野球肩の痛みをとる!原因と治し方・ストレッチ・サポーターを教えます。

ピッチャーをしている人には絶対に気をつけないといけない肩のケガ

今回は『野球肩』の治療と予防法について特集していきます。

野球肩の原因・治療法と予防ストレッチを教えます

野球をしている方なら「野球肩」という言葉は聞いたことがあると思います。重症化すると野球生命を絶たれてしまいます。

このページでは、そんな野球肩の治療法・リハビリの方法について教えます。

野球肩とは?

野球肩とは、ボールを投げる動作から投げ終わった後に起こる肩の痛みを主症状とする肩関節のケガの総称です。

特に野球をしている人に多いため、その名前の由来がありますが

  • ハンドボール
  • アメフト
  • バレーボール
  • 陸上の槍投げ

など肩に負担がかかるスポーツに起こりやすいケガです。

特に10〜17歳のジュニア期に起こりやすく、そのほとんどが野球のピッチャーかキャッチャーです。

先生
先生
ジュニアの選手は、筋肉も骨もまだ発達段階で、筋力も弱く、関節部分も成長軟骨とよばれる柔らかい軟骨でできているため、大人に比べてケガが起こりやすいです。

野球肩の原因

投げ過ぎで肩に負荷がかかる。というのが多いです。

一回の動作で過剰に負担をかけてしまって発症する事もあります。

野球肩の種類

ピッチング

一言で野球肩といっても痛める場所や原因によって様々な医学的な名称がつけられています。

実際の診断名はたくさんあります。

  • インピンジメント症候群
  • 滑液包炎
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 棘上筋炎
  • 腱板損傷
  • 腱板断裂
  • 関節唇損傷
  • 肩甲上神経麻痺

などがあります。

肩は非常に複雑な構造となっていて、色々な障害が合わさって症状が起こっている事も多いです。

なので正確な診断名をつけることが困難であるため総称して野球肩と呼ばれる事が多いのが現状です。

野球肩のうちの半分以上はインピンジメント症候群であるといわれます。

『インピンジメント症候群』とは?

インピンジメントとは衝突、挟み込みという言葉の意味があります。

肩の動作時に骨と骨の衝突や筋肉の挟み込みを起こす事で発症します。

症状としては投球のとき・肩を挙げた時に肩に引っ掛かり感や痛みを感じます。

野球肩の部位

痛む場所

初期では投球の時のみの症状ですが、悪化すると日常生活にも支障をきたし、安静にしている時や夜寝ている時にも痛みが生じます。

先生
先生
腕をまっすぐ前に伸ばした状態(手のひらは内側向き)で、他者によって肩甲骨が挙上しないよう肩を抑えられながら、腕を上方に持ち上げられると強い痛みが起こるのが特徴です。

『インピンジメント症候群』にも種類がある

インピンジメント症候群は障害が起こる場所によっていくつかの種類に分けられます。

特に『肩峰下インピンジメント症候群』が野球肩で一番多いケガです。

まとめ

●野球肩の約50%はインピンジメント症候群です。

●そのインピンジメント症候群の中でも肩峰下インピンジメント症候群が多いです。

野球肩で一番多い肩峰下インピンジメント症候群

肩の構造

肩峰下インピンジメント症候群とは?

●肩甲骨には肩峰と呼ばれる骨の突起部分があります。

●ちょうど肩の先端にある硬い部分が肩峰です。

●腕を挙げるとき、腕の骨である上腕骨が肩甲骨の肩峰と呼ばれる部分の下を通過します。

●その上腕骨と肩峰の間には、肩のインナーマッスルである棘上筋と呼ばれる筋肉と、関節の滑りを良くする肩峰下滑液包と呼ばれるものが存在します。

●この棘上筋と肩峰下滑液包が、腕を挙げるときに上腕骨と肩峰に挟まれる事で症状がでます。

●肩峰の下で衝突、挟み込みが起こってしまうのが肩峰下インピンジメント症候群です。

インピンジメント

野球肩はどんな時に発症するか?

