小指のしびれは肘部管症候群かも?治療・手術・ストレッチ全知識
ときどき手の小指や薬指のしびれを感じることはありませんか?
そのままにしておくと、肘から前腕の痛みや痺れが起こる症状が出てくる可能性があります。
その病名は肘部管症候群と言います。
野球のピッチャーや柔道などのスポーツをしている人、大工や手作業の仕事の人にもよく見られます。
今回は肘部管症候群について解説していきます。
手の小指のしびれを起こす・肘部管症候群とは
肘にある肘部管というトンネル部分を通っている尺骨神経が、圧迫されたり、引っ張られるストレスがかかる事で起こるケガです。
肘部管症候群の症状
- 小指と薬指のしびれや感覚異常
- 手の細かい運動がしづらい
- 握力の低下
- 手のひらの小指側の筋肉の萎縮
肘部管とは
出典:http://www.hachiouji-seikei.com/search/0606.html
肘の内側にある骨の突出部分を上腕骨内側上顆といいます。
この上腕骨内側上顆には神経が通る溝が存在します。この溝を尺骨神経溝と呼びます。
その溝の上を滑車上という靭帯が存在しています。
この尺骨神経溝を床として、天井を滑車上靭帯で囲まれたトンネルのような空洞部分を肘部管といいます。
尺骨神経は指の動きに大きく関係している
首から出て、腕の内側を通る神経です。 腕の骨は上腕骨、尺骨、橈骨という骨から成り立っています。
その尺骨の傍を走行する神経が尺骨神経です。
この尺骨神経は人体において、表面にあり筋肉や骨に守られていない最も大きな神経であり、事故や怪我、オーバーユースなどによって損傷を受けやすい神経といわれています。
肘部管は狭いトンネルスペースで尺骨神経が通過しています。
尺骨神経は手の小指と薬指の知覚や指を横に開いたり閉じたりする動きや小指、薬指の細かい動きを司っています。
尺骨神経が支配する筋肉は以下が挙げられます。
●短母指屈筋
●母指内転筋
●小指外転筋
●短小指屈筋
●小指対立筋
●短掌筋
●深指屈筋
●虫様筋
●尺側手根屈筋
●背側骨間筋
●掌側骨間筋
これだけたくさんの筋肉が尺骨神経によって支配されていますが、ほとんどが聞きなれない筋肉かと思います。
これらは手の小指側にある筋肉、手の細かい運動に関与する筋肉です。
●手首の曲げ伸ばし
●小指と薬指の曲げ伸ばし
●指を外に開いたり、内側に閉じたりする動作
尺骨神経が障害されると、この3つの動きがしにくくなると覚えておくと分かりやすいかと思います。
肘部管症候群の症状
●初期・・・主に小指と薬指に痺れ感があります。
●進行すると・・・手の筋肉が痩せて萎縮してきます。
●さらに進行・・・小指と薬指が真っ直ぐ伸ばせない鉤爪変形という変形が起こります。
●そして・・・力も入れにくくなり、指を開いたり閉じたりする動きができなくなり、握力も低下します。
こんな人は注意!
●小指や薬指に痺れがある
●中指、人差し指、親指には痺れがない
●片方の手にだけ症状がある
これに当てはまる人は肘部管症候群の可能性が高いです。
この赤丸で囲まれた部分に症状がでます。
肘部管症候群の原因
それでは肘部管症候群の原因についてを細かく見ていきましょう。
靭帯やガングリオンなどの腫瘤による圧迫
ガングリオンとは?
