現代人に急増する新型栄養失調とは?原因・症状・治療!食事法も
栄養失調というと、「食物の供給が足りずに起こるもの」というイメージがありませんか?
しかし、現代では「新型栄養失調」として現代人ならではの栄養失調が問題となっているんです。
現代人に栄養失調?どういうことなんでしょうか?
今回は管理栄養士の視点で栄養失調の原因と症状・オススメの食べ物について解説します。
栄養失調とは
栄養失調とは食物の摂取量が足りずに、エネルギーや栄養素が不足して起こる身体障害のことをいいます。
発展途上国では深刻な問題になっており、幼児にとっては命にも関ります。
食べていても栄養が足りない!!新型栄養失調!
では新型栄養失調とはどういうものなのでしょう?
新型栄養失調とは、食べているにも関わらず、そしてカロリーが十分に足りているのに必要な栄養素が摂取できずに栄養不足になってしまう栄養失調のことです。
仕事で忙しく食事を準備する時間が無いため出来合いのもので済ます、主食だけ準備しておかずがない。
また、女性であればダイエットなどを意識して食事制限をするでしょう。
それにより必要な栄養素が足りていなかったり、単品ダイエットなどをすればもちろんさまざまな栄養素を摂取する機会がなくなってしまいます。
まさに現代人だからこそ起こりうる栄養失調といえます。
そして最も問題なのが高齢者で、高齢者は現代だからではなく昔から問題視されていたようです。
ぽっこりお腹の原因は栄養失調?
ダイエットで痩せたのにお腹だけぽっこり出ている・・・。
そんな経験はありませんか?
もしかしたら栄養不足でお腹がぽっこりしているかもしれませんよ?
その理由はさまざまありますが、ひとつは胃腸の機能低下により腸に不要なものが溜まり下腹がぽっこりしている状態です。
必要な栄養素が入ってこない体は代謝が落ち、免疫力が低下します。
それにより内臓も冷え胃腸機能の低下を招くのです。
胃腸がちゃんと機能しなければ食物の消化吸収がうまくいかず、腸の中は悪玉菌が増えガスや不要なものが溜まってぽっこりお腹の原因になってしまいます。
またダイエットにより代謝が落ちた体は冷えを招きますが、この冷えにより下半身に脂肪がつきやすく、本来落ちるはずの脂肪も落ちにくくなり、またむくみも招いてお腹周りの脂肪だけ落ちないという状態になってしまうのです。
そしてこれは極端な例ですが、クワシオコールという栄養失調症があります。
発展途上国などで多くみられる症状ですが、穀物のみ摂取して摂取エネルギーが足りていてもたんぱく質不足によりお腹だけぽこっと出てしまうのです。
どうしてもお腹が痩せない!という人は、栄養不足が原因かもしれません。
新型栄養失調の原因は何だろう?
食べているのに何故!?
ここまで読んでいただいた方はうすうす感じているのではないでしょうか?
食べているのに栄養失調・・・。
栄養失調とは言葉の通り、栄養が不足しているということです。
必ずしも食べていないから栄養失調になるのではなく、栄養が不足しているから栄養失調になる。
食べる量が足りていても、必要な栄養が足りないということは栄養失調になりうるのです。
必要な栄養とは、三大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質))を基準として、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素が過不足なく摂取されている状態です。
三大栄養素は体を構成し、エネルギーを発生させる生体にとって重要な役割があります。
微量栄養素はそれらを円滑に働かせるためになくてはならない栄養素なんです。
そのため食べていてカロリーが足りていたとしても、栄養失調になることはありえるのです!
男性へ!メタボなのに栄養失調になる
方法は簡単です。
食べ過ぎてカロリーが過剰摂取になれば当然脂肪が増えます。
その食べたものが炭水化物や脂質にばかり偏っていて、他の栄養素が不足していたらどうなるでしょうか?
同じ「太る」にしても、食べた内容によっては筋肉などで体重が増えたり、皮下脂肪と内臓脂肪のつき方も変わってきます。
そして同じカロリー内であっても栄養素が不足している食事では脂肪もつきやすくなるんです。
栄養が不足しているから「メタボ」になっている可能性も否定できません。
バランスよく食べることはそれだけ他の体の組織を作ってくれますし、代謝のいい体作りに欠かせないんです。
お腹だけ異様に出ている人は栄養不足になっている可能性が大です!
