頸肩腕症候群の原因と症状から診察・治療方法・予防法を教えます。

首や肩、肩から腕に起こる痛みや痺れなどの症状。

よく聞かれる訴えですが、頸肩腕症候群と呼ばれる病態かもしれません。

今回は比較的多くの人が悩まされる頸肩腕症候群について解説していきます。

頸肩腕症候群とは

頸肩腕症候群とは首や肩、腕にかけて連鎖的に生じる痛みや痺れで、原因が明確に特定できないものをいいます。

頚椎ヘルニアや胸郭出口症候群肩関節周囲炎など、異常の原因が特定できているものは除外します。

頸肩腕症候群の症状

以下のような症状があります。

  • 長時間の作業によって首や肩に痛みやこわばり、張りなどが現れる
  • 肩から腕にかけて重だるい
  • 手が痺れる
  • 腕や指が冷たくなる
  • 背中から肩にかけて凝っている
  • 手に力が入りにくくなる

主となるのは首から肩、腕にかけての症状ですが

他の症状も引き起こる事もあります。

  • めまい
  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • 睡眠障害

などです。

頸肩腕症候群の原因

頸肩腕症候群になる原因は特定することは難しいですが以下のような事が挙げられます。

原因①使いすぎによる過労

長時間のパソコンや書字などのデスクワーク、読書、手作業などをして
首や肩、腕の筋肉に負担がかかる事が頸肩腕症候群の原因となります。

楽器の演奏やスマートフォンの長時間の使用なども挙げられます。

原因②姿勢が悪い

悪い姿勢によって長時間いる事で首や肩に慢性的な負担をかけてしまう事も頸肩腕症候群の原因となります。

首が前に出すぎているヘッドフォワード、猫背、足を組むのは治していきましょう。

原因③身体にあっていない枕や寝具

枕の高さが低すぎたり、高すぎる事で寝ていませんか?

寝ている間に首や肩に負担を強めてしまう事も頸肩腕症候群の原因となります。

原因④精神的なストレス

不安や悩みなど精神的なストレスを抱えていると首や肩に凝りのような症状が出ることがあります。

また気持ちが沈んでいると自然と背中が丸くなり、猫背姿勢を強めてしまう事も原因となります。

頸肩腕症候群は別名キーパンチャー病とも呼ばれ、腕や手を使う仕事に従事する人(タイピストやピアニスト、スーパーのレジなど)に多く、一種の職業病とも言われています。

頸肩腕症候群の診断

頸肩腕症候群は痛みや凝り、痺れなどの自覚症状が中心です。

レントゲンやMRIなどでも特別な所見がでません。

血液検査でも数値の異常などは見られません。

頸肩腕症候群の治療方法

頸肩腕症候群の治療法としては根本的な治療というよりは出現している症状に対して対処療法を行うことが主です。

頸肩腕症候群の治療①薬物療法

痛み止めや筋肉の緊張を緩める薬、痺れを和らげる薬などが処方されます。

また精神的なストレスが強い場合は抗不安薬や精神安定剤なども使用される事もあります。

また痛みが強い場合は患部に痛み止めの注射などを行う場合もあります。

最近では注射にて筋膜リリースを行う病院も増えています。

※注射による筋膜リリースとは?

エコーを用いて、原因となっている筋膜の癒着(組織がくっついて固まっている状態)を見定め、身体に無害な生理食塩水やリン酸リンゲル液などを注射で注入します。

癒着している筋膜が剥がれ、症状を軽くする治療法です。

筋膜リリースのメカニズム

筋膜

筋膜リリースのメカニズム

筋肉と骨を繋いでいる部分で強靭な線維性の組織を腱といいます。
(アキレス腱など)

筋膜とは筋肉を包んでいる膜の事です。

筋膜は筋肉を覆いながらウェットスーツのように全身を包んでいます。

筋膜は筋外膜、筋周膜、筋内膜に分けられ層となっています。

正常な筋膜はその層がお互いに滑り合うように滑走する事で伸び縮みするのです

凝りなどにより固まる事でその滑走性が失われ、癒着を起こします。

癒着した筋膜の層と層の間に生理食塩水やリン酸リンゲル液を注入します。

そして癒着を剥がして筋膜の滑走を促す事で症状を改善させます。

 

