脛骨高原骨折(プラトー骨折)の症状・治療・リハビリ・全知識
高いところからの着地や交通事故などによって受傷する脛骨(スネの骨)の上部の骨折を脛骨高原骨折といいます。
今回は脛骨高原骨折の治療とリハビリについて解説していきます。
脛骨高原骨折とは
一般にスネと呼ばれている部分には脛骨という骨があります。
この脛骨の上部で大腿骨と面している関節面部分に生じる骨折を脛骨高原骨折といいます。
主に交通事故や高所からの落下、スポーツなどによって生じ、中年層の男性と高齢の女性に多く見られます。
体重をかける事が困難になるため、歩いたり、立ち上がったりする日常生活動作に大きな支障をきたします。
別名・プラトー骨折とも言います
脛骨の上部はまるで高原のように平坦になっています。
高原の事を「プラトー」とも呼ぶ事から、脛骨高原骨折はプラトー骨折とも呼ばれています。
脛骨の上部の関節面は、外側の方が骨密度が低く、高原骨折を生じやすいといわれています。
また外側かつ、前2/3部分がより脆弱であり、高原骨折の好発部位とされています。
脛骨とは
脛骨とは膝を構成する骨で、図のような位置にあります。
大腿骨と膝蓋骨とで膝関節を構成しています。
そして下部では距骨と足関節を構成します。
脛骨高原骨折の症状
脛骨高原骨折は、関節面に生じる骨折であるため、受傷すると体重をかける事が困難となります。
そのため、立ち上がったり、歩いたりする荷重がかかる動作で強い痛みが生じます。
また、膝関節部に腫れや熱感が生じ、関節可動域が制限され、曲げ伸ばしも困難となります。
脛骨高原骨折の分類
脛骨高原骨折は骨折の転移や粉砕の程度によって6つに分類されており、これをHohlの分類と呼んでいます。
Hohlの分類は図のように
Ⅰ非転移型
Ⅱ局部的陥没型
Ⅲ,分裂陥没型
Ⅳ,全面的陥没型
Ⅴ,分裂型
Ⅵ、脛骨上端部粉砕型
に分けられます。
脛骨高原骨折の治療方法
脛骨高原骨折の治療方法は保存療法と手術療法とに大別されます。
保存療法
骨折した骨の転移が少なく、陥没が軽度の場合には保存療法が行われます。
保存療法では、ギプスにより4週間程度固定を行います。
ギプス除去後は、医師の指示の元、荷重訓練や関節可動域訓練、筋力トレーニングなどのリハビリを理学療法士ともに行っていきます。
手術療法
出典:日本骨折治療学会
骨折した骨の転移が大きい場合、陥没が5mm以上の場合は手術療法が選択されます。
主な手術としては関節切開法(Book-open法)と関節鏡視下法とに分けられます。
関節切開法(Book-open法)
関節切開法(Book-open法)とは、関節内にある骨折した骨片を、その下の海綿骨という骨の内部分と一塊にして挙上させるように整復し、その空いたスペースに人工骨を補填したり、自家骨移植したりする方法です。
固定性を得るために、その部分をプレートやスクリューで固定します。骨の癒合が得られれば、プレートやスクリューを抜去します。
※自家骨移植とは
自分の他の部位の骨を、欠損した部位に移植して骨癒合をする事。骨盤の腸骨を移植する事が多い。
関節鏡視下法
関節鏡視下法は関節鏡という関節の状態を観察する内視鏡を使って、大きく切開せずに行う手術方法です。
骨の陥没部に自家骨移植や人工骨の補填を行います。
大きく切開しないで、低侵襲ですむという事が最大のメリットです。
脛骨高原骨折の予後
脛骨高原骨折は関節内骨折といい、関節面に生じる骨折です。
そのため、ずれて骨が癒合したりすると痛みが残ったり、可動域に制限がみられやすく、関節外骨折と比べると少々厄介な骨折です。
受傷した年齢、ギプス固定期間、荷重時期などによって予後が左右されます。
年齢が高いほど受傷後の歩行や動作に支障をきたしやすいといわれ、固定期間が長引いたり、荷重訓練が遅れたりしても後遺症が残りやすいです。
