橈骨遠位端骨折の分類と手術方法!後遺症をリハビリで防ごう

転倒して手をついた時に起こる手首の骨折。

医学的な病名は橈骨遠位端骨折といいます。

今回は骨粗鬆症の高齢者に多い橈骨遠位端骨折について解説していきます。

橈骨遠位端骨折とは

前腕にある橈骨という骨の末梢部の骨折を橈骨遠位端骨折といいます。

転倒で手をついた際に受傷する事がほとんどで、子供、成人、高齢者と幅広い年代に見られます。

子供の場合は遊びやスポーツによる転倒や高所からの転落によって受傷する事が多いです。

大人の骨のようにポキンと折れず、若い木の枝がしなるような骨折となるのが特徴です。

成人に多く見られるのはスノーボードやスケートの転倒や高所からの転落による骨折です。

高齢者に起こる骨折の中でも橈骨遠位端骨折の割合は多く、特に骨粗鬆症の人に多く見られます。

自宅の玄関などの段差や絨毯の境目などに引っかかって転倒する事が多く、特に女性に多いのが特徴です。

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橈骨とは?手首と前腕の骨について

肘から手首までを前腕といいますが、前腕には橈骨と尺骨の2本の骨が存在します。

手首と前腕の骨
また手首には手根骨と呼ばれる小さな骨が存在しており以下の骨が存在します。

手の骨
・豆状骨
・三角骨
・月状骨
・舟状骨
・有鈎骨
・有頭骨
・小菱形骨
・大菱形骨

手首は橈骨と手根骨によって構成される関節となります。

橈骨遠位端骨折の分類

橈骨遠位端骨折は骨折の転位の仕方によって以下のように分類されます。

コーレス骨折

コーレス骨折

コーレス骨折とは橈骨遠位骨片が手の甲側に転位してフォークの形のような変形をした骨折です。

コーレス骨折は手のひらをついて転倒して、背屈(手首が手の甲側に反る動き)が強制された時に生じます。

スミス骨折

スミス骨折
スミス骨折は橈骨遠位骨片が手のひら側に転位する、コーレス骨折とは逆の変形が生じた骨折をいいます。

バートン骨折

バートン骨折
橈骨遠位端の関節内における骨折で、コーレス骨折、スミス骨折よりも重症となる事が多いです。

手のひら側に骨が転位する掌側バートン骨折、手の甲側に骨が転位する背側バートン骨折とに分けられます。

橈骨遠位端骨折の症状

橈骨遠位端骨折になると以下の症状が見られます。
・強い痛み
・腫れ
・発赤
・熱感
・骨の変形
・手首の曲げ伸ばし困難

まれに手首を通る正中神経が圧迫されたり損傷を受けると手の痺れや、麻痺が生じる事もあります。

橈骨遠位端骨折の診断

橈骨遠位端骨折が疑われたら整形外科を受診します。

一般的にはレントゲン検査にて診断が可能です。

関節内への転位など細かい診断が必要な場合はCTやMRI検査を行う場合もあります。

橈骨遠位端骨折の治療方法

橈骨遠位端骨折の治療方法は骨折の種類や転位の程度によって異なります。

骨折の転移がほとんどない場合はそのままギプスにて固定して約4〜6週間固定します。

骨折に転位がある場合は医師が徒手にて整復をした上で、ギプス固定します。

痛みを伴うため場合によっては部分麻酔をして整復を行います。

徒手整復が困難な場合や転位が大きい場合には手術を行います。

近年では橈骨遠位端骨折にはロッキングプレートを用いた手術が頻繁に行われており、以前よりも治療期間の短縮が可能となっています。

ロッキングプレート

ロッキングプレート

ロッキングプレートで固定した骨
引用:http://www.offroad-funtouki.com/kossetu2/kossetu2.html

橈骨遠位端骨折の治療期間

骨折の程度や年齢などによっても個人差がありますが、橈骨遠位端骨折ではギプス固定がおよそ4~6週間となります。

その後リハビリにて関節可動域訓練や筋力トレーニングを行い、受傷してから2~4ヶ月程度で日常生活への支障はなくなってきます。

細かい動きや力が必要な動作の支障は半年~1年程度残存する事もあります。

橈骨遠位端骨折の合併症

橈骨遠位端骨折に多く見られる合併症として主に以下のものが挙げられます。

正中神経麻痺

受傷した際に手首を通る正中神経が損傷を受けると痺れや筋肉の麻痺が生じる事があります。

また橈骨遠位端骨折によって手根管(手首にある血管や腱、神経の通り道)が圧迫されることでも正中神経麻痺が生じます。

長母指屈筋腱断裂

手術にてロッキングプレート固定をした後に、親指を曲げる筋肉である長母指屈筋腱とロッキングプレートとに摩擦が生じて擦れる事で腱が断裂してしまう事があります。

反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)

