橈骨神経麻痺の原因・症状・治療・装具・リハビリ全知識
朝起きたら手首がぶらーんと下がっていて動かない!という症状。
とても焦りますよね。
何が起こったかわからずとても怖い症状ですが、それは橈骨神経麻痺かもしれません。
今回は橈骨神経麻痺の治し方・リハビリの方法について解説していきます。
橈骨神経とは
橈骨神経は「とうこつしんけい」と読みます。
橈骨神経は腕の付け根あたりから肘を通り、手首、指先まで走行している神経です。
手首や指を動かす筋肉、手のひら、手の甲側の感覚を支配しています。
橈骨神経が支配する筋肉
●上腕三頭筋
●上腕筋
●回外筋
●長橈側手根伸筋
●短橈側手根伸筋
●尺側手根伸筋
●総指伸筋
●小指伸筋
●長母指外転筋
●長母指伸筋
●短母指伸筋
●示指伸筋
とても多くの筋肉を支配していてわかりにくいかと思いますが
橈骨神経は主に手首を手の甲側に反らす動き(背屈)や指を伸ばす動き(伸展)に働く筋肉に関わっています。
橈骨神経麻痺の症状
橈骨神経麻痺が起こると次の症状がみられます。
●手の甲の親指側に痺れや痛み
●手首がだらーんと手のひら側に垂れ下がったまま動かない
●手の指が伸ばせない
手首が垂れ下がったまま上に上げられない状態を下垂手、指が下がったまま伸ばせない状態を下垂指といいます。
橈骨神経麻痺の原因
橈骨神経麻痺は、神経の圧迫や外傷などが原因で生じます。
悪い姿勢での長時間の圧迫
腕まくらをしたまま眠ってしまったり、ベンチの背もたれに脇の下を挟むような姿勢を続けていたり、机の上で自分の腕を枕にして圧迫したまま眠ってしまったりして起こる事が多いです。
また飲酒後、腕を変な体勢にしたまま眠ってしまう事で発症する人もたまに見かけます。
腕まくらをして橈骨神経麻痺になる事を、新婚者に多い事からハネムーン症候群とも呼ばれています。
※正座を長い時間していると足がしびれてきますよね?
あれも正座する事によって、足を通っている神経を体重で圧迫することによって痺れが生じているのです。
外傷での橈骨神経麻痺
転倒や転落で上腕骨骨折や肘の外傷を受けると、橈骨神経麻痺を合併する事があります。
- 骨折をしたときに神経を傷つけてしまう場合
- 骨折後の手術で骨を固定するプレートや髄内釘などで神経を傷つけてしまう場合
- 骨折後のギプス固定で圧迫をしてしまう場合
で起きるケースが多いです。
橈骨神経麻痺を合併しやすいMonteggia(モンテジア)骨折
転倒や転倒の際に手を付いた際に起こる骨折です。
出典:http://kotoseikeigeka.life.coocan.jp/16monteggia.html
前腕部には橈骨と尺骨という2本の骨がありますが、尺骨の骨折と橈骨が脱臼してしまうケガをMonteggia(モンテジア)骨折と呼びます。
特に小児に多く見られます。
治療は尺骨部の骨折の整復、橈骨の脱臼の整復をしたのちにギプス固定をします。
橈骨が脱臼したときに橈骨神経を圧迫してしまう事で橈骨神経麻痺を引き起こすことがあります。
橈骨神経麻痺は場所によって症状が違う
画像の様に橈骨神経は走行していますが、圧迫を受ける部位の違いによって起る症状も違います。
回外筋の下での圧迫部位はFrohse(フローゼ)アーケードといいます。
フローゼアーケードでの圧迫の症状
- 障害が出る筋肉は尺側手根伸筋です
- 手の甲側に反る動作(手首の背屈)は可能です
- 指を伸ばす(伸展)が不可能です
- 感覚障害は生じません
上腕部や脇の下での圧迫の症状
- 障害が出る筋肉は腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・尺側手根伸筋です。
- 手の甲側に反る動作(手首の背屈)不可能です。
- 指を伸ばす(伸展)が不可能です。
- 親指、人差し指、中指の手の甲側、手の甲の親指側に感覚障害が出ます。
橈骨神経麻痺の診断
橈骨神経麻痺になったら整形外科を受診します。
下垂手、下垂指の有無・程度、知覚感覚障害の範囲などを診断します。
外傷や骨折部のによる神経損傷の疑いがある場合はレントゲン検査などでその有無を確認します。
必要に応じて電気生理学検査(針筋電図検査)で神経障害の有無・程度を確認します。
