胸郭出口症候群のテスト・症状・治療・ストレッチ・リハビリの全知識
野球の投手やバレーボール選手にみられる手の痺れや血行障害。
その痺れの症状、もしかすると胸郭出口症候群かもしれません。
今回は胸郭出口症候群の治し方とリハビリについて解説していきます。
胸郭出口症候群とは
投球動作のように腕を上に挙げる動きや、洗濯物を干す動き、つり革に掴む動きなどによって腕が痺れたり、痛みが生じるのが胸郭出口症候群の特徴的な症状です。
胸郭とは胸の部分にある肋骨、背骨、胸骨からなる部分を差します。
胸郭出口とはその胸郭の上の部分の鎖骨付近をいいます。
その部分で神経や血管が圧迫されて生じる症状の総称を胸郭出口症候群と呼びます。
男女比では3:1で女性に多く、20〜40代の人がなりやすいです。
またなで肩の人になりやすい傾向があります。
スポーツでは野球の投球の時、バレーボールのアタックやトスの時など、腕を上に挙げる事が多いスポーツで起こりやすいです。
胸郭出口症候群の症状
胸郭出口症候群の症状は下記です。
●腕の痺れ
●肩や腕、肩甲骨周囲の痛み
●肘の内側から小指にかけての痺れや、刺すような痛み
●手の感覚異常
●握力の低下
●指の細かい動きがしにくい
●親指や小指の付け根の筋萎縮
胸郭出口症候群の種類
胸郭出口症候群は
●神経と血管が圧迫されて起こる圧迫型
●神経と血管が引っ張られて起こる牽引型
の2種類があります。
また神経や血管が圧迫される場所によって以下の3つに分類されます。
斜角筋症候群
斜角筋とは頚椎と呼ばれる首の骨から第1肋骨と第2肋骨についている筋肉です。
主に首を前に曲げたり、横に倒したり、肋骨を上に挙げる働きがあります。
斜角筋は前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の3つに分類されており、前斜角筋と中斜角筋の間を神経と血管が通っています。
この斜角筋が硬くなったり緊張したりする事で神経と血管を圧迫し症状を引き起こすのを斜角筋症候群といいます。
肋鎖症候群
肋鎖間隙という鎖骨と第1肋骨の間の隙間を差します。
この隙間を神経と血管が通っているためここで圧迫を受けて症状が出るものを肋鎖症候群と呼びます。
この症状は鎖骨が下がってしまう事で起こりやすく、なで肩の女性に多くみられるのが特徴です。
小胸筋症候群(過外転症候群)
小胸筋とは胸の前にある筋肉で第3、第4、第5肋骨から肩甲骨の烏口突起という部分に付着している筋肉です。
腕を横に挙げる動きにをするとこの小胸筋が引っ張られて伸びます。
この小胸筋の下を神経と血管が通っているため、伸ばされた時に圧迫を受けて症状が起こるのを小胸筋症候群または過外転症候群といいます。
※外転とは腕を横から挙げる肩の動きです。
胸郭出口症候群かテストで調べる
本当に胸郭出口症候群になってしまったのか?テストする方法を教えます。
斜角筋症候群のテスト
モーレーテスト
斜角筋を圧迫して症状が出るかどうかを見るテストです。
鎖骨の真ん中よりやや内側の1横指分上の部分を指で圧迫します。
痛みや腕への放散痛が生じた場合は斜角筋症候群が疑われます。
●指まで放散痛がある場合 →3+
●肩肘前腕背部まで放散痛がある場合 →→2+
●押された部分のみの圧痛 →1
●痛みを生じないもの →0
アドソンテスト
座った姿勢で親指の付け根の脈拍をとり、ピクピクと拍動がある事を確認します。
大きく息を吸って息を止めた状態で首を後ろに反らして、患側を向くように回旋させます。
親指の付け根でとっている脈拍の強さが弱まったり、感じられなくなったら斜角筋症候群が疑われます。
肋鎖症候群
エデンテスト
座った姿勢で胸を張ってもらいます。親指の付け根の部分で脈拍を確認します。
そこから腕を少し後ろに引いて下に引っ張ると脈拍が弱まったり、消失する場合は肋鎖症候群が疑われます。
小胸筋症候群(過外転症候群)
ライトテスト
親指の付け根の部分で脈拍をとり肘を曲げて腕を上に上げた位置をとります。
脈拍が弱まったり、消失した場合、小胸筋症候群(過外転症候群)が疑われます。
ルーツテスト
ライトテストと同じ腕の肢位をとり、手をグーパーさせる運動を3分間繰り返します。痺れや痛みが生じた場合、小胸筋症候群(過外転症候群)が疑われます。
肩引き下げテスト
腕を下に引っ張るように牽引をして痛みや痺れが生じるかどうかをみます。
これで症状が出る場合は、筋肉の圧迫よりも神経が牽引されるストレスによって症状が出やすい胸郭出口症候群という判断になります。
胸郭出口症候群の治療法
もし、胸郭出口症候群だと診断されたとしたときの治療方法を教えます。
症状が軽度の場合
保存療法で経過をみます。
胸郭出口症候群を引き起こしている原因の腕や鎖骨、肩甲骨の筋肉のストレッチや筋力トレーニングをする事で症状の緩和を図ります。
※ストレッチや筋トレの方法は後述します。
痛みや炎症を抑える抗炎症薬や鎮痛剤などを服用したり、血流をよくする血流改善剤、ビタミンB1などを服用することもあります。
また神経ブロック注射をして、神経組織への栄養、血流供給を促す事もあります。
症状が重度の場合
胸郭出口症候群の症状が重度の場合は手術を行う事もあります。
神経や血管を圧迫している筋肉を切開したり、第一肋骨を切除したりする手術です。
胸郭出口症候群の予防法
それでは胸郭出口症候群にならないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?