ピッチングを行う時に痛みが走ります。

ではピッチングの動きを4つに分解していきます。

投球フォームとは

①ワインドアップ・・・振りかぶる

②コッキング期・・・手が離れる~足を下ろす~腕を後ろに引いた状態まで

③アクセレレーション期・・・ボールを後ろに引いてからボールが手から離すまで

④フォロースルー・・・ボールが手から離れた後に腕を振り切る

以上のようにワインドアップ~最後のフォロースルーまで4つの動作で投球します。

ケガをするのは『コッキング期』

コッキング期

この瞬間、肩を壊す!

ピッチングの4つの投球動作のうち『コッキング期』にこのインピンジメントは起こりやすいです。

先生
先生
野球以外でも、バドミントンのスマッシュやテニスのサーブ、バレーボールのスパイクなど腕を上げる動作時に起こりやすいです

肩峰下インピンジメント症候群の原因

肩は色々な組織から出来ていて、非常に複雑な構造となっています。

インピンジメント症候群は様々な要因が重なって起こる事が多いです。

原因① 肩の下にある筋肉が硬い

本来の骨の動き

腕を挙げる動作の際は、上の図のように上腕骨が肩甲骨に対して下に滑る動きが必要となります。

骨が上にあがり衝突し痛む!

しかし、肩の後面や下方に硬さがあると、下に滑るスペースが確保できないため、上腕骨が上へと突き上げられてしまいます。その突き上げによって衝突、つまりインピンジメントが生じてしまいます。

筋肉でいうと広背筋、大円筋、棘下筋、小円筋の硬さが問題となる事が多いです。

簡単解説1

野球肩を防ぐには、肩の筋肉を柔らかくすることが大切です。

原因② 腕の動きと肩甲骨の動きのバランスが悪い

腕を挙げる際には上腕骨と肩甲骨にはある決まりごとが存在します。

決まりごと

●肩を最後まで挙げるには上腕骨だけの動きでは出来ません。

●肩甲骨が一緒に動く事で最後まで挙げる事が出来るのです。

●上腕骨が横に上がる動き(肩の外転)するときに、肩甲骨は斜め上に回旋する上方回旋という動きで一緒に動きます。

●実はこの動きは一定のリズムがあります。

●そのリズムは上腕骨と肩甲骨は2:1の割合で動くことです。

●上腕骨が2°横に上がったら(外転)肩甲骨は1°斜め上に回る(上方回旋)をします。

このことを肩甲上腕リズムといいます。

肩甲上腕リズム

本来の肩の動き

肩甲上腕リズムが乱れてしまうとインピンジメントを引き起こす原因となってしまいます。

簡単・解説2

腕を90度上げるときには
腕の骨が60度・肩甲骨が30度上がるのがベスト

このバランスが崩れると野球肩になる可能性が高くなります。

原因③ インナーマッスルの筋力低下

よくインナーマッスルという言葉を聞くと思いますが、肩についての役割を説明します。

肩のインナーマッスル

肩の周りのインナーマッスル

肩のインナーマッスルと呼ばれる筋肉は棘下筋、棘上筋、小円筋、肩甲下筋の4つで合わせてローテーターカフ、回旋筋腱板とも呼ばれます。

主な働きとして、上腕骨を肩甲骨に近づけて固定する作用があります。その働きによって関節が安定してスムーズに動いているのです。

しかしこのインナーマッスルの筋力低下が起こると、アウターマッスルが強く働いてしまいます。

すると関節の安定性がなくなってしまい、上腕骨が上へと突き上げてしまう事になりインピンジメントの原因となります。

簡単解説3

肩まわりのインナーマッスルが低下すると野球肩になる可能性が高くなります。

他にも色々な原因で肩峰下インピンジメントは発生しますがこれらが主な原因である事が多いです。

これらの原因がある状態で投球動作を繰り返す事によって痛みを引き起こしてしまい、いわゆる野球肩と呼ばれる症状になってしまいます。

ここからはこれらの原因になりうる身体の特徴を説明していきます。

野球肩になりやすい人の特徴

それではどんな人が野球肩になってしまう可能性が高いのでしょうか。

肩の動きに制限がある

チェック方法 ①

仰向けになり両膝を曲げて下さい。その状態から両手をバンザイしていきます。

野球肩チェック

耳に腕がつけばOK!

