むちうちの原因・症状・後遺症とリハビリの方法・全知識

交通事故やスポーツでの衝突などによって受傷する首や肩の痛み。

今回は、一般にむちうちと呼ばれる障害について症状とリハビリのやり方について説明していきます。

むちうちとは

交通事故やスポーツなどの衝撃により、首が過度に後ろに反る過伸展、過度に前に曲がる過屈曲といった外力が加わり、痛める症状を一般に「むちうち」と呼んでいます。

医学的な正式名称としては「外傷性頸部症候群」「頚椎捻挫」といいます。

頚椎の仕組みについて

頸椎一般に首と呼ばれている部位は頚椎といいます。

頚椎は7つの骨から構成されており、周りを筋肉や靭帯で支えられています。

 

頚椎と頚椎の間には椎間板というクッションのような役割をする組織が存在しています。

また上の頚椎と下の頚椎は椎間関節という関節によって連結されています。

頚椎の後ろには脳から繋がる脊髄という神経が通っています。

むちうちではその衝撃の力の程度や方向によって、筋肉、靭帯、椎間板、椎間関節、神経のいずれかが損傷を受ける事が多いです。

むちうちの症状

むちうちでは以下のような症状が出現します。

  • 首や肩にかけての痛み
  • 頭痛
  • 背中、首、肩のコリ
  • 首の可動域制限
  • めまい
  • 目の疲れ
  • 手の痺れ
  • 腕の重だるさ
  • 吐き気
  • 胃の不快感
  • 疲労感

むちうちの症状はいつから出現する?

交通事故後のむちうち症状の特徴として、事故の直後はあまり症状が出ない傾向があります。

翌日や数日後から、症状が出てくる事が多いです。

理由としては、事故後は心理的にパニックになり興奮状態である事や、時間が経って患部が腫れて炎症を起こすためであるといわれています。

むちうちの診断

むちうちは整形外科にて診断を受けます。

レントゲンにて骨の状態や椎間板の幅などを確認します。

重度の場合はMRI検査にて、どこの部位が障害されているかを精密に検査します。

むちうちの分類

むちうちには、症状によって5つの型に分類されます。

頚椎捻挫型

むちうちの内の80%を占めており、多くの方の症状がこの頚椎捻挫型になります。

頚椎にある筋肉や靭帯が過度に伸ばされた事により、部分的な損傷を受け、痛みなどの症状を引き起こします。

背中や肩のコリ、可動域制限、頭痛、めまいといった症状がみられます。

特に受傷して間もない時は、患部をアイシングしたり、安静にしたり事が大切です。

ついつい首や肩のマッサージをしたくなりますが、最初の炎症がある時期に行なってしまうと逆に症状が悪化する事が多いです。

簡単なイメージとしては、足首の捻挫と同じで、捻挫直後に足首を動かしたり、マッサージをしたりすると悪化するのと同じ感じです。

神経根症状型

神経根症状型

頚椎の後ろを脊髄という神経が通っています。

その脊髄から細く枝分かれしている部分を神経根といいます。

頚椎が衝撃により、急激に後ろに反る伸展方向に力が加わった際に、この神経根が強く圧迫されて生じるのが神経根症状型です。

頚椎捻挫のように数日後に症状が現れるというよりは、受傷した直後に症状が現れやすいです。

神経の損傷なので、筋力が低下したり、痺れが出たり、感覚が乏しくなるといった症状がみられます。

頚椎から出る神経は腕や指を司っているため、その支配領域に症状がみられます。

神経根症状型の場合は頚椎カラーなどで、頭の重さを除去して神経根に圧力が加わらないようにする事が初期の時期は有効です。

 

