リウマチになってしまったら。原因・症状・診断基準・治療法・お金の補助まで
リウマチとは全身の筋肉や骨、関節が痛む病気全般をいいます。
関節リウマチ、変形性関節症、膠原病なども含まれ、総称してリウマチ性疾患といわれます。
一般にリウマチと呼ばれているのは関節リウマチで関節が破壊されていってしまう病気です。
今回はリウマチについて解説していきます。
リウマチとは?
関節を覆っている膜の内側の部分を滑膜といいます。
この滑膜が炎症を起こし、増殖して関節を破壊してしまうのが関節リウマチです。
関節リウマチの発生率は日本の人口の0.5%程度と言われています。
男女比は1:4~1:5の割合で女性に多いとされています。
主に30代〜50代の人に発症しやすいといわれています。
リウマチの症状
- 朝の関節のこわばり
- 関節の痛み・腫れ
- 関節が曲げ伸ばししにくい
- 複数の関節に症状が出る
- 後頭部や肘などに皮下結節といわれるこぶのようなものができる
- 手の指に症状が出やすいが、肘や手首、膝から発症する事もある
- 左右に両方に症状が出やすいが片方だけに症状が出る事もある
- 関節以外にも肺や目、皮膚、末梢神経に症状が出る事もある
リウマチの原因
リウマチはとは自己免疫疾患といわれます。
簡単にいうと、自分の免疫が「関節は体にとって悪いもの」という間違った認識をしてしまい、関節を攻撃してしまい痛みや変形を作ってしまうのが原因といわれています。
免疫とは外部からの細菌やウイルスから体を守る働きがあります。細菌なウイルスを攻撃して体を健康に保っているのです。
しかし、この免疫が間違った反応を起こして、自分の関節の滑膜を攻撃してしまい、炎症を引き起こして関節が破壊されてしまうのがリウマチの痛みや腫れの原因です。
リウマチの炎症にはTNF‐α、IL-6というタンパク質が影響している事がわかっています。
これらのタンパク質は健康な体の中にもあり、細菌やウイルスを攻撃する役割を持っています。
リウマチに侵されている関節にはこのTNF-αとIL-6が増殖しており、自分自身の関節にある滑膜を攻撃してしまうのです。
そうすることで関節が破壊されてしまい、痛みや腫れ、変形といった症状を呈するのです。
リウマチの診断基準
リウマチはリウマチ科と記載がある整形外科や内科などの病院で診断を受けます。
リウマチと診断される診断基準です。
スコア | |
大関節1ヶ所が罹患 | 0 |
大関節2~10ヶ所が罹患 | 1 |
小関節1~3ヶ所が罹患 | 2 |
小関節4~10ヶ所が罹患 | 3 |
11ヶ所以上(1ヶ所以上の小関節) | 5 |
リウマトイド因子陰性かつ抗CCP抗体陰性 | 0 |
いずれかが低値陽性 | 2 |
いずれかが高値陽性 | 3 |
CPR正常かつ赤沈正常 | 0 |
CPR、赤沈いずれかが異常 | 1 |
症状は6週未満 | 0 |
症状は6週以上 | 1 |
これらの診断で点数をつけて10点満点中6点以上となるとリウマチと診断されます。
特徴として指や手首などの小さな関節に症状が出ている方が点数が高く、血液検査での数値が高くなるほど点数に加算されます。
ただしあくまで診断基準なのでこの分類に該当しないリウマチ患者や、この分類に該当するがリウマチではない患者もいるため、経過を追って専門の医師にしっかりと診断を受ける事が大切です。
リウマチって治るの?予後は?