橈骨神経麻痺の治療法
橈骨神経麻痺の治療は大きく分けて保存療法と手術療法の二つに分けられます。
保存療法
手術など外科的な処置は行わずに治療する方法です。
橈骨神経麻痺の多くは保存療法で経過を診ていく事で回復します。
患部を安静にして、ビタミンB12剤・メチコバールなどを服用したりして神経の回復を待ちます。
不良姿勢による圧迫で生じた場合は、ほとんどが保存療法で経過を見ていく事で回復します。
しかしその際、手の甲側に反らす(手首を背屈)させたり、指を伸ばす事が出来ないため関節が固まってしまう事を防ぐために装具を着用します。
手術療法
保存療法で回復しない場合や外傷や骨折など神経への障害がある場合は手術を行う事もあります。
神経剥離術(神経圧迫している原因である、周囲の組織から神経を切離する手術)や腱移行術を行います。
橈骨神経麻痺で使用される装具の種類
手首の関節の拘縮の予防や安静を目的に使用される装具でコックアップスプリントと呼ばれます。
静的装具と動的装具の2種類があります。
- 静的装具は完全に固定されます。
- 動動的装具は、ある程度、動かす事ができます。
患者さんの状態に合わせて選択されます。
静的装具
プラスチックで製作されたコックアップスプリント
出典:http://po.kmw.ac.jp/archives/480
●手首を手の甲側に反らす方向(背屈位)に固定するのみで指は固定されません。
●固定性は高いです。
●関節の可動の調節はできません。
パネル型のコックアップスプリント
出典:有限会社赤田義肢製作所
●手首を手の甲側に反らす(背屈位)に固定するのみで指は固定されません。
●プラスチック製と比べて通気性がよいです。
●板バネを用いることである程度の手首の可動性があります。
、
動的装具
オッペンハイマー型のコックアップスプリント
出典:http://www.po-kyowa.com/fitting01_4.html
●手首を手の甲側に反らす方向(背屈位)に固定します。
●前腕部を支える部分と繋がるピアノ線が手首の部分でループを作って固定します。
●軽量性にすぐれています。
●かさばりにくい利点があります。
トーマス型のコックアップスプリント
出典:http://www.po-kyowa.com/fitting01_4.html
●前腕部から伸びるピアノ線やゴムの弾力を利用します。
●手首を手の甲側に反らす方向(背屈位)に固定します。
●指を伸ばす方向(伸展位)に固定します。
橈骨神経麻痺のリハビリ
それでは橈骨神経麻痺のリハビリを説明いたします。
物理療法
橈骨神経麻痺では神経から筋肉への伝達が途絶えてしまっているため、筋肉の萎縮や筋力低下が懸念されます。
低周波などによる電気刺激療法を行う事で、神経に電気刺激を与え筋肉の収縮、弛緩を促して機能低下を予防していきます。
手首・指の可動域の訓練
橈骨神経麻痺で下垂手、下垂指となると手首や指を曲げる筋肉が硬くなり柔軟性が乏しくなります。
これらの筋肉の柔軟性を回復させるためにストレッチを行っていきます。
①前腕屈筋群のストレッチ
肘を伸ばした状態で、手首を手の甲側に反らし、指を伸ばした状態でストレッチしていきます。
肘から指先にかけて突っ張って伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチしていきます。
②前腕部のマッサージ
肘の内側から手首にかけての筋肉をテニスボールで圧迫するようにマッサージしていきます。
前腕部の筋力トレーニング
ペットボトルやダンベルなどを握り、手首を手の甲側に反らすように持ち上げていきます。
橈骨神経麻痺によって機能が低下してしまった筋肉のトレーニングとなります。
まとめ
●橈骨神経麻痺を呈すると手首や指が伸びなくなる下垂手、下垂指の症状を呈する
●原因としては不良姿勢での神経の圧迫、骨折や外傷による神経障害が挙げられる
●多くは保存療法で回復し予後は良好であるが、手術が必要となる場合もあるため早期に医師の診断を受ける事が大切である
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