食生活を見直してみませんか?
女性に隠れ栄養失調が増えています!
近年女性の「やせ」が問題になっています。
タレントやモデルに細い人が多いため、標準体重にも関わらず「もっと痩せたい!もっと綺麗になりたい!」と過激なダイエットを行ってしまったり、単品ダイエットや低糖質ダイエットなど、栄養失調まではいかなくても栄養不足により体にさまざまな不調が起こるのです。
これも新型栄養失調の一種です。
女性に不足しがちな栄養素は「鉄」です。
食事量を少なくすると動物性たんぱく質の摂取が減り鉄不足に陥りやすいのです。
ダイエットで摂取カロリーがただでさえ少ないのに、鉄不足で貧血を起こしやすくなります。
そうすると、免疫力が落ち感染症や風邪にかかりやすくなり、代謝も落ちて少しの食事でも太りやすい体になってしまいます。
食事量を極端に減らせば体が飢餓状態だと判断して大変危険な状態になります!
ダイエットして調子よく体重が減っていたのに、実は栄養失調になっていたなんて嫌ですよね?
ドキッとした人は、そのダイエットを見直した方がいいかもしれません。
高齢者に多い新型栄養失調
なんと高齢者の5人に1人がに新型栄養失調というデータがあります。
高齢者も女性と似ていて、食事量の低下による「低栄養」が多いです。
食事を準備するのが億劫で簡単なもので済ませる、体を動かさなくなって食欲がなくなりあまり食べなくなった。
そんな高齢者も新型栄養失調になりやすいのです。
栄養失調の症状とは?
栄養失調とはいうけれど、どんな症状が体に現れるのでしょうか。
自分に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
①お腹が膨らむ
クワシオコールという、栄養失調症によりお腹がぽっこりしてしまうのです。
そして、カロリーが足りていても栄養不足により代謝が上手くいかず内臓脂肪が蓄積されてしまい、いわゆる「メタボ」状態になりお腹がぽっこりしてしまう、又は胃腸の不調により老廃物が溜まってしまうなどの原因があります。
②足が浮腫むようになる
必要な栄養素の足りない体は代謝が落ちます。
代謝が落ちるということは血液の循環も悪く、体の隅々まで血液が行き渡らず浮腫みを引き起こします。
またたんぱく質が足りないと筋肉などの身体の組織が作られにくくなり、筋肉の少ない体は冷えを招き浮腫みを引き起こします。
足は浮腫みが起こりやすい場所ですから、足が浮腫んでいたらたんぱく質不足を疑ってみましょう。
③頭痛、めまい、吐き気、息切れ、疲れやすい
これらは主に貧血による症状です。
ダイエットなどをした場合不足しがちな栄養素に鉄が多く、鉄不足で貧血に陥りやすい。
又は単にカロリーの摂取不足により貧血、低血糖、低血圧なども招きこれらの症状が現れます。
④気力、体力がなくなる
体には必要な栄養素が不足しています。また、カロリーも足りません。
この様な状態の体は生きるために必要な栄養を蓄えておこうとし、放出するエネルギーが不足しているのです。
外に出すエネルギーが無いのですから、気力や体力がなくなるのも当然です。
⑤集中力、思考力がなくなる
これも④と同じで、生命を維持する為に脳が働きにくくなります。
脳が働かなければ集中力や思考力は落ちますよね。
⑥皮膚にトラブル
肌荒れやにきび、湿疹なども栄養不足からきている可能性が高いです。
肌の代謝を高め、維持する栄養素にはたんぱく質、ビタミンB群やビタミンCがあげられます。
そして脂肪(良質な油)も食事からカットしてしまうと肌荒れの原因になります。
これらが不足すれば肌の代謝がうまくいかず、肌荒れのもとになるのです。
「スキンケアに気を使っているのに…」と悩んでいる人は、これらの栄養素不足を疑いましょう。
⑦口内炎や口角炎ができる
口内の粘膜に起こるものを口内炎、唇にできるものを口角炎といいます。
いずれもビタミンB群などの不足により起こるもので、特に疲労や風邪をひいたときの免疫力が低下しているときに起こりやすいです。
栄養失調により免疫力が低下、それにビタミンB群の不足が重なると起こりやすいことから、口内炎や口角炎をよく発症する人は栄養が不足しているといってもいいでしょう。
⑧下痢や便秘の原因が栄養失調??