正常であれば耳に腕がついた状態で床に手が付きます。

付かないとすると肩後面の硬さが疑われます。

チェック方法 ②

仰向けで腕を真横、90度に開いた状態で肘を90度曲げて下さい。その状態から手を床に近づけていきます。

この状態から腕を動かします。

角度が70度まで動けばOK!!

こちらも70度程度が正常です。

チェック方法 ③

今度は腕を開いている側を向いて横に寝て下さい。同じように床に手を近づけていきます。

正面からもチェックしましょう。

70度まで動かせればOK!

この角度も70度程度であれば正常です。

肩甲骨高さに左右差がある

左右の肩甲骨の高さををみた時に、投球側が過度に上がっていないか、または下がっていないかをみます。

どちらにせよ、肩甲上腕リズムに影響を及ぼす可能性がありインピンジメントを起こしやすくなります。

代表的な特徴を挙げました。これらの特徴があると肩に負担がかかりやすく、野球肩、特に肩峰下インピンジメント症候群になりやすいです。

野球肩の予防・改善するストレッチ

ここからはこれらの野球肩を改善するための予防策、改善策を紹介します。

肩後面の硬さの改善をするようにします。

棘下筋・小円筋のストレッチ

ストレッチ①

①まっすぐ背中を伸ばした状態で伸ばしたい側の腕を腰に回します

②反対側の手で肘を前に引き寄せて伸ばします。

背中が丸まらない事、肩甲骨を内側に寄せておく事がポイントです。

ストレッチ②

①伸ばしたい側の腕を肘を曲げて反対側の肩に回します。

②反対側の手で肘を後ろに引っ張って伸ばします。

背中側が丸まらない事、肩甲骨を内側に寄せておく事、肘の高さを顔の高さ程度にする事がポイントです。

広背筋のストレッチ

①四つん這いになって両手の小指と肘をくっつけます。

②その状態から踵とお尻を近づけるようにかがんでいきます。

両手の小指と肘が離れないようにする事がポイントです。

野球肩の予防・改善する筋トレ

インナーマッスルの強化をするための筋トレを紹介します。

棘上筋筋トレ

①まっすぐ立った状態でゴムチューブや軽めのダンベルを握ります。

②肘を伸ばした状態で、30度程度横に腕を広げていきます。

体が斜めに倒れたり、肩甲骨が上に上がったりしないようにしましょう。

それとダンベルやチューブの負荷が強いと、アウターマッスルである筋肉が働いてしまうため効果的にトレーニング出来ません。ダンベルでいうと2〜3kg程度が望ましいです。

注意!
ダンベルは重くしすぎない事!!
2〜3kg程度にしましょう。

野球肩におすすめのサポーター

肩は基本的に可動域が大きい関節なので、サポーターで動きを制限するとかえって投球時に他の部位に負担をかけてしまう可能性があります。

野球肩用のサポーターもありますが、あまり動きを制限しないものの方が望ましいでしょう。

軽い圧迫によって筋肉の動きをサポートする程度のサポーターが良いでしょう。

野球肩も症状によって違うため、脱臼や不安定な肩の場合は少し固定性のあるサポーターの方が効果的です。

アイシング用のサポーターは?

アイシング用サポーターは試合・練習後のクールダウンを目的に作られたものです。肩を冷やす際に使用すると良いでしょう。
すでに発症してしまっている野球肩を治すのには適していません。

野球をしていてケガでお悩みの方・予防したい人はこちらもチェックしてみてくてください。

まとめ

●野球肩とは色々な病態の肩の障害の総称であり、インピンジメント症候群が多い。

●その中でも特に多いのは肩峰下インピンジメント症候群である。

●原因としては投げすぎによる過負荷が多く、早期発見が大切である。

●肩の筋肉の硬さ、インナーマッスルの筋力低下、肩甲骨の動が悪いと起こしやすいため予防が大切である。

肩峰下インピンジメント症候群は初期の段階では投球動作を控える事、肩の柔軟性を改善する事、インナーマッスルを鍛える事で改善しやすいです。

しかし痛みをこらえて繰り返し負担をかけていくと、棘上筋が断裂してしまったり、骨が尖ってきてしまったりして治療が困難となりうるため早期の対応が大切になります。

豊田早苗(医師)●文
桜井佑葵(理学療法士)●文

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