骨の転移がなく、順調にリハビリが進めば予後は良好である事がほとんどです
脛骨高原骨折の合併症
脛骨高原骨折は半月板損傷を合併しやすい特徴があります。
●膝の関節の中に存在するクッションのような役割をしている組織です。
●線維軟骨という柔らかく弾力のある成分で出来ています。
●内側と外側に存在し、それぞれ内側半月板、外側半月板と呼ばれます。
●関節の適合性をよくする
大腿骨と脛骨の関節面は凹凸があったりして骨だけでは適合性があまりよくありません。その凸凹による補うような役割があります。
●関節の中の圧を均等化する
膝にかかる衝撃が一点に集中して、骨が損傷を受けないように、かかる圧を分散させる役割があります。
●衝撃のクッション作用
ジャンプ動作やダッシュ時などは体重の何倍もの負荷が膝にかかります。
その際に膝の軟骨や骨が摩耗したり損傷するのを防ぐようクッションのように緩衝したりする機能があります。
脛骨高原骨折手術後の効果判定
術後の治療成績は、以下の判定基準を用いて判断していきます。
<優>
- 5度以内の正常外反度
- 転位が5㎜以下に整復
- 関節症変化なし
<良>
- 5度を超える外反変形
- 最小限の関節症変化
- 10度を超える外反変形
<可>
- 中等度の関節症変化
- 骨折が整復されていない
<不可>
- 中等度または重度の関節症変化
- 骨折が整復されていない
- 10度を超える外反
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脛骨高原骨折のリハビリ
脛骨高原骨折を受傷した後はリハビリが必須です。
リハビリは医師の指示の元に理学療法士(PT)と行っていきます。
以下に手術後の大まかなリハビリの流れについて説明します。
手術直後〜2週のリハビリ
膝関節、足関節周囲の浮腫の管理
膝の関節可動域訓練
膝蓋骨(膝のお皿)の可動域訓練
筋力トレーニング
リハビリの例・アンクルパンピング
つま先を倒す方向(底屈)、起こす方向(背屈)に繰り返し動かす事でふくらはぎの筋肉が収縮して、血液循環を促し浮腫を軽減させます。
リハビリの例・膝蓋骨(膝のお皿)の可動域訓練
膝蓋骨を上下左右に動かします。
横にも広げたり縮めたりします。
リハビリの例・大腿四頭筋訓練(パテラセッティング)
膝の下にボールやタオルを置き、膝を伸ばすように力を入れて大腿四頭筋を収縮させます。
リハビリの例・タオルギャザー
タオルを足の指で手繰り寄せ、バランスをとるのに重要な足の指をトレーニングしていきます。
2週〜6週目のリハビリ
膝の関節可動域訓練
筋力トレーニング
部分荷重訓練
リハビリの例・ヒールスライド
踵を滑らせながら自身の力で膝を曲げていきます。
回復の程度によって曲げて良い角度が違ってくるので必ず医師、理学療法士の指導の元行います。
リハビリの例・部分荷重訓練
体重計を使って、平行棒内で手術した側に体重をかけていきます。
荷重の量は医師、理学療法士の指示の元行なっていきます。
全体重の1/3から始めて、2①/2、2/3と段階的に行なっていきます。
8週〜10週のリハビリ
この時期になると、膝を全可動域曲げる訓練や全体重をかける訓練を行なっていきます。
バランス訓練
荷重しない時期があると、バランス感覚が鈍ってきます。
特に足の裏には体重がかかる位置などを感知するセンサーが豊富にあります。
足の裏から刺激を与えてバランス感覚を養っていきます。
3ヶ月〜のリハビリ
膝の全可動域を獲得して、動作訓練などを行い、日常生活、仕事、趣味活動への復帰を目指します。
まとめ
・脛骨高原骨折は高所からの転落や交通事故で受傷しやすく、歩いたり、立ったりする事が困難となり日常生活に大きな支障をきたす。
・治療は保存療法と手術療法があり、いずれも荷重できない時期が必要となる。
・リハビリは医師の指示の元、体重をかける量や時期を慎重に進めていく必要がある。