リウマチはまだ医学的にも解明されていない事が多く、完治させる方法がないのが現状です。
一昔前までは痛み止めで痛みを緩和するだけで、関節変形の進行を抑える事が困難でした。
しかし医学の進歩により、早い段階から効果的な薬剤を使用する事で痛みや腫れの症状がほとんどない寛解という状態になる患者さんが増えてきています。
薬や治療が必要なくなり完全に治る完治とは違い、寛解とは薬や治療を継続する事で痛みや腫れの症状がない状態です。
リウマチ治療のまず目指す目標としては寛解の状態です。
最近の研究では、発症して2年以内に関節破壊が始まるという事がわかってきており早期から治療をする事で大きく予後が変わります。
リウマチの治療法
リウマチの治療法は主に4つ挙げられます。
薬物療法
リウマチの活動を抑える薬を使用して痛みや腫れなどの症状を改善し、関節の破壊の進行を抑えます。リウマチに使用する主な薬の種類と特徴、はたらきを紹介します。
痛み・炎症を抑える薬(対症療法)
①非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
即効性のある薬で痛みは軽快しやすいです。しかし関節の腫れや破壊を抑える事ができません。また胃腸障害などの副作用に注意が必要です。
②ステロイド薬
炎症を強力に抑えるため痛みと腫れが軽快します。しかし大量に使用すると副作用が強く現れるため量を正しく使用する事が必要です。
感染症・骨粗鬆症・糖尿病・消化性潰瘍・血栓症・むくみ・白内障・緑内障・副腎不全など
関節が壊れるのを抑える薬(抗リウマチ療法)
①疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)
投薬開始後効果が現れるまでに1ヶ月~数か月かかります。
多くのリウマチ患者で関節の炎症、腫れを抑えて関節の破壊を遅らせますが、長期的にみると徐々に進行します。
どちらかというと痛みを抑えるというよりは関節破壊の進行をおさえる薬です。
間質性肺炎・骨髄抑制(血液障害)・肝機能障害・感染症などの副作用に注意が必要です。
②生物学的製剤
2003年から日本でも使用が開始された比較的新しい治療薬です。
これまでの薬に比べて薬剤費が高額ですが、開始後早期に効果が現れます。
多くのリウマチ患者で炎症や痛み、腫れが軽快します。
関節が破壊されるのを強力に抑える目的で使用されます。肺炎や結核などの感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。
基礎的治療
リウマチの治療で欠かせないのが患者さん自身が病気の事を理解して、普段の生活の中で取り組む治療となります。
具体的あげると下記です。
- 病気の基礎知識を知る
- 規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事を
- 適度な運動と安静
- 関節を保護する動作
- 冷えや湿度などへの対策
- リウマチという病気の知識を知る
リウマチとは発症すると10年、20年と長く付き合っていかなければならない病気です。
定期的に医師の診察を受け、適切な薬を使用し続ける事が大切になります。
まずはリウマチという病気を理解して、自分自身と向き合って前向きに治療を進めていく事が重要となります。
①規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事を
リウマチは慢性の炎症や発熱を繰り返すため体の消耗が大きい病気です。
そのため高タンパク、高カロリーの食事が望ましいとされています。
脂分の少ない赤身の肉や大豆製品などが良いとされています。
基本的にリウマチになってしまったからといって食べてはいけないものはありません。
ただ炎症が強い時にアルコールを多く摂取してしまうと痛みや腫れを強めてしまうため、多量の飲酒は控えた方が良いでしょう。
②適度な運動と安静
リウマチの進行によって問題となってくるのが関節の変形によって関節が硬くなってしまう事です。
適度な運動や体操を取り入れ、関節の機能を維持する事が大切です。
リウマチ体操などを生活に取り入れて継続的に運動をする事が大切です。
また疲れている時や炎症がある時は無理せずに体を休めて安静するなど、決して無理な負担をかけない事が大切です。