食物繊維や栄養不足により腸内環境が悪化し、下痢又は便秘が起こりやすくなります。
そして下痢が続けば更に栄養素が吸収されなくなり、もっと症状が悪化してしまうのです。
⑨摂食障害からくる不調
過激なダイエットをすれば拒食症や過食症などの摂食障害になりかねません。
摂食障害で現れる体の症状には、BMI18.5以下、無月経、頭髪が抜ける、骨粗鬆症などがあります。
精神的には食事をするのが怖く、痩せているにも関わらず自分が太っていると感じる、体重増加に恐怖を感じる、むちゃ食いや過食嘔吐、過激な運動、下剤乱用などがあります。
また無月経が続けば子宮が縮小し不妊症にもなりかねません。
そうなったら取り返しのつかないことになります!月経が止まっている人はすぐに治療をしましょう。
実はダイエットも危険!
うすうす感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
栄養失調になれば代謝が落ちることは何回も触れましたが、代謝が落ちるということは=痩せにくくなるという図式をせっせと作っているということです。
更に栄養失調になった体は生命を維持しようとなるべく脂肪を溜め込もうとします。そうるなると太りやすい体を作り上げるのは簡単なんです。
そして生命の維持が最優先ですから、そこに運動などの活動をしようとするときにエネルギーが足りません。
こういうとき体は何をエネルギーとして活動するのでしょうか?
筋肉や骨の組織を分解しエネルギーを確保しようとします。
そんなことあるの?とお思いでしょうが、実際過激なダイエットや摂食障害になると筋肉量や骨密度が落ちるんです。
管理栄養士の私にも経験があり、過激なダイエットをしていた時の骨密度が80歳台だと診断されてしまいました。(当時20歳)
「食べてないのに太りやすい…」そう嘆いている人は代謝が落ちている、筋肉や骨からもエネルギーをとられ、体が飢餓状態だと判断して、脂肪を溜めやすくなっている可能性が大です。
子供の栄養失調の症状
子供が栄養失調になると、大人とは違う症状も現れます。
成長障害
これは子供だけにみられる症状ですね。
身長が伸びない、体重が平均よりかなり軽い、手足に筋肉がみられず棒のような状態。
また月経が始まらない、言葉が遅い、ある程度成長したのに泣きじゃくるなどの症状が現れます。
マラスムス・クワシオコール
マラスムスとは栄養失調症の一種で、5歳以下の幼児に起こりやすく主に発展途上国などでみられる症状です。
主にエネルギー欠乏で起こり、標準体重の60%以下になり下痢をしやすいなどの症状が現れます。
クワシオコールは先ほども出てきましたが、体重低下がみられることもあり腹部膨満が特徴的で、下肢に浮腫みもみられます。
アレルギー体質
免疫力の低下により感染症などにかかりやすく、またアレルギー症状が起こりやすくなります。
高齢者の栄養失調の症状
高齢者の栄養失調の症状も特徴的なものがあります。
老化現象により筋肉や骨などさまざまな組織の細胞が減少するためどうしても代謝が落ち、気力も低下し食事も細くなりがちです。
そうして活動量も食事量も減るとどんどん細胞数が減少、老化が進みさまざまな身体障害が現れてきます。
主な症状としては筋力低下や骨粗鬆症、免疫力の低下による感染症にかかりやすい、浮腫みが出るなどがあげられます。
しかし高齢になればこれらの症状は老化現象により起こりやすく判断基準にはなりません。
高齢者の低栄養の特徴的なものしては、たんぱく質・エネルギー低栄養状態(PEM)にあるとされています。
判断基準は、血清アルブミン値が3.5g/dL 以下で、血液検査をしてみないとわかりません。
この状態になってしまうと死亡率が高くなるとされています。一刻も早く対処をしなければなりません。
また貧血も重要な栄養障害とされていて、血清アルブミン値と同様にヘモグロビン、ヘマトクリットの数値により判断されます。
栄養失調で倒れると入院も!
