肩石灰沈着性腱板炎が治らない人へ!原因・症状・治療とリハビリ全知識
腕を挙げた時に肩に生じる強い痛み、寝ている時肩がうずくように感じる痛み。
ひょっとすると肩に石灰が溜まっているかもしれません。
今回は肩石灰沈着性腱板炎について解説していきます。
肩石灰沈着性腱板炎とは
肩石灰沈着性腱板炎とは肩のを支える筋肉である腱板に石灰(リン酸カルシウム結晶)がついてしまうとおこる障害です。
40〜50代の女性に多く発症し、腕を挙げることが困難になり着替えや洗濯など日常生活に支障をきたします。
そもそも腱板とは?
肩の腱板とは
肩の腱板とは、肩を支えている奥の方の筋肉を総称して腱板と呼んでいます。
いわゆる肩のインナーマッスルです。
腱板を構成する筋肉
●棘上筋
肩甲骨の肩甲棘という部分の上部から腕の骨についている筋肉で、主に肩を横に挙げる外転という動きに作用します。
●棘上筋
肩甲骨の肩甲棘という部分の上部から腕の骨についている筋肉で、主に肩を横に挙げる外転という動きに作用します。
●棘下筋
肩甲骨の肩甲棘という部分の下部から腕の骨についている筋肉で、主に肩を外に捻る外旋という動きに作用します。
●小円筋
肩甲骨の下方にある下角という部分の上から腕の骨についている筋肉で、主に肩を外に捻る外旋という動きに作用します。
●肩甲下筋
肩甲下筋の前から腕の骨についている筋肉で、主に肩を内側に捻る内旋という動きに作用します。
これらの筋肉は
- 肩の深部に存在している
- 関節を安定させる
- 大きな力を発揮する筋肉ではない
という特徴があります。
運動を起こす力を発揮するというよりも、肩の動きを安定させて、円滑に肩が動くように微調整するような働きがメインです。
肩の腱板は
- 回旋筋腱板
- ローテーターカフ
- インナーマッスル
とも呼ばれます。
肩石灰沈着性腱板炎の症状
肩石灰沈着性腱板炎では以下のような症状が見られます。
- 腕をあげると肩に痛みがある
- シートベルトを装着する動きで肩が痛い
- シャツを着るような動きで肩に痛みがある
- 夜、寝ていて肩に痛みを感じる
腕を動かすときにお痛みがあるので日常生活に大きな影響があります。
強い痛みを伴うこともあり、全く腕をあげられなくなる事もあります。
また肩石灰沈着性腱板炎は症状の強さや痛みが続いている期間により3つの種類に分けられます。
急性型
痛みが1〜4週間程度続き、強い痛みがあります。
亜急性型
1か月〜半年程度、中等度の痛みが続きます。
慢性型
半年以上動かした際の痛みが続きます。
肩が動きづらくなります。
肩石灰沈着性腱板炎の原因
肩に石灰が溜まってしまう原因はわかっていません。
人の身体は骨に必要なカルシウムの量を腸からの吸収と尿からの排泄でバランスを取っています。
しかし尿から上手く排泄出来なかったカルシウムが身体の中に溜まってしまい、なんらかの原因で肩に付着してしまうのです。
石灰は生じて間もない頃はミルク状で柔らかいですが、時間の経過とともに硬くなってきます。
その硬くなった石灰が膨らんでくると痛みを生じ、腱板から破れ出ると激痛となります。
肩石灰沈着性腱板炎の診断は整形外科で
肩石灰沈着性腱板炎は整形外科にて診断を受けられます。
ほとんどがレントゲンにて腱板部分の石灰の有無を確認できます。
石灰の大きさの程度や、腱板損傷を併発してないかを診断する場合にCTやMRIをとる場合もあります。
肩石灰沈着性腱板炎の治療
肩石灰沈着性腱板炎の治療方法は保存療法と手術療法の2つに分けられます。
保存療法
手術で石灰の摘出などを行わずに治療を行う方法です。
肩石灰沈着性腱板炎の場合は以下の方法があります。
三角巾などで安静にする
肩石灰沈着性腱板炎は激しい痛みを伴うので、肩関節が動かないように安静にする事で痛みを沈静化させます。
肩は腕の重みによっても関節に負担がかかるため、三角巾やスリングなどを用いて固定する事で安静を保ちます。
石灰を注射で吸印する
痛みが激しく、かなり支障をきたす場合は溜まった石灰を注射器で直接吸引して除去する事もあります。
