脊椎圧迫骨折の原因と症状・治療・リハビリ・予防の全知識
高齢者に多い、腰や背中の痛みの原因の一つに脊椎圧迫骨折があります。
特に骨が弱くなる骨粗鬆症との関連が指摘されており、尻もちをついたり、重いものを持つだけで圧迫骨折を起こす事があります。
脊椎圧迫骨折は「いつのまにか骨折」とも呼ばれ、最近テレビでもよく聞くようになりました。
今回は脊椎圧迫骨折について解説していきます。
脊椎圧迫骨折とは
転倒や重いものを持った時などに、負荷が加わり、背骨が潰れるように骨折することを脊椎圧迫骨折といいます。
脊椎圧迫骨折のほとんどは、高齢者に発症し、骨が弱くなる骨粗鬆症との関連が深いです。
若者でも交通事故や高所からの転落などで、強い外力が加わる事よって発症する事もあります。
脊椎圧迫骨折の原因
脊椎圧迫骨折の原因のほとんどは転倒、尻もちをついたなどの外力が背骨に加わる事です。
骨が脆くなってしまう骨粗鬆症がある高齢者では、くしゃみをしたり、物を持ち上げたりしただけでも発症する事があります。
若者の場合は交通事故やスポーツなどによって、強い外力が加わる事で発症します。
また、がんの骨転移によって脊椎が脆くなる事によって発症する事もあります。
脊椎圧迫骨折の症状
脊椎圧迫骨折の症状は骨折部分を中心に強い痛みが生じる事です。
強い痛みによって以下の動作が困難になります。
- 寝返りや起き上がり
- 椅子からの立ち上がり
- 屈み動作
脊椎圧迫骨折があっても痛みがなく気がつかない事もあります。
脊椎圧迫骨折によって、潰れた椎体が変形する事によって神経を圧迫する事があり、その場合は足に痺れや神経痛、感覚が鈍くなるといった症状がみられる事もあります。
脊椎圧迫骨折の好発部位
脊椎圧迫骨折は特に胸椎と腰椎の移行部に好発しやすく、第11胸椎、第12胸椎、第1腰椎に多くみられます。
その理由として、胸椎は後ろへのカーブ、腰椎が前へのカーブがあり、そのカーブがちょうど交差する箇所のために、力が加わりやすいためといわれています。
脊椎圧迫骨折の診断
脊椎圧迫骨折は主に整形外科にて診断を受けます。
レントゲン検査にて椎体の圧迫骨折の有無を確認出来ます。
潰れた椎体によって、後方にある神経が圧迫されたり、損傷を受けたりしている可能性がある場合はMRI検査を行います。
また圧迫骨折が骨粗鬆症によるものの疑いがある場合は、骨密度検査をして骨の量を測定します。
転移性のがんによる疑いがある場合は骨シンチグラフィーなどの検査を追加します。
脊椎圧迫骨折の治療方法
脊椎圧迫骨折の治療方法は保存療法と手術療法とに分けられます。
保存療法
脊椎圧迫骨折による神経への損傷がない場合には、まず保存療法が選択されます。
保存療法の主となるのは「安静」です。
骨折部分に負担がかからないように安静にする事によって骨癒合を促します。
多くの人が、コルセットを着用します。
コルセットとは元々は女性の体型を補正するものとして古代から存在していたものですが、腰に巻くベルトとして医療業界ではその名称が広く使われています。
市販のコルセットもありますが、出来れば医療用のコルセットで、自分の体型に合わせて作成したものを着用しましょう。
コルセットの着用にて安静にする事により、背骨にかかる負担を軽減させ、骨の変形を防ぐ事が出来ます。
骨折の程度や回復力などで個人差はありますが、おおよそ2〜3ヶ月程度で骨癒合が得られるといわれています。
また痛みが強い場合は痛み止めの薬が処方されます。
手術療法
脊椎圧迫骨折後の保存療法をいっても経過が良くない場合、痛みが強い場合は手術療法を行う事もあります
。代表的なものに近年行われている手法にバルーン椎体形成術があります。
バルーン椎体形成術とは
バルーン椎体形成術は2011年より日本でも施行されるようになった新しい手術方法です。
圧迫骨折によって潰れてしまった椎体の中に小さな針を刺して、風船のついた器具を入れます。
その風船を膨らませる事によって、潰れた骨を持ち上げて、出来るだけ骨折前の形に戻します。
その膨らんだ風船を抜くと、椎体内に空間が出来るので、その空間内に骨セメントを入れる事によって固める方法です。
全身麻酔下で行い、手術時間は全部で1時間もかからないで終わります。
脊椎圧迫骨折後は背骨が潰れたままのため、円背(背中が丸まった姿勢)が強まり、バランスが悪くなったり、身長が縮むという後遺症が生じますが、バルーン椎体形成術はそれを防ぐ事が可能です。
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脊椎圧迫骨折の再発予防のためのリハビリ
保存療法と手術療法、どちらを選択した場合でもその後のリハビリが重要となります。
脊椎圧迫骨折後は、脊椎を動かさない期間が長くなるので背骨周りの筋肉が硬くなったり、関節の動きに制限が起こったり、体幹筋力が低下したりする症状がみられます。
また体力低下、筋力低下により起き上がったり、立ったり、歩いたりする動作能力の低下がみられます。
これらに対して、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)がリハビリを行い、体の機能の回復を促していきます。
自分で行える簡単なリハビリ方法を紹介していきます。
特に背骨を支える背筋や腹筋群を鍛える事が重要です。
※自分で行うリハビリは過度な負荷や方法を間違えると、症状が悪化する場合があるので、必ず医師や、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)に相談してから行いましょう。
背筋強化①
圧迫骨折後は脊柱を守るための背筋を強化する事が大切です。
簡単な方法として、椅子に座って両手をバンザイするだけでも背筋は鍛えられます。
なるべく背中が真っ直ぐの姿勢で、両手を組んで上に挙げていきます。
ペットボトルなどを持つとより効果的です。
背筋強化②
四つ這いになり片手を前に挙上させる事で、背筋が鍛えられます。
この姿勢を10~20秒保持します。片方ずつ交互に行います。
背筋強化③
先ほどの背筋強化②よりも一段階レベルの高い運動です。
片手、片足を対角線に真っ直ぐ伸ばす事で、より背筋の活動を高める事が出来ます。
腹横筋強化
お腹のインナーマッスルである腹横筋を鍛える運動です。
①仰向けに寝て大きく息を吸いお腹を膨らませます
②息を吐きながらお腹を凹ましていきます。
③お腹を凹ませた状態を保ったまま、呼吸は普通に行います
このままお腹を凹ませた状態を30秒ほど保ちます
まとめ
●脊椎圧迫骨折は、背骨の骨である椎骨が潰れるように骨折を起こすもので高齢者に多くみられる。
●骨がモロくなる骨粗鬆症との関連が深い。
●治療は保存療法と手術療法とがあり、その後のリハビリで背骨周りの筋肉を強化する事が重要である。