椎間板ヘルニアの原因・症状・治療・手術・ストレッチの全知識
腰の痛みの原因の1つであるヘルニア。
スポーツをしていてヘルニアになるケースも多く見られます。
今回は椎間板ヘルニアの治し方について解説していきます。
椎間板ヘルニアとはどんな状態か
腰痛は国民病といわれ、腰痛持ちは推定3000万人にも登るといわれています。
またヘルニアとは別ですが、年齢関係なく腰痛というのは起こりますので、気を付けましょう。
まず椎間板ヘルニアとはどのような状態かというと、背骨の間にある椎間板の中の髄核が飛び出して神経を圧迫して痛みや痺れ、異常感覚、力が入りにくいといった症状が出ている状態をいいます。
全く離れた場所にも出る場合があるので、ヘルニアがすすむと治療がさらに大変になってしまいます。
とてもわかりにくいので1つ1つ説明していきます。
ヘルニアとは
ヘルニアという言葉は、本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態を指します。
椎間板とは
椎間板とは椎骨(背骨の骨)の間に存在する軟骨です。背骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。
椎間板はゴムのように柔らかい組織なので、身体をねじったり、かがんだりする際にうまい具合に変形をして背骨の動きを作っています。
その椎間板の中心部には髄核と呼ばれる水分を豊富に含んだ組織が存在します。
背骨にストレスがかかると間にある椎間板には潰されるような力が加わります。
すると中にある髄核が椎間板を押しのけて変形させたり、突き破ってしまい外に飛び出してしまいます。
和菓子の最中をイメージしてみて下さい。
外側の皮が椎間板、あんこが髄核だとします。上から潰すと皮が変形したり、あんこが外へ飛び出してしまいますよね?
ヘルニアはそんな感じです。
背骨の後ろには神経がたくさん通っています。
神経は脳からの指令を体の各部位に伝えたり、体の各部位の感覚を脳に伝える電線のような役割をしています。
椎間板から飛び出た髄核が神経を圧迫してしまう事で、その電線の働きがうまくいかなくなり痺れや痛み、筋力低下が症状となって現れるのです。
・腰の椎間板ヘルニアは人口の約1%が患っているといわれています。
・20代〜40代に多いです。
・男女比は2〜3:1で男性に多いといわれています。
また腰の骨は図のように5つの椎骨という骨から成り立っています。
ヘルニアは腰の4番目と5番目の間が一番起こりやすく、ついで5番目と仙骨との間に起こりやすいです。
ヘルニアは起こる場所によって、脚の痛みや痺れの箇所が変わります。
椎間板ヘルニアの症状
椎間板ヘルニアは以下の症状が挙げられます
●電気が走るような強い腰や脚の痛み
●脚の痺れ
●脚の異常な感覚
●脚の脱力感
●頻尿や失禁
●尿や便が出にくくなる
椎間板ヘルニアの種類
椎間板ヘルニアには大きく2つの種類に分けられます。
脱出型ヘルニア
椎間板に亀裂が入り、髄核が飛び出してしまい神経を圧迫します。特徴としては激しい痛みなど、強い症状が出るが数ヶ月で和らぎます。脚の痛みや痺れがより強く出ます。
膨隆型ヘルニア
椎間板には亀裂が生じず、髄核と椎間板が膨隆して神経の中心部を圧迫します。
症状が長引く事が多いです。
脚の症状より、腰の痛みの症状の訴えが強い事が多いです。
椎間板ヘルニアの原因
椎間板ヘルニアの原因は一つではありません。
椎間板の変性によるもの
加齢とともに椎間板の中心部の髄核に含まれる水分量が減ってきます。すると椎間板に亀裂が生じやすくなりヘルニアを引き起こす原因となります。
遺伝によるもの
最近の研究結果のから椎間板ヘルニアは遺伝的な要素も原因にあるといわれています。
特に若い世代の椎間板ヘルニア患者の多くが家族にヘルニアを患った人がいたというデータがあります。姿勢や骨格が似ているためか、椎間板の遺伝子レベルの問題なのか詳細なところまではまだわかってはいません。
かがむ動作の反復によるストレス
中腰姿勢での作業や物を下から持ち上げる動作、不良姿勢での長時間のデスクワークなどで椎間板ヘのストレスがかかる事でヘルニアを発症する事が多いです。
姿勢による椎間板へのストレス
立った姿勢が椎間板へのストレスを100とすると
●立位姿勢から前に前屈 150
●座位姿勢 140
●座位姿勢から前に前屈 185
●座った姿勢・前にかがんだ姿勢から荷物をもつ 275
のストレスがかかります
このように姿勢によって椎間板へのストレスが変わります。
日常的にストレスのかかりやすい姿勢を長い時間取ることでヘルニアになる可能性が高くなります。