痛み止めの注射
痛みが激しく、肩関節に炎症を起こしている場合はステロイド剤の注射をする事もあります。
ステロイド剤を注射する事で痛みが劇的に改善する事もあります。
体外衝撃波
体外衝撃波とは、尿路結石などで結石を砕くために使用されている衝撃波を、痛い部分や傷んでいる部分に照準・焦点を合わせ照射し治療する方法です。
肩石灰沈着性腱板炎にも有効で石灰部分に衝撃波を当てる事で痛みを改善します。
衝撃波を当てることで痛みを感じる自由神経終末という組織を変性させて痛みを伝える物質を減少させたり、組織を再生させる因子を増加させたり、血管の再生を促進させる効果により治療効果が得られます。
体外衝撃波には稀ですが以下の副作用が出る事もあります。
●治療後の痛み
●治療部位の腫れ、点状出血
●感覚異常、知感低下、神経痛などの神経障害
●湿疹
手術療法
痛みが激しく、保存療法を行っても改善しない場合には内視鏡手術にて石灰を除去する事もあります。
手術で石灰のみを除去した場合には手術後早期から動かすリハビリを開始し、多くは3〜4週間で日常生活には支障がない程度に回復します。
石灰除去のみならず、腱板の縫合なども同時に行った場合は手術後3週間の固定をする必要があり、6週間〜8週間で日常生活に支障がない程度に回復します。
肩石灰沈着性腱板炎のリハビリ
肩石灰沈着性腱板炎になると肩関節が拘縮(筋肉や関節が硬くなる事)を起こし腕があがらなくなります。
着替えたり、洗濯物を干したり、シートベルトを締めたりするのが難しくなります。
注射などで早期に劇的に改善した場合は、肩の拘縮は生じにくいですが、慢性化した場合多くが拘縮してしまいます。
拘縮を改善するには筋肉をストレッチしたり、関節を動かしたりするリハビリが重要となります。
リハビリは物理療法と運動療法にわけられます。
物理療法
物理的な力を加えることで組織の回復を促す方法です。
手段としては温熱、電気、冷却といった方法があり、肩石灰沈着性腱板炎の場合は温熱療法が行われる事が多いです。
ホットパックやマイクロ波を用いて患部を温める方法が取られます。
●血流の促進
●筋肉のコリの軽減
●筋肉の伸張性の改善
●痛みの緩和
運動療法
ストレッチや体操で肩の運動する事によって可動域を改善させます。
ストレッチは痛みの強い急性期や炎症期に行うと悪化する事があるので医師や理学療法士の指示のもとで行って下さい。
アイロン体操
図のように机などに痛くない方の手をついて前かがみになります。
痛い方の手を下に下ろし、ペットボトルやアイロンなどを握り、力を抜いて振り子のように腕を振ります。
重りを持つ事で関節への圧力を軽減させながら無理のない範囲で可動域を広げる運動になります。
棒を使った肩の体操
棒を使って写真のように肩の上げ下げの体操をします。
棒の力をつかって、反対側の腕の力を利用して行える体操なので比較的行いやすいです。
しかし痛みが強く出現する場合は無理に行わないようにしましょう。
腕が上がる時には鎖骨、肩甲骨、肋骨、背骨も一緒に動いているため、これらのストレッチをする事も重要です。
肩甲骨を内側に寄せる体操
①両手を横に90°挙げて肘を曲げます。
②肘を後ろに引き肩甲骨を内側に寄せます。その状態をキープして10秒止めます。
これを5~10回繰り返します。
背骨を伸ばすストレッチ①
写真のように仰向けに寝て、背中に丸めたバスタオルを置きます。
その状態で両手をバンザイします。その状態でゆっくり呼吸して30秒以上ストレッチします。
背中を伸ばすストレッチ②
座った状態で頭の後ろで手を組みます。大きく息を吸って肘を開いて、頭を天井に向けるような感じで上に伸びます。
まとめ
・肩石灰沈着性腱板炎は肩に石灰が溜まり痛みを生じる疾患で、痛みにより日常生活に支障をきたしやすい。
・治療は痛み止めの注射、注射による石灰の吸引、体外衝撃波、手術などがある。
・肩の可動域制限が生じた場合はリハビリにて改善を図る。