後縦靱帯骨化症の原因・症状・治療・手術・リハビリの全知識

手足が痺れる!転びやすくなった!歩きにくくなった!

さらに尿や便が出しにくい。という事はありませんか?

もしかすると後縦靱帯骨化症かも知れません。

今回は難病指定されている後縦靱帯骨化症の症状と治療法について解説していきます。

後縦靱帯骨化症とは

後縦靱帯骨化症とは背骨の後ろにある後縦靱帯が、骨化してしまい神経を圧迫して手足の運動に支障をきたす疾患です。

40歳以上の人に多く発症します。

2対1の割合で男性に多く見られます。後縦靱帯骨化症は指定難病とされています。

指定難病とは

難病とは病気になる原因がはっきりと分かっておらず、明確な治療法が確立されていないため長期の療養を必要とする病気のことです。

医療費の負担額が助成されます。

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後縦靱帯とは?

まず後縦靱帯について解説します。

脊柱

一般に背骨といわれている部分を脊柱といいます。

脊柱を構成している一つ一つの骨を椎骨といい、頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨に分けられます。

頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個ありそれぞれが動く事で脊柱の運動を可能としています。

靭帯

脊柱が過剰に動かないように支えているのが靭帯で、脊柱の靭帯には前縦靭帯、後縦靭帯、黄色靭帯、棘上靭帯、棘間靭帯があります。

後縦靱帯は脊椎の椎体の後ろを支えている靭帯です。

後縦靱帯の後ろには大事な神経が通っている

脊柱には脊柱管という長いトンネルのような空洞があり、その中を脊髄が通っています。

脊柱管

脊柱管

脊髄は脳から繋がっており、脳の指令を身体の各部位に伝える大事な神経がたくさん詰まっています。

これらは運動の指令を伝える運動神経、触った感触や温度や痛みを伝える感覚神経など人間が動作をする上で欠かせない大事な神経です。

そのため後縦靱帯骨化症によって後縦靱帯が骨化し、脊髄を圧迫したり傷つけてしまう事で大きな障害をもたらしてしまいます。

後縦靱帯骨化症の原因

後縦靱帯骨化症の原因はまだはっきりと解明されていません。

糖尿病や肥満だとなりやすい傾向があるといわれていますが、明確な因果関係はわかっていません。

年齢、遺伝、姿勢など様々な要素が重なって発症するのではないかといわれています。

後縦靱帯骨化症の症状

後縦靱帯骨化症の初発症状では後頭部や頸部の痛み、肩こり、手の痺れや痛みがよく見られます。

進行するにつれて、足のしびれや痛み、感覚鈍麻、手足の筋力低下、手足の腱反射異常、病的反射の出現、排尿排便障害などが見られます。

そのため、

  • 手の細かい動作がしにくくなった
  • 手足が痺れる
  • 転びやすくなった
  • 歩きにくくなった
  • 尿や便が出しにくい
  • 残尿感がある

といった症状にて生活に支障をきたします。

後縦靭帯が骨化する部位によって症状は違います。

①頸椎の後縦靭帯骨化症の症状

後縦靭帯骨化症は手、足の痺れから始まることが多いです。

進行すると手の細かい動作に支障が出たり、排尿障害や歩行障害がみられます。

②胸椎の後縦靭帯骨化症の症状

多くは足の痺れや脱力感で始まります。

進行すると排尿障害や歩行障害が生じてきます。

③腰椎の後縦靭帯骨化症の症状

歩行時の下肢の痺れや痛み、脱力感が出ます。

骨化した部分に外力での刺激が生じると急激に症状が悪化する事もあります。

後縦靱帯骨化症の診断

後縦靱帯骨化症は整形外科や神経内科にて診断や検査を受けます。

まずレントゲン、CT、MRIなどの画像診断を行い後縦靱帯が骨化していないかを診断します。

痺れ、筋力低下、腱反射異常などの身体所見の有無をみて診断します。

後縦靱帯骨化症の治療法

後縦靱帯骨化症の根本的な治療はまだ解明されていません。

そのため、出現する症状に対しての対処療法が行われます。

進行している場合や症状が重度の場合は手術を行なう事もあります。

<対処療法>

薬物療法

首や肩の凝りに対して、筋肉を柔らかくする薬や痛み止めを使用して症状を和らげます。
