ジャンパー膝の症状・治療・サポーター・ストレッチ・テーピング全知識
全てのスポーツに重要なのは「膝」です。
膝のケガがあるとスポーツの試合に出ることが出来なくなるどころか選手生命も脅かされてしまう可能性があります。
今回はジャンプを繰り返す競技に多い「ジャンパー膝」の治し方について解説していきます。
ジャンパー膝の治療とストレッチ・テーピングの巻き方・サポーターの選び方教えます
ジャンプ動作の多いバレーボールやバスケットボールをしている選手に好発する膝の痛みをジャンパー膝と呼びます。
またサッカーやテニスなどのダッシュ動作が多いスポーツにもよくみられます。
ジャンパー膝とは
ジャンパー膝とはジャンパーズニーとも呼ばれますが、正式名称は膝蓋靭帯炎、または膝蓋腱炎といいます。
この膝蓋靭帯がジャンプ動作や膝の曲げ伸ばし動作にて繰り返し引っ張られるストレスが加わることで損傷し、炎症を起こす事で発症します。
ジャンパー膝になりやすいスポーツ
●バレーボール
●バスケットボール
●サッカー
●テニス
●ハンドボール
●バトミントン
●走り高跳び
●走り幅飛び
●体操
●ハードル走
膝蓋靭帯とは
膝のお皿を膝蓋骨と呼びます。
膝蓋骨の下部にあるのが膝蓋靭帯で、脛の骨である脛骨に付着しています。
膝蓋靭帯は膝蓋腱とも呼ばれますが同じ部位を指します。
膝蓋靭帯は大腿四頭筋から繋がっており、膝を曲げ伸ばしする事で大腿四頭筋が伸び縮みする事により引っ張るストレスがかかります。
ジャンパー膝の症状
ジャンパー膝の症状は膝のお皿の下、時にお皿の上部に痛みが生じ、膝を曲げたり、ジャンプ、ダッシュ動作時に痛みが生じ、スポーツに支障をきたします。
以下にジャンパー膝の病期分類を示します。
ジャンパー膝の症状の分類
Ⅰ 運動後の疼痛で運動には支障がない。
Ⅱ 運動前後の疼痛があるが運動中は軽快し、運動は継続可能。
Ⅲ 運動中の疼痛で運動に支障あり。
Ⅳ膝蓋靭帯の完全断裂。
ⅠからⅡの段階ではスポーツに支障をきたさないため、見逃してしまい悪化する事があります。
時に損傷した靭帯が骨化、石灰化を起こしてしまったり、Ⅳの段階までに至ると手術が必要な事もあるので早期の診断、治療が大切です。
ジャンパー膝の痛みの出る部位
①お皿の下端から膝蓋靭帯付着部で70%
②お皿の上端から大腿四頭筋付着部で20%
③膝蓋靭帯中央から脛骨粗面で10%
この3箇所に痛みが出ます。
【注意】ジャンパー膝は他の病気と症状が似ている
※このジャンパー膝の症状は前回取り上げたオスグッドシュラッター病と非常に似ています。
特に膝のお皿から下にかけての痛みの鑑別はわかりづらく、正確な診断が必要です。
以下にジャンパー膝とオスグッドシュラッター病の違いについて簡単にまとめます。
ジャンパー膝とオスグッドシュラッター病の違い
●ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)
・患部は膝蓋靭帯
・骨の成長期を終えた10代後半以降に起こりやすい
・脛骨の突出は生じない
●オスグッドシュラッター病
・患部は脛骨粗面
・骨の成長期である10代前後に起こりやすい
・脛骨の突出が特徴的である
ジャンパー膝によく似た症状の病気
●シンディング・ラーセン・ヨハンソン病
あまり聞きなれない病名ですが、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病という膝の病態もジャンパー膝とよく似た症状です。
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病は膝のお皿の膝蓋骨が患部となります。
成長期の骨はまだ硬さが十分でなく、軟骨のような組織となります。
そのため膝蓋靭帯よりも脆弱であるため、繰り返し膝の曲げ伸ばしによって膝蓋骨に引っ張られるストレスが加わり、炎症を起こします。
時に膝蓋骨の下部が剥離してしまう事もあります。
成長期を終え、膝蓋骨が骨形成されると再発は起こりません。
●有痛性分裂膝蓋骨
有痛性分裂膝蓋骨という病態も膝のお皿周囲に痛みを呈します。
通常膝蓋骨は1つの塊ですが、まれに2つ以上に分裂をしている人がいます。
多くは先天性で生まれつきになっている事が多いですが、スポーツでの衝撃により分裂しています事もあります。
上の図のように分裂の仕方によって分けられます。
10代前半のスポーツをしている子に多く、軽度であれば運動を休止し安静にする事で軽快します。
しかし繰り返し再発を起こす場合は膝蓋骨の一部を摘出したり、膝蓋骨を縫合する手術を行う事もあります。
このようにジャンパー膝は他の疾患と似た症状ですので、整形外科でのしっかりとした診断を受けることをオススメします。
レントゲンだけでなく、MRI検査を受ける事も有用です。
ジャンパー膝の治療
ジャンパー膝は膝蓋靭帯が繰り返し引っ張られるストレスがかかる事により、炎症を起こしている病態です。
つまりオーバーユースが大きな原因となるので、患部へのストレスを軽減するために安静にする事が大切です。
