サルコペニアを予防しよう!フレイルとの違いと 食事で栄養。体操 も
高齢化社会が懸念されている中で、サルコペニアという筋量低下、筋力低下が問題となっています。
今回はサルコペニアについて解説していきます。
サルコペニアとは
サルコペニアとはギリシャ語で、筋肉を意味する「sarx」と、喪失を意味する「penia」を組み合わせた言葉が語源となっています。主な意味としては加齢に伴って生じる筋肉量、筋力の低下として理解されています。
サルコペニアの症状
サルコペニアは筋肉量、筋力が減少し、身体機能に様々な支障をきたします。
主な症状としては
・歩行スピードが遅くなり、移動に時間がかかる
・階段の昇り降りが困難になり、手すりが必要となる
・バランスが悪くなり、転倒しやすくなる
・着替えや入浴などの日常生活動作がしにくくなるわ
・重いものを持ち上げたり、荷物を運ぶ事が困難なる
・ペットボトルの蓋をあける事が困難なる
サルコペニアの原因
筋肉の量は、筋タンパク質の合成と分解が繰り返されている事によって維持されています。サルコペニア筋肉量が減少した状態で、筋の分解の働きが、筋の合成の働きを上回った場合に生じます。
主な原因としては加齢によって筋を増加させるホルモン分泌の低下、筋肉を動かすための細胞の死、栄養不足、運動不足など様々な要素が原因となります。
サルコペニアの分類
サルコペニアには原因によって一次性サルコペニア、二次性サルコペニアに分類されます。
一次性サルコペニア
・加齢性サルコペニア
加齢以外に明らかな原因のないもの
二次性サルコペニア
・活動に関するサルコペニア
寝たきり、不活発なスタイル(生活)、失調や無重力状態が原因となり得るもの
・疾患に関するサルコペニア
重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの
・栄養に関するサルコペニア
吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴うもの。
摂取エネルギーおよびまたはタンパク質の摂取不足に起因するもの。食欲不振をきたす薬物の使用によるもの。
サルコペニアは何科を受診すれば良い?
サルコペニアが疑われた場合、整形外科、神経内科を受診する事が望ましいです。
サルコペニアの診断基準
サルコペニアの診断基準は筋肉量の低下、身体能力の低下、筋力の低下によって診断されます。
筋肉量の低下
筋肉量は主に、骨粗鬆症の診断に用いられるDXA(デクサ)という骨力測定装置を使用して測定されます。
またBIA法という、体脂肪計のような装置を用いて筋肉量を測定する事も可能です。
DXA法:男性7.0kg/㎡未満、女性5.4kg/㎡未満
BIA法: 男性7.0kg/㎡未満、女性5.7kg/㎡未満
他にはBMI※値が18.5未満、下腿集計(ふくらはぎの一番太い部分の太さ)が30cm未満
※BMIとは
肥満度や低体重の判定をする計算式で
BMI値=体重(kg)÷(身長m×身長m)
で表される。
筋力の低下
握力が男性26kg未満、女性18kg未満
身体能力の低下
歩行速度が0.8m/秒以下
上記のいずれかが該当すればサルコペニアである可能性が高くなります。
簡易的な見分け方として以下の方法もあります。
指輪っかテスト
指でふくらはぎの太さを測定します。親指と人差し指で輪っかを作って、ふくらはぎの一番太い部分にはめてみます。輪っかに隙間が大きく出来る場合はサルコペニアである可能性が高くなります。
歩行速度テスト
横断歩道を渡る時に、青信号で渡り切れるかどうかをテストします。今までは青信号の間に渡り切れていた横断歩道で、渡り切れなくなってしまった場合はサルコペニアである可能性が高くなります。
サルコペニアが招くフレイルとは?
フレイルとは虚弱という意味で加齢とともに心身の活力が低下した状態です。
移動能力、筋力、バランス、運動処置能力、認知機能、栄養状態、持久力、日常生活の活動性、疲労感など幅広い要素が含まれます。
サルコペニア(筋肉の低下・筋量の低下)がフレイル(虚弱状態)を招くように、この二つの状態はお互いに関連しあっています。
フレイルの診断基準
フレイルは以下の項目によって判断されます。
●体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
●疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
●歩行速度の低下
●握力の低下
●身体活動量の低下
これらの5項目のうち、3つが当てはまるとフレイルとみなされます。
サルコペニアとフレイルの違い
サルコペニアは筋肉量や筋力の低下による身体機能面のみを主因としているのに対し、フレイルは身体面だけではなく、精神、心理面などを含み、社会的な虚弱を含みます。
サルコペニアの予防
サルコペニアを予防するためには適切な運動とバランスの取れた食事摂取が重要となります。普段の生活習慣を見直し、健康な生活を送っていく事が大切です。
食事
サルコペニアを予防するには良質なタンパク質を摂取する事が重要です。筋肉を作るにはタンパク質が必要で、そのタンパク質はアミノ酸から出来ています。体にアミノ酸は20種類ありますが、そのうち体内で合成出来ないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。体内で合成出来ないため、食事によって摂取するしか方法がないため、バランスの取れた食事摂取が重要です。
タンパク質を多く含み、必須アミノ酸のバランスが良い食材は、肉、魚、卵、大豆、大豆製品、乳製品が挙げられます。
他には骨粗鬆症を予防するカルシウムやビタミンDを摂取する事も重要です。ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあり、魚介類、きのこ類、卵などに多く含まれています。
特に運動後の1時間以内にタンパク質を摂取する事が有効といわれています。
運動
サルコペニアを予防するには運動は非常に重要です。中でも負荷をかけたレジスタンストレーニングやウォーキングなどの有酸素運動が有効といわれています。
筋力トレーニングとして自宅で行える簡単な方法を紹介していきます。
①スクワット
足を肩幅に開き、膝を曲げていきます。
・膝がつま先より前に出ない事
・膝とつま先が同じ方向を向く事
・背中を丸めない事
・お尻を後ろに引く事
がポイントとなります。
②ブリッジ
仰向けで膝を90°程度曲げてお尻を上に持ち上げます。腰を反りすぎないようにして行いましょう。
③横上げ
横向きに寝て、脚を真上に持ち上げます。
・上半身が後ろに倒れないように
・膝のお皿は正面を向く
・骨盤が後ろに倒れないように
がポイントとなります。
④がに股開き
横向きに寝て膝を曲げたまま、脚をがに股に開くように持ち上げます。
・上半身が後ろに倒れないように
・骨盤が後ろに倒れないように
がポイントとなります。
⑤腿上げ
椅子に座った状態で腿上げをします。
・上半身が後ろに倒れないように
・背中が丸まらないように
がポイントとなります。
⑥片脚立ち+横上げ
立った状態で脚を真横に挙げます。
転倒しないように椅子などに捕まって行いましょう。
⑦片脚立ち+後ろ上げ
立った状態で脚を真後ろに挙げます。
転倒しないように椅子などに捕まって行いましょう。
⑧つま先立ち
立った状態で背伸びをするようにつま先立ちをします。
転倒しないように椅子などに捕まって行いましょう。
まとめ
・ サルコペニアとは筋肉量、筋力の低下した状態をいい、歩行スピードの低下や物を持ち上げる事が困難になり様々な支障をきたす病態である。
・ 予防のためには食事と運動が重要である。