェン
骨量を増加させ骨折を予防します。
骨が作られるのを促す薬
・ビタミンK2
骨量の減少を抑え、骨形成を助けます。
骨の吸収と形成を調節する薬
・活性型ビタミンD3薬
腸からのカルシウム吸収と骨の形成を助けます。
・カルシウム剤
食事で不足しているカルシウムを補います。
まとめ
●骨粗鬆症とは骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨の破壊が進行してしまう病態で高齢の女性に多発する
●予防には食事療法や運動療法が有効である