初期の段階ではスポーツも可能ですが、練習後の患部へのアイシングやウォーミングアップ、ストレッチなどを十分に行い患部のケアをする事が大切です。
状態が悪化し、膝蓋靭帯が断裂したり、靭帯が骨化したりすると手術が必要となる事もあります。
サッカーの内田篤人選手もジャンパー膝に
※最近の例ではサッカー日本代表の内田篤人選手が膝蓋靭帯炎で長期の離脱を余儀なくされていました。
内田選手の膝蓋靭帯は骨化していたと言われ手術をしました。
2015年3月を最後に約2年間リハビリ生活を送り復帰にはかなりの時間を要しました。
内田選手は以前にも右膝半月板損傷、右のハムストリングス肉離れなどの怪我があり、元々右膝への負担はあったものと考えられます。
そんな中ブラジルワールドカップやドイツブンデスリーガで多くの試合をこなしたオーバーユースが原因となった可能性が高いです。
日本代表にもなる一流のプロサッカー選手でさえ長期間の離脱を余儀なくされるため、早期の診断と治療がやはり不可欠となります。
ジャンパー膝になりやすい人の特徴
以下の身体特徴があるとジャンパー膝になりやすいといわれます。
①大腿四頭筋が硬い人
※自宅で出来るチェック法
うつ伏せに寝て膝を曲げます。踵とお尻の距離が遠かったり、お尻が浮き上がる現象が起こると大腿四頭筋の硬さが疑われます。
②猫背の人
猫背で骨盤が後傾している姿勢では重心が後方にあるため大腿四頭筋に負荷がかかります。
重心が後方にあって何も力を入れなければ身体は後ろに倒れてしまいますが、大腿四頭筋が支える事によって倒れないようにバランスをとっているのです。
つまり常に大腿四頭筋が働いているためストレスが生じてしまいます。
試しにまっすぐ姿勢を保って立つのと猫背で身体を丸めて立ってみて下さい。太ももの前面が張ってくるのがわかると思います。
③間違ったスクワットをする人
スクワット動作が図のように骨盤が倒れた状態で行う癖のある人は大腿四頭筋にストレスがかかりやすくジャンパー膝となりやすいです。
ジャンパー膝の予防とリハビリにはストレッチ・サポーターで
ジャンパー膝のリハビリのポイントは
●大腿四頭筋の柔軟性を改善する
●足首の柔軟性を改善する
●骨盤前傾位での膝を曲げる動作を学習する
の3点です。
ジャンパー膝のストレッチ
それではジャンパー膝を予防・リハビリをする為のストレッチの方法を紹介します。
ジャンパー膝のストレッチ①大腿四頭筋
寝た状態で踵とお尻を近づけ大腿四頭筋を伸ばします。反対側の足を曲げることで、骨盤が固定されるのでしっかりと伸ばせます。
ジャンパー膝のストレッチ②足首
アキレス腱伸ばしの要領です。踵は浮かさず、つま先は真っ直ぐ前を向きます
ジャンパー膝のストレッチ③ハムストリング(太もも裏の筋肉)
●ハムストリング(太もも裏の筋肉)ストレッチ
※ハムストリングスの硬さは骨盤を後傾させます
骨盤をしっかりと起こした状態で膝を伸ばし体を前に傾けます。
骨盤が倒れた状態ではしっかりとストレッチ出来ません。
ジャンパー膝のストレッチ④殿筋
●殿筋のストレッチ
※殿筋の硬さは骨盤を後傾させます。
足を組み体を前に傾けます。この時も骨盤をしっかりと起こしましょう。
ジャンパー膝のサポーターの選び方
サポーターはたくさんの種類がありますが一体どれを選べばいいのか?教えます。
ジャンパー膝のサポーターは『パテラバンド』
ジャンパー膝にはパテラバンドと呼ばれるサポーターは有効です。膝蓋骨の下に巻くことで、膝蓋靭帯へのストレスを軽減させる効果があります。
ジャンパー膝のテーピングの巻き方
テーピングで膝を固定してしっかりリハビリをしていく事が完治への近道です。
ジャンパー膝のテーピングは伸縮性のあるテープで
テーピングは伸縮性のあるキネシオテープを使用します
ジャンパー膝のテーピングの張り方
①まず太ももからお皿の下までの長さにテープを切ります。
②3cm程残して二股になるように切り込みを入れます
③膝を90°曲げた状態で膝のお皿の下から、お皿を包むように大腿部の内側・外側にテープを張ります。テープのしわが生じない程度にテンションをかけて張ります。
④次に10cm程切り込みを入れたテープを用意します。
⑤太ももの上からお皿を包みようにテープを張ります。テープにしわが寄らない程度にテンションをかけて張っていきます。
完成です。
※あくまで症状を和らげる、負担を軽減させる目的でテーピングを使用しますが、痛みが続くようであれば運動を休むことも重要です。
※写真の見栄えの関係でタイツの上に張っていますが、実際は直接皮膚に貼ります。
まとめ
●ジャンパー膝は、オーバーユースによる膝蓋靭帯の損傷でありジャンプ動作やキック動作の多いスポーツに好発する。
●オスグット病、有痛性分裂膝蓋骨、シンディング・ラーセン・ヨハンソン病といった類似した疾患があり、鑑別のためには正確な診断が重要
●予防、リハビリは大腿四頭筋の柔軟性改善、スクワット動作の改善、骨盤後傾位の改善が重要である
ケガを防ぎたい人・治したい人は『いいね!』をして下さい。役立つ情報をお届けします。