脊柱管狭窄症とは?症状・原因・治療・手術・リハビリ全知識
最近は健康のためウォーキングを始める方が増えています。
中高年者でみられる、歩いているうちに脚が重たくなる、痺れてくる、休むと治ってまた歩けるといった症状。それは脊柱管狭窄症かもしれません。
今回は脊柱管狭窄症の治し方と運動療法とリハビリについて解説していきます。
脊柱管狭窄症とは
まず脊柱とはいったいなんでしょう。
みなさんは背骨はよく知っていると思います。
背骨は体を支えてくれるとても重要な骨です。
その背骨の全体を脊柱といい、その1つ1つを脊椎(せきつい)といいます。
脊椎は
- 首の部分を頚椎(7個)
- 胸の部分を胸椎(12個)
- 腰の部分を腰椎(5個)
- 腰椎の下に仙骨、尾骨と続きます。
図のようにS字のカーブを描くようになっています。
正常では頚椎は前へのカーブ(前弯)、胸椎は後ろへのカーブ(後弯)、腰椎は前へのカーブ(前弯)しています。
出典:https://mainichi.jp/premier/health/articles/20150610/med/00m/010/006000c
脊柱管とは脊柱のうしろにあるトンネルのようになっている神経の通り道をいいます。
この脊柱管が何らかの原因で狭くなってしまう障害が脊柱管狭窄症です。
腰の部分で狭くなる(狭窄する)事が多く、腰部脊柱管狭窄症といいます。
脊柱管狭窄症の症状
脊柱管狭窄症の症状で多いのは
歩いていてしばらくすると脚に痺れや痛みが出てきて歩きにくくなってしまいます。
その症状は休むと良くなり、また歩けたり・腰を前にかがんで歩くと良くなるといった特徴があります。
これを間欠性跛行といいます。
主な症状
- 間欠性跛行
- お尻から足にかけての痛み
- 脚のしびれや異常な感覚
- 腰の痛み
- 頻尿、残尿、失禁などの排尿排便障害
- 脚の脱力感
また特徴として、座っている時はあまり痛みや痺れの症状は出ません。
立った状態や歩いていると症状がでます。
なぜかというと、座ったり、腰を前に屈んでいる状態よりも、立ったときや腰が後ろに反ったときの方が脊柱管が圧迫されるためです。
脊柱管狭窄症の種類
脊柱管狭窄症には圧迫を受ける神経の部位によって3つのパターンに分類されます。
①神経根型
●脊柱管には脊髄という神経が通っています。
●脊柱管の外側が狭くなってしまうことがあります
●すると脊髄から左右に枝分かれした神経の根本の部分で圧迫されてしまいます。神経根型です。
●また神経根は左右に分かれています。
●ですので左右どちらか一方が圧迫を受けて症状が出る事が多いです。
神経根型の症状の特徴
- どちらか片方に症状が出る
- 腰、お尻、太もも、ふくらはぎ、足の裏に症状が出る
- 腰を反る動きで症状が悪化する
②馬尾型
●脊柱管を通る脊髄の先端部は細い神経が束になっています。
●この部分を馬尾神経といいます。
●脊柱管の中心部が狭くなり、馬尾神経が圧迫されるのが馬尾型です。
●両方の脚に症状が出るのが特徴です。
馬尾型の症状
- 両方の脚のしびれ
- 両方の脚の脱力感
- 頻尿
- 残尿感
- 便秘
混合型
神経根型と馬尾型の症状の両方が混ざりあって出ます。
歩いていてしばらくすると脚に痺れや痛みが出てきて休むと治る『間欠性跛行』がでます。
症状は片方であったり、両方であったりまちまちです。
脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症の原因として最も多いのは加齢です。
年をとることで脊柱を構成する組織が変化してしまい脊柱管狭窄症になってしまいます。
①靭帯
●脊柱の後方には黄色靭帯という脊柱を支える靭帯が存在しています。
●この靭帯が加齢やホルモンバランスの変化によりモロくなったり、分厚くなったりします。
②椎間関節
●また脊椎と脊椎を繋いでいる関節を椎間関節といいます。
●この椎間関節が加齢や繰り返す負担により変形したり、肥厚したりします。
③椎間板
●脊椎と脊椎の間には椎間板というクッションの役割をする組織が存在します。
●この椎間板も加齢により、圧縮されて前後に膨隆してくることがあります。
これらの組織の変化により、脊柱管が狭くなることが症状の原因となります。
腰椎すべり症から脊柱管狭窄症になる事もある!