神経因性疼痛の1つで原因が解明されていないものです。

激しく焼けるような痛みや患部の腫れや熱感、感覚過敏、発汗異常、骨の萎縮といった苦痛な症状がみられます。

治療法としては温熱と寒冷の交代浴やペインクリニックなどで神経ブロック注射が行われます。

橈骨遠位端骨折のリハビリ

橈骨遠位端骨折の後は前腕や手首周囲の筋肉の柔軟性が低下したり、関節の動きが低下したり、力が弱くなったりします。

症状を改善させるためにリハビリが重要となります。

リハビリには主に物理療法と運動療法があり、両方を併用しながら進めていきます。

物理療法

物理療法とは温熱や電機などの物理的な力を使って体の回復を促進する治療法です。

主に整形外科や接骨院などに置かれている電気治療器などがそれに当たります。

橈骨遠位端骨折後には温熱療法が行われます。

温熱療法は患部を温める事によって血流促進、循環の改善、筋緊張の緩和、筋の柔軟性改善といった効果が期待できます。

橈骨遠位端骨折にてよく行われる温熱療法は超音波やホットパック、バイブラ浴です。

運動療法

運動療法は病院にて理学療法士や作業療法士が行います。

骨折後のギプス固定によって硬くなった関節の動きを改善する可動域訓練や筋力増強訓練、巧緻動作訓練などを主に行います。
個々の症状によって行う内容は変わってくるため、理学療法士や作業療法士がメニューを立てていきながらリハビリを進めていきます。

橈骨遠位端骨折後の自主トレーニング

リハビリが進んでいくに連れて、自分でも家で自主トレーニングを行っていきます。理学療法士や作業療法士の指導の元、無理のない範囲で自分でもリハビリを行なっていきます。代表的な自分でも行えるリハビリメニューを紹介していきます。

①テニスボールでのマッサージ

橈骨遠位端骨折後は肘から手首、指先にかけての筋肉が硬くなります。

テニスボールでのマッサージ
写真のようにテニスボールを前腕の外側と内側に押し当ててマッサージをして柔らかくしていきます。

テニスボールでのマッサージ

②ストレッチ

手首のストレッチ

肘を伸ばして手首を手のひら側に曲げて、前腕の外側の筋肉を伸ばしていきます。伸びている事を感じながら30秒程度伸ばしていきます。この時指を曲げるのがポイントです。

手首のストレッチ

肘を伸ばして手首を手の甲側に反らして、前腕の内側の筋肉を伸ばしていきます。伸びている事を感じながら30秒程度伸ばしていきます。この時指を伸ばすのがポイントです。

③棒体操

棒をつかったストレッチ棒を握って机などに肘を置きます。

手を左に傾ける

前腕を内側と外側に捻るように動かします。

手を右に傾ける

④ペットボトルでの筋トレ

ペットボトルでの筋トレ・前腕伸筋

⑤床や台を使ったストレッチ

床や台を使ったストレッチ机や床に手をついて痛くない範囲で体重をかける事でストレッチできます。

⑥握力

ハンドグリッパーを使って骨折によって低下した握力を鍛えます。

⑦指の体操

指の体操写真のように指を曲げる運動を行います。

指の体操

この体操はギプスを巻いている時から行う事で、指の腱動きが悪くなるのを予防する事が出来ます。

指の体操

⑧皮膚のリリース

手首の皺を縦方向と横方向にたわませる

特に手術の後は、術創部の皮膚の動きが悪くなり関節の可動性が低下します。

手首の皺を縦方向と横方向にたわませる

写真のように手首の皺を縦方向と横方向にたわませる事で硬くなった皮膚をリリースする事が出来ます。

まとめ

・橈骨遠位端骨折は転倒などによって手をついた時に起こりやすく、子供から高齢者まで幅広い年代多く見られる。
・骨折の転位によっていくつかの種類に分けられる。
・治療は転位がなければそのままギプス固定を行い、転位の程度によって徒手整復や手術が行われる。

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