栄養失調と診断されると重度の場合は入院治療となり、点滴や食事指導などを数日間行い、食べられる時は病院のバランスのいい食事を提供されます。
期間は数日~1週間程度が多いようですが、「摂食障害」と診断された場合には体重がある程度増え、食事が受け付けるようになるまで1ヶ月以上の入院をすることもあります。
そうならないために日ごろからしっかり栄養バランスに気を使い食事を摂取する必要があります。
倒れる前兆としてはめまいがする。
頭痛、腹痛がある。吐き気、貧血でふらつく、立ちくらみ、倦怠感やだるさがある。
寝ても疲れが取れない。
慢性的に疲れている。
といった「ただの疲労ではないな、おかしいな」と思ったときは疑いましょう。
自分の適正な食事量を知りましょう
適正な食事量としては農林水産省のホームページで「食事バランスガイド」という、健康的な食生活のために何を、どのくらい摂取したらいいかわかりやすく図で紹介しています。
出典:農林水産省
是非参考にしてください。
管理栄養士の視点から言えることとしては、
- たんぱく質・脂質・炭水化物の三大栄養素を意識してしっかりと摂る。
- なるべくビタミンやミネラル補給の為に野菜・果物・豆類などの植物性食品も食べる。
ことをオススメします。
そしてお腹が空きすぎる、常に空腹状態だという人はエネルギーが足りていません。腹8分目を心掛け、しっかりと食事をとるようにしてください。
また激しい運動をしている、仕事による活動量が多いという人は、エネルギー不足に陥りやすいです。
それだけ日々の活動でエネルギーを使っているわけですから、当然食べ物から摂取するカロリーを高くする必要があります。
炭水化物だけを補おうとするのではなく、筋肉も使うのでたんぱく質の摂取も増やすようにしましょう。
ついつい忙しい毎日だと自分が何を食べたか忘れがちになり、また同じものを食べてしまいがちです。
同じものの摂取では色んな食物からの栄養素の摂取が期待できません。
少し時間のできたときでも、メモやノートに何を食べたかおおまかでいいので書き出してみるといいでしょう。
そうすれば同じものだけを摂取するようなマンネリや偏食状態を防ぐことができます。
新型栄養失調で不足しやすい栄養素とは?
足らない栄養素として、まずたんぱく質があげられます。
ダイエット中の女性はカロリーが高いからと肉などのタンパク質食品を避け、多忙な人や高齢者では炭水化物中心の食生活になってしまいたんぱく質が不足しがちです。
またビタミンではビタミンB1やビタミンAが不足しているとされています。
ビタミンB1は糖質を代謝するとても重要な栄養素であり、ビタミンAは目の粘膜や皮膚などにも作用する栄養素です。
ミネラルではカルシウムやマグネシウムがあげられます。
どちらも骨を作るためにとても重要な栄養素であり、皮膚や粘膜、また筋肉にも作用します。
自然と栄養が取れる食事
そうと言われてもなかなか栄養バランスのいい食事を用意するのは難しいですよね。
そこで管理栄養士である私がおすすめしたい食事を紹介します!
カレーライス
カレーライスには肉、緑黄色野菜である人参、ビタミン豊富なじゃがいも、淡色野菜でもありさまざまな栄養素に期待できる玉ねぎ、適度な脂質とご飯の炭水化物が全て揃っています。
ここに、サラダやスープなど海藻類や豆類、足りない野菜類などを補えるととてもいい食事です。
餃子
餃子も肉、野菜、皮の炭水化物、脂質がバランスよく含まれます。
餃子で炭水化物を摂取しているため、足りなさそうなたんぱく質や野菜の補給の為にサラダやスープに卵や豆腐、豆類、海藻をプラスするといいでしょう。
一汁三菜
一汁三菜の食事を意識して毎回さまざまな種類のものを食べるようにすると自然と栄養不足を防ぐ食事が期待できます。
あまり考えすぎずに、食べたいおかずをいろいろな種類用意し取り入れましょう。
まとめ
現代人に多いとされる新型栄養失調。あなたは当てはまるものがありましたか?
疲れやだるさだけではなく、さまざまな病気の原因やダイエットを妨げる原因にもなりかねません。
また重度の栄養失調と診断されると入院となり、命にも関わります。
少しのダイエットのつもりだった、忙しさにかまけて食事をおろそかにした、そのような理由で命に関わることになったら自分を責めてしまいますね。
そうならないためにも、今一度ご自分の食生活を見直してみてください。
藤井ゆき菜●文(管理栄養士)