手によくみられる、しこりのようなコブです。中にはゼリー状の物質が溜まっている良性の物です。
できる原因はわかっていませんが、関節の滑りを良くする滑液という液体が何らかの原因で溜まってしまうものと言われています。
放っておいてもさほど問題はありませんが、次第に大きくなったり、神経を圧迫するような事があれば注射器で抜くこともあります。
加齢に伴う肘の変形
年齢とともに軟骨がすり減ったり、肘の骨に変形が見られるようになり肘部管を圧迫する事があります。
子供の頃の骨折による骨の変形
出典:http://www.orth.or.jp/Hospital/hizi/tyuubu.html
子供の頃の肘の骨折の後遺症で外反肘という肘を伸ばした際に角に外側に反る変形が見られると肘部管症候群になりやすいといわれています。
野球やテニス、柔道、仕事などでの肘への過剰なストレス
特にピッチャーや大工など肘を酷使する傾向のある人は肘の変形性関節症となり肘部管症候群を発症しやすいといわれています。
肘部管症候群の診断テスト
肘部管症候群を判別するためのテストを紹介します。
チネルサイン陽性
出典:http://ne-stra.jp/3849.html/2
肘部管の神経が圧迫されている部分を指や道具で叩く事によって指先に異常な感覚や放散痛、痺れが生じるかどうかをみます。
症状が生じた場合、肘部管症候群である可能性が高いと判断されます。
フローマン兆候テスト
親指と人差し指で紙を挟みます。
紙を引っ張って抜けないように力を入れてもらいます。
その際に抜こうとすると力が入らない、もしくは親指の第一関節を曲げてしまう動きがみられたら肘部管症候群の疑いがあります。
肘部管を通る尺骨神経は指を内側や外側に開くような筋肉を支配しているため、肘部管症候群ではその力が入らなくなるためフローマン兆候のような症状が生じます。
クロスフィンガーテスト
隣どおしになる手の指を重ねるようにクロスさせます。
尺骨神経は指を左右に開く筋肉を支配しているため、この動作ができなかったり、力が入りにくいと肘部管症候群の可能性が高いです。
肘部管症候群の治療法
初期で痺れや痛みが軽度の場合は肘を安静にして、消炎鎮痛剤やビタミンB剤を服用して経過をみます。
原因は使いすぎによる事が多いため、肘に負担のかかっている動作を避けて安静にする事が大切です。
長期に渡っても改善がみられなかったり、筋肉が萎縮してきたり、力が入らなくなるなど重度の症状が生じた場合は手術を行う事もあります。
肘部管症候群の手術
①支帯切離術(Osborne法)
②内側上顆切除術(King法)
③支帯の切離と内側上顆切除の合併手術(King変法)
④尺骨神経前方移行術
が代表的です
支帯切離術(Osborne法)
尺骨神経を締め付けている支帯(靭帯のようなバンド)や尺側手根屈筋の腱膜を切離する手術です。
内側上顆切除術(King法)
上腕骨の内側上顆(肘の内側にある骨の突出部分)を切離して骨を削り平滑にする手術です。
支帯の切離と内側上顆切除の合併手術(King変法)
その名前の通り支帯切離術(Osborne法)と内側上顆切除術(King法)を同時に施行する手術です。
尺骨神経前方移行術
内側上顆の後方を通る尺骨神経を前方に移行させる事で締めつけを和らげる手術です。
肘部管症候群と似たケガもあります
肘部管症候群ととてもよく似たケガもありますので間違えないようにしないといけません。
ギヨン管症候群
同じ尺骨神経の障害を起こす病態としてギヨン管症候群というのもがあります。
ギヨン管とは手首にある小さな骨と骨の間にあるトンネル部分を指し、この部分で尺骨神経が圧迫をされる事で症状が出現します。
手首には手根骨と言われる小さな骨が複数存在します。
この中の豆状骨という骨と有鈎骨という骨の間にあるのがギヨン管です。
ギヨン管症候群かどうか?テストしよう
チネルサイン陽性
ギヨン管の部分を指や道具で叩く事によって指先に異常な感覚や放散痛、痺れが生じるかどうかをみます。
症状が生じた場合、ギヨン管症候群である可能性が高いと判断されます。
フローマン兆候テスト
肘部管症候群の場合と同じように親指と人差し指で紙を挟みます。
紙を引っ張って抜けないように力を入れてもらいます。
その際に抜こうとすると力が入らない、もしくは親指の第一関節を曲げて代償するような動きがみられたらギヨン管症候群の疑いがあります。
肘部管症候群との違い
薬指と小指に痺れが生じるのは肘部管症候群と同じですが、ギヨン管症候群は手のひら側にのみ症状が生じ、手の甲側には痺れが出ないのが特徴です。
また肘部管症候群は小指と薬指が曲がったままになりやすいですが、ギヨン管症候群ではその症状は出ません。
同じ尺骨神経の障害ですが圧迫されている部位が異なるというのが特徴です。
肘部管症候群の予防ストレッチ
肘部管症候群の原因は神経を物理的に圧迫してしまっている事であるため
その圧迫の原因が骨の変形やガングリオンなどによる場合は手術にてその圧迫しているものを除去する事が根本治療となるため、ストレッチをしても改善は難しいかもしれません。
しかし筋肉硬くなることで肘部管を圧迫する事もあるためそれを事前に予防する事も可能です。そのためのストレッチを紹介していきます。
前腕屈筋のストレッチ
肘を真っ直ぐ伸ばした状態で手首を手の甲側に反らして前腕を伸ばします。
肘から前腕が伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチします。
前腕マッサージ
テニスボールで肘の内側から手首にかけての筋肉をマッサージしていきます。
まとめ
●肘部管症候群とは肘の神経の通り道を圧迫する事で起こる障害である
●症状は薬指、小指の痺れ、手指の筋力低下、手の筋肉の萎縮である
●根本的な改善には手術が必要なことが多い
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