シーバー病(踵骨骨端症)の治療・テーピング・サポーター・ストレッチ全知識
小中学生のスポーツをやっている子に多い踵に生じる痛み。それはシーバー病と呼ばれる病態かもしれません。
今回はシーバー病の治し方・リハビリの方法について解説していきます。
シーバー病とは?
シーバー病とは日本語で「踵骨骨端症」(しょうこつこったんしょう)と呼びます。
また『セーバー病』とも言われます。
踵骨という踵の骨に痛みが生じる障害で、10歳代前後の小中学生に多い、いわゆる成長痛と呼ばれるものの一つです。
その名前の由来はアメリカの外科医であるジェームズウォーレン・シーバーが発見したためといわれています。
骨端症とは
成長期の子供の骨には骨端線と呼ばれる、軟骨で出来た組織の集合体があります。
骨端線は身長が伸びることに重要な役割をはたしています。
●骨端線にて、骨芽細胞という細胞によって新しい骨が作られる事によって徐々に軟骨が骨になり、子どもは成長をしていきます。
●骨端線の部分は周りの骨の部分と比べて柔らかいです。
●やわらかいので筋肉よって繰り返し引っ張られるストレスがかかる事によって痛みを生じやすくなっています。
これこそが骨端症なのです。
ちなみに膝に起こる骨端症をオスグッド病といいます。
踵骨におきる骨端症『シーバー病』はなぜ発症するのか
出典:恩賜財団済生会
●踵骨にはアキレス腱が付着しています。
●アキレス腱は下腿三頭筋というふくらはぎにある筋肉が集まって腱となっている部分です。
●走ったり、ジャンプをすると下腿三頭筋が伸び縮みします。
●するとアキレス腱を伝って、踵骨を引っ張るストレスが生じます。
●また足の裏にある足底筋膜も踵に付着しています。
●運動時、ダッシュやジャンプの着地などで足底筋膜は引っ張られるストレスが生じ、それによって踵骨に負担がかかります。
●アキレス腱や足底筋膜を伝って生じる引っ張るストレスによって、踵骨が損傷を受ける事で『シーバー病』になります。
踵骨とは
画像のように足の踵にある骨です。この骨にふくらはぎからつながる腓腹筋・ヒラメ筋や足の裏からつながる足底筋膜が付着しています。
※踵にある線のように影になって写っているのが骨端線です。骨端線は大人にはありません。
腓腹筋とは
ふくらはぎの表面にある筋肉で、膝の後ろの太ももの骨(大腿骨)の下部から、踵骨にくっついている筋肉です。
●つま先を下に向けるように足首を動かす『底屈』という動き
●膝を曲げる働き
ヒラメ筋とは
腓腹筋よりも深い層にある筋肉で、膝の後ろの脛骨、腓骨から踵にくっついている筋肉です。
●つま先を下に向けるように足首を動かす『底屈』という動き
この腓腹筋、ヒラメ筋をまとめて『下腿三頭筋』と呼びます。
下腿三頭筋は歩行やスポーツにおいて重要な筋肉です。
●つま先立ちをする
●歩いたり、走ったりする時の推進力
●ジャンプやステップ動作の時の地面を蹴る力
足底筋膜とは
その名前の通り、足の裏にある筋肉を包んでいる膜を足底筋膜と呼びます。
踵骨から足の指のそれぞれの基部に付着しています。
足底筋膜は歩いたり、走ったりするときに体重がかかるとゴムのように伸張します。足が地面から受ける衝撃を和らげるクッションのような働きがあります。
関連:足底筋膜炎の治し方
また足の指が上に反る事で足底筋膜は引っ張られて、巻きあがるような動きになります。
この巻きあがる力が、バネのような働きをして歩いたり走ったりする時の推進力となります。
●撃を吸収するクッションの役割
●歩いたり、走ったりする時の推進力
●歩いたり走ったりする時の推進力を生みだすバネの役割
シーバー病の症状
次のような症状がみられます。
- ジャンプやダッシュをすると踵が痛い
- 踵に腫れや熱を持つ事もある
- 踵を押すと痛い
- 踵の痛みのためつま先歩きをする
シーバー病になりやすいスポーツ
- サッカー
- バレーボール
- バスケットボール
- テニス
- 陸上
ダッシュやターン、ジャンプなどの動作が多いスポーツで多くみられます。
シーバー病の原因
シーバー病の原因は主に次のとおりです。
●使いすぎ(オーバーユース)
シーバー病は一回でケガをする事ははほとんどなく、度重なるストレスによって発症します。
急に練習量が増えた。運動を急に始めた。など過度の負担によるオーバーユースが大きな原因となります。
●靴のクッション性が悪い
踵に衝撃が強くかかる事でも症状を引き起こします。クッション性の低い靴やスパイクシューズなどでは地面からの衝撃の負担が大きくかかるため、痛みを引き起こす原因ともなります。