意外なのが座った姿勢の方が立った姿勢よりもストレスがかかっているという事です。
腰の骨は前に少しカーブがある形となっています。このカーブを生理的前弯といいますが、座った姿勢ではこの生理的前弯(腰のカーブ)が失われやすくストレスが増強します。
特に浅く座ったり、猫背の姿勢では椎間板により強いストレスがかかるのです。
椎間板ヘルニアの治療・手術
椎間板ヘルニアの治療法は大きく2つに分けられます。
保存療法
手術は行わずに治療する方法です。最近では手術よりも保存療法が優先される事が多くなっています。
消炎鎮痛剤などの薬で神経の炎症を抑えたり、神経ブロック注射と呼ばれる炎症のある神経に麻酔薬を直接注射する治療法が選択されます。
神経の炎症が治れば、突出しているヘルニアがあっても症状は治まってきます。
※神経ブロック注射で有名な病院は『NTT東日本病院 ペインクリニック科』です。
ヘルニアがあっても痛みが治まる⁈
痛みも痺れもなにも症状がない人でも検査をしてみたらヘルニアが見つかったという事も多くあります。
椎間板ヘルニアがあるからといっても必ず症状が出るとは限らないのです。ヘルニアのある箇所に炎症があるかどうかで痛みが生します。なので炎症を抑える事が出来れば痛みは軽減しやすいのです。
手術
保存療法を行っても改善がみられない場合や、脚の筋力低下がみられたり、排尿・排便機能に異常がみられていて生活に大きな支障がある場合は手術療法が選択されます。主な手術方法は以下です。
LOVE法
一般的に行われている方法で、全身麻酔をして、背中の皮膚を4〜5cmほど切開して神経を圧迫しているヘルニア部分を摘出します。
MED法
内視鏡で行う手術で、大きく背部を切開しないで済む為、傷が小さく術後の痛みが少ないという利点があります。LOVE法と同じく全身麻酔で行います。
PLDD法
椎間板に針をさしてレーザー光線を照射してヘルニアの圧迫力を軽減する方法です。しかしまだ広く普及しているとは言えず、出来る病院も限られています。
ヘルニアの手術の費用
LOVE法とMED法は保険適応なので費用は手術だけで10万円前後とされています。
PLDD法は保険適応外なので40万円前後といわれています。
手術代プラス、入院費や検査代などが費用としてかかります。
しかし手術は神経を圧迫しているヘルニアを除去するためのものなので、痛んでしまったり、変性した椎間板を元どおりにさせるものではありません。
そのため再発する事もあり、5年後の再発率は4〜15%ともいわれています。
なので最近はやむを得ない場合以外は保存療法を選択する事が多くなっています。
椎間板ヘルニア予防のストレッチ・筋トレ
腰のカーブが失われると椎間板の圧が後方にかかりやすくヘルニアが起こりやすいといわれています。
骨盤が後ろに倒れている姿勢や背中が丸まった姿勢がまさにその姿勢です。
カーレーサーなど一見運動とは関係なく見える人たちでも、耐久レースなどではG(重力)から腰を守るために筋トレを欠かさない人も海外では多くみられます。
特に太ももの裏のハムストリングスやお尻の筋肉が硬いとその姿勢になりやすいのでストレッチ方法を紹介します。
椎間板ヘルニアのストレッチ① ハムストリング
座った位置から伸ばす方の足を伸ばして背中が丸まらないように前に屈みます。太ももの裏が伸びているのを感じながら30秒以上静止します。
※足の痺れや痛みが出るようなら無理に行わないようにしましょう。
椎間板ヘルニアのストレッチ② 臀筋
座った位置から伸ばす方の足を上にして組み、背中が丸まらないようにして前に屈みます。臀部が伸びているのを感じながら30秒以上静止します。
椎間板ヘルニアのストレッチ③ 腰椎
腰のカーブを作るストレッチです。
うつ伏せになり両ひじをついて背中を反らします。その状態で30秒以上静止します。
さらに両手をついた状態で同じように反らしていきます。
※腰に痛みが出たり、足の痺れが出るようなら無理には行わないようにしましょう。
腰のカーブを支える背部の筋肉のトレーニング
四つん這いから左手と右足を体と平行になるようにまっすぐ伸ばして静止します。
左右交互に行います。
まとめ
●椎間板ヘルニアは椎間板にある髄核が飛び出して神経を圧迫した状態で、腰痛や足の痛み、痺れをともなう
●治療は保存療法が主流だが、重度の場合は手術を要すこともある
●予防にはハムストリングス、臀部の柔軟性、腰のカーブ保持が重要である
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