バレー・リュー症候群

頚椎捻挫後に発症して、難治性のめまい、吐き気、頭痛、耳鳴り、霧視などの自律神経症状を主体とした愁訴を呈するのをバレー・リュー症状群といいます。

症状としては、頭痛、めまい、耳鳴り、視障害、嗄声、首の違和感、摩擦音、疲労感、血圧低下などの自覚症状を主体とします。

バレー・リュー症候群が発生する機序にはいくつかの説があります。

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バレー・リュー症候群が発生する学説

①頚部交感神経緊張亢進説

頚部にある交感神経が刺激されて、周りの筋肉が常に緊張をする事によって症状が起こる説。

②椎骨動脈循環障害説

頚部にある交感神経が過緊張を起こし、頚部にある椎骨動脈を血流が悪くなる事によって症状が起こる説。

③頚部軟部組織緊張亢進説

頚部にある体の動きを感じ取るセンサー(固有受容器)に異常をきたし、平衡感覚が障害されて症状が起こる説。

④脳幹障害説

外力を受けた時に生じたストレスが、脳幹や小脳に何らかの障害を起こして症状が起こる説。

⑤末梢前庭・内耳障害説

耳の奥にある耳石という、体の平衡感覚などを司る受容器が障害されて症状が生じる説。

脊髄症状型

脊髄とは背骨の後ろに通っている神経組織です。

 

脊髄が損傷を受けると手足に麻痺が出たり、痺れが出たり、感覚がなくなったり、筋肉の緊張が高まったりなどの症状がみられます。

また尿や便が出しにくくなったりする直腸膀胱障害がみられる事もあります。

脊髄症状型の場合は予後が悪い可能性もあるため、状態が安定するまで絶対安静にする必要があります。

脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)

外力の衝撃によって、脳や脊髄を満たしている脳脊髄液が漏れ出てしまう事によって様々な症状を呈するのを脳脊髄液減少症といいます。

通常脳脊髄液は膜によって包まれているのですが、強い衝撃によって膜が避けてしまう事が、漏れ出てしまう原因といわれています。

症状は、頭痛、首の痛み、めまい、耳鳴り、視覚障害、倦怠感など多岐にわたります。

大きな特徴として、横に寝ている時には症状は出現しませんが、起き上がって3時間程度経つと症状が現れ、また横になると軽快します。

有効な治療法として、ブラッドパッチ治療と呼ばれる自分の血液を使って漏れている穴を塞ぐ方法があります。

脳脊髄液が漏れている付近に、背中から針を刺して、患者自身から採った血液を注入します。

そうする事で脳脊髄全体に血液が広がり、徐々に固まる事で漏れている穴を塞ぐ方法です。

むちうちの分類

むちうちの症状による分類はケベック鞭打ち症関連障害(whiplash associated disorders:WAD)特別調査団による研究によって提唱されています。

ケベック鞭打ち症関連障害

Grade0
頚部痛なし

Grade1
頚部痛のみ

Grade2
頚部痛+頚部運動制限・圧痛あり

Grade3
頚部痛+神経学的所見あり(筋力低下、知覚障害、腱反射低下・消失)

Grade4
頚部痛+骨折・脱臼あり

 

むちうちの治療期間や後遺症について

むちうちと診断をされたとしても、むちうちの分類に挙げたように、状態は多岐にわたります。

 

そのため治療期間や後遺症についても、様々であり、個人個人によっても大きく変わってきます。

むちうちのリハビリについて

むちうちの症状に対して、リハビリを行う事によって症状が軽快する事もあります。

しかし、受傷したばかりの急性期の時は、首を動かしたり、マッサージをする事で症状が悪化する事が多いため注意が必要です。

 

始めの頃は頚椎カラーなどを着用して安静にする事から始め、徐々にリハビリを行なっていく事が大切です。

頚椎への負担を軽減するためには、姿勢を調整する事や周りの筋肉を柔かくする事が有効なので簡単にできる方法をいくつか紹介します。

頸椎のリラクゼーション

バスタオルなどを丸めて、首の真ん中に置きます。
首の自然なカーブをつくる矯正と頸部のリラクゼーション効果があります。

首のストレッチ

タオルを首にかけて前に引っ張りながら、首を後ろに反らしていきます。
首の自然なカーブをつくる矯正と首のストレッチ効果があります。

マッサージ

テニスボールを写真のように二つ並べて、ガムテープなどで固定します。

テニスボール

首の上の方と頭の間に当たるように置いて寝ます。

首の上にある後頭下筋という筋肉のマッサージになります。

※これらのリハビリは受傷して間もない時期や、神経症状が強く出現している場合は症状が悪化する事もあるので注意が必要です。医師や理学療法士の指示の元行いましょう。

まとめ

・むちうちは交通事故やスポーツの衝突などによって受傷する、頸椎の怪我である。
・症状は痛み、頭痛、痺れ、めまいなど多彩で、損傷を受けた部位によって様々である。

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