姿勢に注意を
胸郭出口症候群は猫背で肩甲骨が前に倒れている姿勢だと起こりやすくなります。
デスクワークやスマホの見過ぎで頭や首が前に出て背中が丸くなっている姿勢がまさにその姿勢です。
姿勢チェック
重力に対して最も負担のかからない姿勢が骨盤の横にある骨から真上に一直線に線を引いた直上に耳の穴がくる姿勢です。
この線から前に逸脱するほど、首や肩甲骨、肋骨についている筋肉に負担がかかります。
肩甲骨のチェック
肩甲骨が上がっているのを「いかり肩」、下がっているのを「なで肩」といいます。
いかり肩の場合は圧迫型の胸郭出口症候群に、なで肩の場合は牽引型の胸郭出口症候群になりやすいです。
●仰向けに寝ます
●床と肩の隙間が指3本分以上離れていた場合は肩甲骨が前に倒れている証拠です。
●この場合は小胸筋の硬い可能性が高いです
●すると胸郭出口症候群の原因になり得ます。
またデスクワークなどで長い時間、猫背の姿勢となっていると小胸筋が硬くなる事があるため要注意です。
重たいショルダーバックに注意
いつも片側に重たいショルダーバックをかけている人も要注意です。
重たさによって肩甲骨が下にさがってしまい、首や肩甲骨をつないでいる筋肉を常に伸ばしている状態となります。
『なで肩』の人は胸郭出口症候群になりやすいとお伝えしましたが、荷物を下げている事で常になで肩の状態を作ってしまっている事になります。
よく野球部の高校生なんかが電車の中で重たいスポーツバックを肩にかけて通学しているのを見かけますが、これはあまり望ましくありません。
特にピッチャーでは肩甲骨の位置が非常に重要となってくるので、胸郭出口症候群だけでなく野球肘や野球肩の原因にもなりかねません。
胸郭出口症候群のリハビリ・予防はストレッチで
自宅でも出来るストレッチと筋トレを教えますので、実践することをおススメします。
斜角筋のストレッチ
伸ばす側の鎖骨の上を抑えて下に押します。
そのまま首を反対に倒しながら後ろに反らします。首の前側が伸びているのを感じながら30秒以上ゆっくりとストレッチします。
胸部ストレッチ
写真のように壁に腕をかけます。
腕を固定したまま体を反対に捻ります。胸の前面が伸びていいる事を感じながら30秒以上ストレッチします。この時、肩甲骨を内側に寄せるようにすると効果的です。
鎖骨、胸部のマッサージ
テニスボールで鎖骨の下から肩にかけて圧迫をしながらマッサージをする事で鎖骨周囲の筋肉をほぐす事ができます。
僧帽筋筋力トレーニング(なで肩の人向け)
方法①
壁に手を付けて、そこから手を離すようにして肩甲骨を内側に寄せ、さらに肩をすくめるようにして肩甲骨を上に持ち上げます。
肩甲骨を支える僧帽筋の筋力トレーニングです。
方法②
四つ這いで、鍛える方の手を頭の上に回します。
そのまま肘を上に突き上げ、肩甲骨を内側に寄せていきます。
まとめ
●胸郭出口症候群とは血管や神経が圧迫または引っ張られるストレスによって起こる
●首や胸・鎖骨周りの筋肉の硬さが原因である事が多い
●普段の姿勢やバッグの持ち方に注意が必要
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