アキレス腱炎の原因・治療・テーピング・サポーター・リハビリ全知識
かかとの上のアキレス腱の部分に生じる痛み。
つま先を上に上げるように足首を反らした時に痛む場合、もしかするとアキレス腱炎かもしれません。
今回はアキレス腱炎の治し方とリハビリ方法について解説していきます。
アキレス腱炎とは?
運動のしすぎや、急に運動を始めたなどが原因となってアキレス腱に痛みが生じる障害です。
走ったり、ジャンプをしたり足首に負荷がかかると痛みが生じ、悪化すると歩くときにも痛みが生じます。
そもそも腱とは
●筋肉と骨をつなぐ部分の事です。
●線維質であるコラーゲンが主成分で出来ています。
●筋肉が伸び縮みする事で関節は動きます。
●その筋肉の収縮の力を骨に伝えるのが腱の主な役割です。
アキレス腱とは
●アキレス腱はふくらはぎにあるヒラメ筋、腓腹筋という筋肉を踵の骨につなぐための人体で最大の腱です。
●ヒラメ筋と腓腹筋を合わせて下腿三頭筋といいます。
●アキレス腱は下腿三頭筋の収縮を踵に伝えています。
●走ったり飛んだりする運動に重要な役割を果たしています。
●アキレス腱は1㎟あたり6〜10kgの張力に耐える事ができます。
●正常なアキレス腱の長さや太さならおよそ1tの張力にも耐える事ができるといわれています。
腓腹筋とヒラメ筋の役割
●腓腹筋は大腿骨から踵についています。
●腓腹筋は膝を曲げる作用と足首を下に向ける『底屈』の役割があります。
●ヒラメ筋は脛骨と腓骨から踵についています。
●ヒラメ筋も底屈が主な役割です。
●つま先立ちや、歩行や走行時に地面を蹴る動作で働いてくれる筋肉です。
●立った状態で膝を曲げて行く時の『ブレーキ』としての役割もあります。
アキレス腱炎の種類
実は『アキレス腱炎』は場所によって、いくつかの種類があります。
アキレス腱炎
アキレス腱そのものに損傷があり、炎症を起こしている状態です。
アキレス腱周囲炎
アキレス腱には周りを覆っているパラテノンという膜が存在します。
パラテノンはアキレス腱の代謝を助けたり、保護をしたりする役割があります。
過度なストレスによりこのパラテノンが炎症を起こす事で痛みが生じます。
アキレス腱滑液包炎
アキレス腱の踵骨に付着している部分には滑液包※と呼ばれる袋があります。
アキレス腱の後方には二つの滑液包が存在し、腱と骨との摩擦を軽減していますが、過度な摩擦により炎症を起こして痛みが出る事があります。
●滑液包は滑液という液体を含んだ袋のような組織です。
●皮膚、筋肉、腱、靭帯などの組織と骨の摩擦を軽減したり、衝撃を吸収する役割があります。
脂肪体の拘縮(Kager’s fat pad)
アキレス腱の後方にはKager’s fat padと呼ばれる脂肪組織があります。
●足首の筋肉や腱の動きで起きるストレスから神経や血管を保護する役割があります。
●また骨の動きによるストレスから神経や血管を保護する役割があります。
●アキレス腱の滑りを良くします。
●アキレス腱付着部分の圧縮力の軽減をしてくれます。
●滑液包の圧の軽減をしてくれます。
このKager’s fat padが
- 捻挫の後遺症
- 使いすぎ(オーバーユース)
などでこの脂肪体が硬くなってしまう(拘縮)がおきて、アキレス腱の滑りが悪くなったり、圧力が増したりして痛みが生じます。
このようにアキレス腱炎の部位はいくつか存在しますが、個別に診断する事は難しく、またそれぞれが混同して症状を起こしている事が多いです。
アキレス腱炎の原因
アキレス腱炎は次のような原因で発症します。
使いすぎ(オーバーユース)
- 急に運動量が増えた。
- 急に運動を始めた。
- 練習をしすぎた。
などで負担が大きくなりアキレス腱炎を発症します。
痛みを我慢してさらに負荷をかける事で症状を悪化させてしまいます。
下腿三頭筋が硬くなっている
アキレス腱につながっている下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)の柔軟性が低下して硬くなっていると、アキレス腱に過度な力が加わりやすくなり症状を起こします。
つま先を上に上げる背屈という動きが悪いと、下腿三頭筋の硬さの疑いがあります。
踵骨が傾いている
後ろから足を見た時に踵の骨が内側に傾いているのを回内足、外側に傾いているのを回外足といいます。
アキレス腱は踵骨についているため、この傾きがあることによって、より強く引っ張られる事になります。
特に多く見られるのが回内足です。
- 歩いたり、ランニングのときに、踵からついて着地し、体重が足にかかります。
- 体重がかかった時に足は踵が内側に倒れる動きをします。(回内)
- この時に過度に回内してしまうとアキレス腱が強く伸ばされてしまい(伸張)アキレス腱炎を発症させてしまいます。
加齢
