肩の痛み!腱板損傷の症状・テスト・治療・テーピング・ストレッチ・リハビリの全知識
野球やバレーボールなどで多く起こる肩の痛み。
肩の痛みの原因はたくさんあるため、一つの診断名をつけるのがとても困難です。
夜寝ているときに痛い。運動するときに肩を挙げると痛みが走る。
そんな場合は肩の腱板損傷の可能性が高いです。
今回は肩の腱板損傷についてその原因・症状・治し方・予防のためのリハビリについて解説していきます。
腱板損傷とは?
投球動作や肩を挙げたとき、背中に手を回す動作などで肩に痛みが出ます。
夜寝ていている時に痛む夜間痛もみられ、肩の可動域が小さくなったり筋力低下などの症状もみられます。
肩の腱板とは
肩の腱板とは、肩を支えている奥の方の筋肉を総称して腱板と呼んでいます。
いわゆる肩のインナーマッスルです。
腱板を構成する筋肉
腱板は5つの筋肉で構成されています。ひとつずつ説明していきます。
棘上筋
肩甲骨の肩甲棘という部分の上部から腕の骨についている筋肉で、主に肩を横に挙げる外転という動きに使われます。
棘下筋
出典:https://s-takanaga.com/blog/post-160414/
肩甲骨の肩甲棘という部分の下部から腕の骨についている筋肉で、主に肩を外にひねる外旋という動きに使われます。
小円筋
出典:https://s-takanaga.com/blog/post-160414/
肩甲骨の下方にある下角という部分の上から腕の骨についている筋肉で、主に肩を外にひねる外旋という動きに使われます。
肩甲下筋
肩甲下筋の前から腕の骨についている筋肉で、主に肩を内側にひねる内旋という動きに使われます。
出典:https://s-takanaga.com/blog/post-160414/
●肩の深部に存在しています。
●関節を安定させる働きがあります。
●大きな力を発揮する筋肉ではありません。
※運動を起こす力を発揮するというより、肩の動きを安定させて、円滑に肩が動くように微調整するような働きがメインです。
肩の腱板は
- 回旋筋腱板
- ローテーターカフ
- インナーマッスル
とも呼ばれます。
最も損傷しやすいのは棘上筋
中でも腱板損傷で最も頻度の高い部分は棘上筋です。
肩を挙上させていくと、肩甲骨の肩峰と鳥口肩峰靭帯で形成される鳥口肩峰アーチの下を上腕骨が通過します。
正常では問題なく通過しますが、肩甲骨の位置がズレていたり、上腕骨の回旋が不十分であったりすると、鳥口肩峰アーチと上腕骨が衝突する事があります。
出典:http://www.gobyou.com/rehabilitation/shoulder
その際に棘上筋が挟まれてしまい、その繰り返しによって損傷をきたしケガをするのです。
また棘上筋は血流供給に乏しいため、損傷を受けると修復が困難となります。
そのため棘上筋の損傷は起こしやすいといわれています。
腱板損傷になりやすい動き
肩の腱板損傷は野球やバレーボール、テニスなどで繰り返し肩を動かす動作や、筋力トレーニングなどでダンベルやバーベルを持ち上げた時などに損傷を起こしやすいです。
また転倒によって肩をひねって手をついたり、シートベルトを巻く動作などによっても痛めることもあります。
加齢により腱板が変性する事によって、気がつかないうちに損傷を起こしていることもあります。
腱板損傷の症状
腱板損傷になると起こりやすい症状をあげていきます。
①夜間痛
夜寝ている時に、肩に疼くような痛みが生じます。仰向けに寝ていても、横向きに寝ていても起こる場合があります。
肩の関節にある滑液包(関節の滑りを良くするための袋)の炎症などが原因の一つです。
また寝る姿勢は、日中立ったり座るっている姿勢とは違った重力の圧がかかります。
そのため関節内の圧力が夜間痛の原因となるといわれています。
※肩の下に枕やバスタオルを丸めたものを置いたり、抱き枕を使うことで症状が和らぐ事もあります。
②運動時痛
肩を挙げた時(挙上)に痛みが生じます。
野球の投球動作やバレーボールのスパイクなどの動作で痛みが出ます。
また日常生活でもシャツを着る動作などで腕をひねったりすると痛みを生じます。
腱板損傷を見分けるテスト方法
腱板損傷になっているかどうか?チェックするテスト方法があります。
painful arc test
肩を挙げた時に、60°〜120°の間で痛みが生じるかどうかを診るテストです。
その範囲内で痛みが生じ、通過後は傷みがない場合は腱板損傷の可能性があります。
drop arm test
肩を90°外転(真横に腕をあげる動き)させた状態で、ゆっくりと下ろしていきます。
痛みが生じたり、ゆっくりと下ろせない場合は腱板損傷が疑われます。
③可動域の制限
肩を挙げたりひねる動作をする時に痛みや筋肉の硬さで可動域が小さくなります。