③関節を保護する動作
生活の中で極力関節に負担のかかる動作をしないように心がける事が大切です。
例えば鍋やフライパンの持ち方、タオル絞りなどのやり方によっては手の負担を強めてしまいます。
両手でフライパンを持ったり、タオルを蛇口にかけて絞ったりするなどの工夫が必要です。
またボタンをつけたり、箸を扱うといつ指の動作も痛みや変形によって困難となる事もあります。
便利な自助具もあるので有効に活用する事も重要です。
④冷えや湿度などへの対策
リウマチの痛みは冷えや高湿度などで強まる事があります。
市販のホットパックなどを使って関節を温めたり、夏場でもシャワーのみではなく湯船に浸かるなどしてなるべく冷えにくいようにする事が大切です。
温める事で血流が促進して痛みは関節のこわばりが軽減します。また湿度が高い時期には除湿機や扇風機、サーキュレーターなどを用いて適度な湿度に保つ事も重要です。
リハビリテーション
リウマチの進行によって大きな問題となってくるのは関節可動域の低下や筋力低下です。
病院で理学療法士、作業療法士の元、関節可動域訓練や筋力増強訓練、生活動作訓練、体操指導、生活指導などを専門的に受け、関節の機能を保っていく事が大切です。
また関節を温めるホットパックやマイクロ波などの温熱療法も血流促進、痛みの軽減、筋肉の緊張緩和などの効果があるとされています。
手術
リウマチの進行によって関節が破壊され変形してしまうと、元の形に修復する事は出来ません。
関節の機能が大きく失われてしまうと生活に多大な支障をきたします。
変形が強い場合は手術をする事で関節の機能を回復させて生活の支障をなくすことも重要となります。
主なリウマチの外科的手術について説明していきます。
①滑膜切除術
炎症を起こしている滑膜を切除する手術です。
最近は内視鏡で行うのが主流となっていて、体への侵襲は少なく済みます。
手術後数年は炎症を抑えられますが、再び炎症が起こる可能性があります。
主に手首、肘、肩、足首、足の指の関節に行われます。
②関節形成術
骨の一部を削って針金などで固定し形を矯正します。
主に足の指に実施されます。外反母趾や曲がって重なってしまった足の指をまっすぐに矯正します。
③人工関節置換術
壊れた関節を人工のものに変えてしまうので関節の機能が回復し、炎症が治り痛みや腫れを軽減出来ます。主に実施されるのは膝、股関節、足首、足の指、肘、肩、手の指です。
④関節固定術
関節の骨と骨をくっつけて固定して関節のぐらつきを治します。主に実施されるのは手首、足首、頸椎です。
リウマチになってしまった場合にのお金の補助
リウマチの治療には診察、検査、薬代とお金の負担が大きななります。お金の負担の補助となる公的支援もいくつかあるので簡単ですが紹介します。
高額療養費制度
一ヶ月の自己負担が一定の限度額を超えた場合に、超えた分の自己負担額の払い戻しを受けられる制度です。
国民健康保険、協会けんぽ、各健康保険組合、共済組合が相談窓口となります。
身体障害者福祉制度
身体障害者手帳を交付された人がその障害の程度によって各種サービスが受けられる制度です。市町村役場、福祉事務所が相談窓口となります。
公的介護保険
40歳以上の人が対象で、認定された介護度によってそれに応じた介護サービスが受けられる制度です。
利用額の1割を負担します。市町村役場、福祉事務所が相談窓口となります。
税金医療費控除
1年間の自己負担額が一定額を超えた場合、確定申告によって所得税が軽減される制度です。
身体障害者認定を受けている場合は障害者控除が受けられます。
障害者年金
国民年金、厚生年金に加入している人で、障害によって日常生活に支障をきたしている場合に年金を受けられる制度です。
市町村の年金窓口、年金事務所などが相談窓口となります。
※支給される金額や利用できる条件は異なりますので詳しくは各相談窓口で相談して下さい。
まとめ
リウマチはまだ医学的にもわかっていない事が多い病気ですが、最近では重度に進行する人が減ってきており、早期に適切な治療を受ける事が重要です。
・リウマチ専門医にちゃんと診てもらう
・患者自身がリウマチについて理解する
・長い付き合いになるため継続的な日々のケアをする
を大切にしましょう。