年齢が高くなるにつれ、腱の柔軟性が失われたり、張力が低下してしまう事が原因になります。
アキレス腱炎の症状
- 踵の骨からアキレス腱にかけて腫れたり、熱を持ったりします。
- 押すと痛みます。
- 運動の後に痛みます。
- 朝起きた直後に痛みが出やすいです。
- 足首をつま先を上に上げるように反らす動き(背屈)させると、痛みが大きくなります。
- 症状が進行すると安静にしてても痛みが生じたり、日中歩くことにも支障をきたします。
アキレス腱炎の治療法
アキレス腱炎の治療法の多くは保存療法で行われます。保存療法とは手術療法とは違い、切開や外科的な処置は行わない治療法です。
- 運動を休止し患部を安静にします。
- 必要に応じて湿布や痛み止めの薬を服用する事もあります。
- またテーピングやサポーターなどで患部の安静を図ります。
アキレス腱炎の治療期間
アキレス腱炎発症後の炎症は、安静にする事で2週間程度で治まってきます。
しかし、アキレス腱炎は慢性化する事も多く、歩いたり、運動をする事が多い人は1ヶ月以上かかる人もいます。人によって治るまでの期間は個人差があります。
最近ではPRP療法(多血小板血漿)という治療が行われる事もあります。
自分の血液を使用し、高濃度の血小板(PRP)を作り注射する事で、自己修復能力を高める治療法です。
まだ広まっていないため、受けられる病院も限られいますが、有効な治療法として注目されています。
アキレス腱炎のテーピングの巻き方
アキレス腱への負担を軽減するテーピング方法を紹介します。
用意するもの①伸縮性のキネシオロジーテープ
用意するもの②非伸縮性のホワイトテープ
※写真は見栄え上タイツの上から貼っていますが、実際は直接肌に貼ります。
①
足首は力を抜き、踵からふくらはぎにかけてキネシオロジーテープを貼ります。テープに皺が寄らない程度に軽く引っ張りながら貼ります。
②
踵の小指側から、ふくらはぎの内側に向かってテープを貼ります。テープに皺がよらない程度に軽く引っ張りながら貼ります。
③
②のテープと左右対称になるような感じで踵の親指側からふくらはぎの外側に向かってテープを貼ります。
④
ホワイトテープを使用します。スネの前面から外くるぶしの上を通って、踵の内側を巻き、足の裏を通るようにして甲まで巻きます。(内側ヒールロック)
⑤
④と反対に内くるぶしの上を通って外側の踵を巻き、足の裏を通って足の甲までまきます。(外側ヒールロック)
完成です。
アキレス腱炎のサポーター
サポーターで固定することも有効です。
アキレス腱炎の予防・リハビリ
アキレス腱炎の予防・リハビリについてお伝えします。アキレス腱炎になりやすいのは、
- 足首・ふくらはぎの筋肉の硬さ
- ふくらはぎの筋肉の弱さ
- 回内足
があります。これらの機能を改善するための方法をお伝えしていきます。
ふくらはぎのストレッチ
伸ばしたい方を後ろに引いて立ちます。
踵が床から離れないようにして前に重心をかけ伸ばしていきます。
膝を伸ばしたままだと腓腹筋が、
膝を曲げるとヒラメ筋がより伸ばされます。
つま先がなるべく正面を向くようにする事がポイントです。
※ストレッチによってアキレス腱に痛みが生じる場合は無理に伸ばさないようにしましょう。
筋トレ方法
カーフレイズ
簡単にいうとつま先立ちです。踵を上げてゆっくりと降ろしていきます。
回内足の改善
後脛骨筋の筋力トレーニング
回内足は後脛骨筋という筋肉の弱化が原因で、踵が内側に倒れやすくなり起こります。この筋肉を強化する事が重要となります。
※セラバンドを使うと効果的です。
セラバンドを足の親指の付け根に巻きつけ、つま先は伸ばしたまま、つま先を内側に動かします。
股関節の強化も重要!
回内足は股関節からも影響します。
つま先が外側、膝が内側になるニーイントゥーアウトという状態をみてみると、踵が内側に倒れる回内足となります。
このニーイントゥーアウトは股関節が内側に入る事でも起こります。
このように股関節が内側に入らないように支えるには、お尻についている中臀筋という筋肉がしっかり働く事が重要となります。
中臀部の筋力トレーニング
鍛える方の脚を上にして横向に寝ます。
身体が前後に倒れないようにして、脚を真上に挙げた状態でキープします。
インソールを使用する
回内足にはインソールを使用する事で矯正する事も可能です。
踵の内側が少し高くなっているものが負担を軽減させることが出来ます。
まとめ
●アキレス腱炎はオーバーユースが起因して起こり、アキレス腱周囲の組織の炎症によって起こる
●ふくらはぎの硬さや筋力の弱さ、踵の骨の傾きが原因となる事が多く、予防にはそれらを改善する事が重要である。
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