頸肩腕症候群の治療②物理療法

物理療法とは温熱や電機などの物理的な力を使って体の回復を促進する治療法です。

主に整形外科や接骨院などに置かれている電気治療器などがそれに当たります。

頸肩腕症候群にて行われる主な物理療法は以下のものがあります。

物理療法1・温熱療法

ホットパックやマイクロ波、超音波などで患部を温めます。

温める事で血流を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを緩和する効果が期待できます。

物理療法2・牽引療法

牽引療法最近は少なくなってきていますが医療用の牽引台で首を引っ張る治療方法です。

首にベルトを巻き、牽引する事によって頚椎(首の骨)にかかっている負担の軽減、筋肉の緊張の緩和、筋肉のストレッチ効果が期待できます。

物理療法3・電気療法

電気療法低周波や干渉波などの電気刺激によって治療する方法です。患部に電気を流す事によって、痛みを伝える神経の興奮の抑制や筋肉のリラクゼーション効果が期待できます。

頸肩腕症候群の予防

頸肩腕症候群を予防するには日々の姿勢や作業中の負担を軽減させる事が大切です。

頸肩腕症候群の予防①姿勢を改善する

姿勢の改善頸肩腕症候群は姿勢の悪さが原因の一つとなります。

特に不良姿勢での長時間のデスクワークによって症状が出やすくなります。

身体に負担のかからない理想的な座位姿勢は上の図のように
耳の穴、肩峰(肩甲骨の骨の出っ張り部分)、大転子(太ももの骨の出っ張り部分)が一直線に並んだ位置となります。

この直線からズレた分だけ重力の影響で首や肩、腕に負担がかかります。

特に頭が前に出てしまうヘッドフォワードと呼ばれる姿勢や猫背、仙骨座りなどは不良姿勢の代表的な例です。

頸肩腕症候群の予防②環境の改善

良い姿勢で作業をしようと意識してもなかなか継続させるのは難しいと思います。

机や椅子の高さやパソコンの位置を変えるなど環境設定を変える事で自然と良い姿勢を保つ事が出来ます。
理想的な環境のポイントとして

  • 骨盤が前や後ろに倒れすぎない
  • 膝、股関節は90度程度
  • 肘は90度
  • 画面は目線の高さ

このような姿勢が保てるようなデスクや椅子の高さ、パソコンの位置を調整すると良いでしょう。

頸肩腕症候群の予防③枕の調整

寝る時の理想的な枕の高さは首が過剰に曲がったり反ったりせず、顎を軽く引いた姿勢が理想です。

枕を使用しないと、首が後ろに反ってしまい、顎が突き出る姿勢となります。

逆に枕が高いと、首が前に曲がった状態となります。

色々な枕が出ていますが、バスタオルで高さを調整して理想的な高さを探すのが良いでしょう。

傾斜は15~20°が理想的な高さといわれています。

ただし、寝具の柔らかさや形状によって高さに違いが出てしまうので注意が必要です。

仰向けではバスタオルを肩口ぎりぎりまでしっかり入れて、横幅は50~60cmくらいにします。

傾斜を15~20°程度とし、のどが詰まる感じがしないか、呼吸は楽に行えるかをチェックします。

横向では首が横に傾かないような高さに設定します。

寝るときの姿勢引用:姿勢の教科書

頸肩腕症候群の予防とリハビリ

頸肩腕症候群を予防するには首や肩甲骨、背骨の体操が有効です。

予防とリハビリは猫背を改善する体操で

肩甲骨を内側に寄せる体操

①両手を横に90°挙げて肘を曲げます。

肩甲骨を内側に寄せる体操②肘を後ろに引き肩甲骨を内側に寄せます。その状態をキープして10秒止めます。これを5~10回繰り返します。

肩甲骨を内側に寄せる体操背中を伸ばすストレッチ①

写真のように仰向けに寝て、背中に丸めたバスタオルを置きます。

背中を伸ばすストレッチ
その状態で両手をバンザイします。その状態でゆっくり呼吸して30秒以上ストレッチします。

背中を伸ばすストレッチ②

座った状態で頭の後ろで手を組みます。

背中を伸ばすストレッチ
大きく息を吸って肘を開いて、頭を天井に向けるような感じで上に伸びます。

首のストレッチ

首のストレッチタオルを使用し、首の後ろに通します。

手で前に引っ張ったまま首を後ろに倒してストレッチしていきます。
だいたい30秒ほどその姿勢を保持し、数回繰り返します。

猫背の治し方!原因を知って矯正・改善しよう。ストレッチと矯正ベルトも読んでみてください。

まとめ

●頸肩腕症候群は原因が特定できない首や肩、腕の痛みや痺れを伴う病態である。
●原因は不良姿勢、長時間の手作業、精神的なストレッチなどが挙げられる。
●予防には姿勢の改善、首や肩まわりの体操が有効である。

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