また痺れに対してはビタミン剤が処方される事が多いです。

後縦靱帯骨化症の治療②固定による安静

頸椎カラーや体幹装具などを着用して脊柱には負担がかからないようにします。

頸椎カラー

頸椎カラー

体幹装具

体幹装具

<物理療法>

痛みに対して物理療法が行われます。物理療法には以下の種類があります。

温熱療法

ホットパックやマイクロ波、超音波などで患部を温めます。

温める事で血流を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを緩和する効果が期待できます。

牽引療法

最近は少なくなってきていますが医療用の牽引台で首や腰を引っ張る治療方法です。

牽引療法

首にベルトを巻き、牽引する事によって頚椎(首の骨)にかかっている負担の軽減、筋肉の緊張の緩和、筋肉のストレッチ効果が期待できます。

電気療法

低周波や干渉波などの電気刺激によって治療する方法です。

電気療法

患部に電気を流す事によって、痛みを伝える神経の興奮の抑制や筋肉のリラクゼーション効果が期待できます。

<手術療法>

症状が重度の場合は手術を行います。

術式は病態によっていくつかありますが、主に骨を除去したり、削ったりして脊柱管を広げる手術をする方法と骨化した靭帯そのものを除去する方法があります。

首の前から切開して行う「前方除圧固定術」と、首の後方から切開して行う「後方除圧術」とがあります。病

態によってどちらを選択するかは医師の判断によります。

後縦靱帯骨化症の手術①前方除圧固定術

特殊なドリルで椎体を削り、椎体の後ろにある骨化した靭帯を除去するか、薄くして浮き上がらせて脊髄への圧迫を除去します。

そして骨盤やスネの骨から骨の一部を削って移植骨にして、削った椎体部分に移植します。

後縦靱帯骨化症の手術②後方除圧術

後方からの手術には「椎弓切除術」「脊柱管拡大術」とがあります。

椎弓切除術では椎体の後方にある椎弓部分を切除する方法で、脊柱管拡大術は椎弓は残したまま脊柱管を広げる方法です。

後縦靱帯骨化症の予後

手術後の予後ですが、5年を境に徐々に神経症状が出現するとの報告もあります。

手術によって進行は防げるものの、症状の回復が50%程度との報告もあり、痺れが残存したり、筋力が戻りにくかったりする傾向があります。

後縦靱帯骨化症は対処療法、手術療法の効果としても症状は個人差があり、予後や後遺症の明確な提示は困難です。

医師からも、確実に症状がなくなる、日常生活に全く支障がなくなると断言される事は少ないのが現状です。

障害を受けた脊髄の回復次第といったところになります。

後縦靱帯骨化症のリハビリ

後縦靱帯骨化症に対してのリハビリは、筋力低下した筋肉の筋力訓練や動きにくくなった部位の可動域訓練が中心となります。

背骨の可動域訓練はあまり積極的には行わず、手足の可動域訓練が中心です。

障害されている部位や程度によって内容も変わってくるため、一概にこれをやれば良いというのはないため、担当の理学療法士や作業療法士の指示の元に行なっていきます。

肩甲骨や股関節が硬くなると背骨への負担を強めるため、ストレッチなどで柔軟性を高めておくことが大切です。

肩甲骨と股関節のストレッチを紹介します。

肩甲骨のストレッチ

肩甲骨のストレッチ
両手を挙げた状態で肘を後方に引くと同時に肩甲骨を内側に寄せます。

肩甲骨のストレッチ
その状態を5~10秒程度保持するのを10回繰り返します。

肩甲骨のストレッチ
肩をすくめるように肩甲骨を挙上させ、5秒程度保持してストンと下に降ろします。

股関節のストレッチ

股関節のストレッチ
膝立ち位になって足を後ろに引きます。

腰が反らないようにしてお腹を前に突き出し、股関節の前面をストレッチします。30秒ほどゆっくりとストレッチします。

股関節のストレッチ
膝を抱えお腹に近づけます。30秒ほどゆっくりとストレッチします。

まとめ

●後縦靭帯骨化症は背骨の靭帯が骨化する病態で、原因がはっきりと解明されておらず、指定難病である。

●主な症状は手足の痺れ、脱力感、歩行障害、排尿障害など。

●治療は症状に対しての対処療法と、脊髄への圧迫を軽減させる手術療法がある。

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