腱板損傷の診断
整形外科などでは肩の痛みの場合、まずはレントゲンで診断を受けます。
レントゲンで、骨折や骨の位置のズレなどの確認をまず行います。
腱板の損傷はレントゲンでは確認できませんが、断裂をしている場合は上腕骨が上方に挙上している所見が診られることもあります。。
出典:松田整形外科記念病院
詳細に調べるにはMRIや有用です。MRIでは断裂や損傷の有無、場所、程度などを診断するのに非常に有効です。
腱板損傷の治療法
腱板損傷の治療の進め方としては保存療法と手術療法が選択されます。
保存療法
腱板損傷の多くは保存療法が選択されます。
まずは患部を安静にします。痛みが強い場合や夜間痛が続く場合などでは痛み止めの服薬やステロイド剤を注射するなどして対処します。
手術療法
保存療法を数ヶ月続けても痛みが改善しない場合、運動障害が改善しない場合、完全断裂と診断されて早期にスポーツ復帰をしたい場合などでは手術療法が行われます。
関節鏡視下手術による手術で損傷をした腱板を縫合する手術が多く行われており、傷も小さく、痛みも少ないのが特徴です。
一般的な手術後のリハビリの流れ
手術〜3週間
腱板に負担がかからないよう、腕を挙げた外転位(130°のゼロポジション)で固定をします。
※ゼロポジションとは約130°横に挙げた位置で、腱板の緊張が均一になり最も安定する肢位です。
●腱板に負担のかからない範囲での可動域訓練
●肩甲骨の運動を中心に行います。
3〜5週間
●三角筋やアームレストでの固定
●痛みや状態に応じて自動的な可動域訓練や筋力訓練も開始
6週以降
●固定を外す
●段階的に筋力訓練をして負荷を上げてゆく
3ヶ月~
●普段の生活での腕の使用はほぼ自由となる
5ヶ月~
●スポーツ動作に合わせたトレーニングを積極的に行っていく
6ヶ月
●スポーツ復帰
腱板損傷の予防・リハビリ
腱板損傷を引き起こす原因として肩甲骨の動き、背骨の動きの低下があります。
肩を挙げる時に上腕骨(腕の骨)だけではなく、肩甲骨と背骨も一緒に動きが伴います。
実は肩が動く時には決まり事があって、上腕骨が2°動くと肩甲骨も1°動くという肩甲上腕リズムというものが存在します。
例えば肩が90°上がっているのは、上腕骨が60°、肩甲骨が30°上方回旋しているのが理想的な形と言えます。
猫背を治す
また肩を最終域まで挙げる時には胸椎という背骨の胸の部分がしっかりと伸びる事が必要となります。
試しに猫背の状態でバンザイをするのと、良い姿勢でバンザイをするのを比べてみて下さい。
明らかに猫背の方が挙げにくいと思います。普段から猫背の場合は肩への負担を大きくかけていることになります。
肩甲骨や背骨の動きに問題があるとこの肩甲上腕リズムが破綻して、腱板へのストレスを増やしてしまい損傷をきたしやすくなります。
これらを改善する事が腱板損傷の予防になります。
腱板へのストレス軽減のためのリハビリ
①背骨(胸椎)のストレッチ
方法1
仰向けに寝た状態で、背中にバスタオルを丸めた物を入れて胸を張ってバンザイしていきます。背中が伸びている事を感じながら30秒以上伸ばします。
方法2
四つん這いになり、背中を反らすようにして胸を張ります。しっかりと背骨を反らすことが重要です。
②肩甲骨トレーニング
四つん這いで頭の上に手をおきます。
その状態から肘を上に突き上げるようにして肩甲骨を内側に寄せます。
腱板機能のリハビリ
また腱板の機能が弱化する事も損傷を起こす原因となります。以下に腱板の筋力トレーニング方法を紹介します。
①棘上筋トレーニング
セラバンドを使用し、肩を真横に30°程度挙げ、その運動を繰り返します。
②棘下筋・小円筋トレーニング
セラバンドを固定して、脇を締めたまま腕を横に開いていきます。
体が捻じれたり肘が体から離れないようにする事がポイントです。
③肩甲下筋トレーニング
②とは逆に内側に腕を引きます。同様に体が捻じれないよう、肘が体から離れないようにして行います。
腱板損傷テーピング
腱断損傷でもっともの頻度の多い棘上筋のサポートテープを紹介します。
テーピングは伸縮性のあるキネシオロジーテープを使用します。
棘上筋は赤丸で囲った肩甲棘という部位の上から腕の骨まで走行しています。
骨を突起を確認して青丸から青丸にかけてテープを貼るイメージです。
テープにシワが寄らないようにして貼ります。
まとめ
●腱板とは肩のインナーマッスルで棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋を指す。
●腱板損傷は野球やバレーボールなどの肩のオーバーユースで生じやすい。
●予防には肩甲骨・背骨の機能も重要である
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