腰椎すべり症の人が脊柱管狭窄症になってしまうこともあります。
●腰椎すべり症とは腰の脊椎の連結が崩れてしまい、前方にずれてすべってしまっている状態です。
●この脊椎のズレによって脊柱管を圧迫してしまいます。
●すると脊柱管狭窄症を発症してしまうのです。
すべり症を患っていると脊柱管狭窄症になるリスクが2倍になるというデータもあります。
さらにすべり症はジュニア期の若い年代に多い、腰椎分離症から発生する事が多いです。
将来的に脊柱管狭窄症を発症させないためにも、腰椎分離症はしっかりと治療する事が重要です。
関連:スポーツ選手に多い腰痛!腰椎分離症の治療法と予防ストレッチ・筋トレの全知識
脊柱管狭窄症の治療法
脊柱管狭窄症の治療方針は大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。
保存療法
保存療法は以下の方法が用いられます。
薬物療法
非ステロイド性の消炎鎮痛剤や、筋肉を柔らかくする薬、神経症状を和らげる薬などを服用して症状を軽減させます。
注射療法
ブロック注射やトリガーポイント注射などの注射をする事で症状を和らげます。
※神経ブロック注射で有名な病院は『NTT東日本病院 ペインクリニック科』です。
物理療法
整形外科でホットパックなどの温熱療法、低周波などの電気治療を行います。
手術療法
手術が必要になるのは次のとおりです。
-
- 直腸膀胱障害
※排尿や排便に障害があり、頻尿や残尿・失禁・便秘などの症状があり生活に支障をきたしている場合
- 保存療法を続けても治らない場合
- 足の筋力低下や麻痺がある場合
- 間欠性跛行により100mを歩く事も出来ない場合
手術方法
手術は大きく分けてて2つあります。
- 圧迫をしている部分を取り除く除圧術
- 脊椎の不安性をなくし安定させる固定術
開窓術
圧迫している脊椎の骨の部分を部分的に削りとる手術です。
神経の圧迫が小さい場合に行われます。
椎弓切除術
棘突起という、脊椎の後方にはある骨の突起を切除する手術です。
馬尾型で圧迫されている部分が大きい場合に行われます。
広範囲に骨を削り取ってしまうため、脊柱の不安性が生じるリスクもあります。
椎体除圧固定術
脊柱管を圧迫している部分を取り除いた後に、不安定な椎体間をボルトなどで固定する方法です。
手術の費用は?
一般的には除圧術では30~40万円
除圧固定術では40~60万円
内視鏡を使った場合では16万円程度ほどかかります。
高額医療費制度の申請の方法
脊柱管狭窄症の手術をした場合は治療費が高額になりますので高額医療費制度の申請をしましょう。
お金が戻ってきます。
①申請窓口
サラリーマンの方:加入している健保
自営業の方 : 住んでいる市役所の国民健康保険担当窓口に問い合わせ
②必要書類
●領収書
●保険証
●印鑑
●振込口座のわかるもの
●高額療養費・支給申請書→申請書はこちらを印刷して下さい。
③自己負担金額の計算
収入によって手術の自己負担限度額が違います。
※注意点 入院する時に個室などを使った場合の差額ベッド代や保険外の負担分には適用されません。
④申請の方法
1.病院で3割負担額の医療費をいったん支払って下さい
2.健康保険組合に高額療養費の支給申請をして下さい。
3.自己負担限度額を超えた分の医療費が払い戻されます。
手術後の経過は
脊柱管狭窄症は神経が長期間に圧迫されている状態です。
手術により圧迫されている原因を取り除くことは可能ですが、神経が長期的に圧迫されていたことから完全に回復しきらない事もあります。
手術によって痺れや痛みが完全に取り切れるケースもあります。しかし発症してから長期経過している場合や重度な場合は完全に改善しない事もあります。
医師に相談して、術後の経過の予測なども考慮したうえで手術をするかしないか決める事が重要です。
脊柱管狭窄症のリハビリ・運動療法
脊柱管狭窄症の場合は、脊柱管を狭くしている原因を改善していく事です。
特に腰が後ろに反るような姿勢や動作によって脊柱管の圧迫が強まります。
背中の筋肉や股関節の前の筋肉の柔軟性が低下したり、腹部やお尻の筋力が低下する事で、腰が反りやすくなってしまうため、それらを改善する運動療法を紹介していきます。
※脊柱管狭窄症の原因となっている背骨の靭帯が分厚くなったり、骨の変形はリハビリで治すことはできません。リハビリや運動療法の目的は脊柱管狭窄症を治すというよりも、狭窄を強めてしまう動作や姿勢を改善するといった目的となります。
①背骨のストレッチ
図のように正座の姿勢から前に屈んで丸まり、背中の筋肉を伸ばします。
仰向けで両膝を抱えて丸まり、背中の筋肉を伸ばします。
②股関節前面のストレッチ
立ち膝となり脚を後方に引きます。股関節の前面が伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチします。
※この際に、腰が反りすぎないようにする事がポイントです。お腹を少し凹ませて力を入れると良いです。
③体幹トレーニング
腹式呼吸
仰向けの状態で、深呼吸をして息を吐くと同時にお腹を凹ませていきます。
この時お尻の先だけを軽く持ち上げるように、骨盤を後ろに傾けます。
プランク
肘をつき、つま先と手で体を支えます。体と足が一直線になるように姿勢を保ちます。
④大殿筋トレーニング
仰向けで膝を曲げた状態で、お尻を上に持ち上げます。
この時も腰が反らないように気を付けます。
まとめ
●脊柱管狭窄症は背骨の神経の通り道を圧迫してしまう病態で、脚の痺れや痛み、間欠性跛行、直腸膀胱障害が主な症状である。
●靭帯の肥厚や骨の変形は治せないため、重度の場合や経過を追っても改善が見られない場合は手術を選択する事もある。
●リハビリ、運動療法としては腰を反りを軽減させるような運動が有効である。
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