●硬い地面での運動
地面が硬いグランドでの運動は踵への負担が大きくなりシーバー病になる可能性があります。
シーバー病の治療法
主に保存療法が行われます。
シーバー病の主な原因はスポーツのやりすぎによるオーバユースなので、まずは局所を安静にして休める事が重要です。
痛みが強い場合は松葉杖を使用して、患部に荷重をかけない事もあります。
シーバー病は比較的予後が良好なので、きちんと治療する事で後遺症も少なく完治します。
また患部に熱を持ったり、腫れがある場合はRICE処置と呼ばれる応急処置をとる事が大切です。
●RICE処置とは
Rest(安静): 患部を極力動かさない。
Ice(冷却): 患部を冷やして血管を収縮させて腫れや熱感を最小限に留める
Compression(圧迫): 患部を適度に圧迫して腫れ、炎症を抑える
Elevation(挙上): 心臓よりも高い位置に患部を置き腫れ、炎症を抑える
シーバー病予防のためのストレッチ
シーバー病は筋肉によって踵が引っ張られるストレスが重なる事で発症するといわれています。
そのため、シーバー病の予防のためにはふくらはぎと足の裏の筋肉の柔軟性を改善する事が重要です。
①ふくらはぎのストレッチ
伸ばしたい方を後ろに引いて立ちます。
踵が床から離れないようにして前に重心をかけ伸ばしていきます。
膝を伸ばしたままだと腓腹筋が、
膝を曲げるとヒラメ筋がより伸ばされます。
つま先がなるべく正面を向くようにする事がポイントです
ふくらはぎが伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチします。
②足底筋膜のストレッチ
足の裏の硬い部分を圧迫して、指を反らす事で効果的にストレッチする事ができます
③足底筋膜リリース
テニスボールや竹踏みなど踏み、足の裏を圧迫してマッサージするようにほぐします。
④太ももの裏(ハムストリングス)ストレッチ
太ももの裏のハムストリングスはふくらはぎの下腿三頭筋と足底筋膜と連結をしています。ハムストリングスの柔軟性を改善する事も重要です。
座った状態で伸ばす方の脚を前に出します。膝は伸ばしたまま体が丸まらないように前傾させていきます。太ももの裏が伸びていく事を感じながら30秒以上ストレッチします。
骨盤が倒れないようにして伸ばすのがポイントです。
シーバー病のテーピング
シーバー病の症状を軽減するテーピングを紹介します。
テーピング方法はふくらはぎの筋肉の収縮をサポートして踵への伸張ストレスを軽減させる方法と、踵の動きを固定するテーピング方法の2種類を紹介します。
ふくらはぎの筋肉のサポート
伸縮性のキネシオロジーテープを使用します。
①
うつぶせで爪先は軽く下に向けます。踵から膝の下まで真っ直ぐテープを貼ります。皺が寄らない程度に軽く引っ張って貼ります。
②
踵の外側からふくらはぎの内側に向かって斜めにテープを貼ります。この時も皺が寄らない程度に軽く引っ張ります。
③
踵の内側からふくらはぎの外側に向かって斜めにテープを貼ります。皺が寄らない程度に軽く引っ張って貼ります。
※写真はタイツの上からですが実際には直接肌に貼ります。
踵の動きを固定するテーピング(ヒールロック)
テーピングは非伸縮性のホワイトテープを使用します。
①外側ヒールロック
つま先を上に向け、足首を90°にします。
すねの前面から斜め下に、内くるぶしの上を通って、アキレス腱を斜めに通り踵の外側に巻き、足の甲に向かって巻きます。
②内側ヒールロック
すねの前面から斜め下に、外くるぶしの上を通って、アキレス腱を斜めに通り踵の内側に巻き、足の甲に向かって巻きます。
ふくらはぎのサポートテープを貼った後に、踵の固定テープを巻くと効果的です。
※写真はタイツの上からですが実際には直接肌に貼ります。
シーバー病のサポーター
シーバー病にはサポーターも有効です。
踵にクッション性のあるパッド入り、踵を高くしてアキレス腱の伸張力を軽減させるものが有効です。
まとめ
●シーバー病は10代の子どもが踵骨が損傷を受ける事でなりやすい。
●使いすぎ(オーバーユース)・靴が悪い・固い地面で運動するなどが原因である。
●治療は『保存療法』が多く、予後は良い。テーピングとサポーターを使うこと有効である。
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