ギランバレー症候群の原因と症状は?治療とリハビリ・全知識
手足に力が入りにくくなったり、痺れが生じたりする症状。
それは神経の病気であるギランバレー症候群である可能性があります。
今回はギランバレー症候群について解説していきます。
ギランバレー症候群とは
ギランバレー症候群とは末梢神経の病気で、体に入ってくるウイルスや細菌などを攻撃する免疫の異常により発症する自己免疫疾患です。
手足に力が入りにくくなったり、痺れが生じたりして生活に大きな支障をきたします。
我が国では年間10万人あたりに1〜2人に発症するといわれ、やや男性に多い傾向があります。
子供や高齢者など年齢に関係なく、全ての年代に発症します。
ギランバレー症候群の症状
典型的な症状として、ギランバレー症候群を発症する1〜3週間前に風邪のような咳や喉の痛み、下痢の症状が出現する事が多くみられます。
初発症状として、足に力が入りにくい、痺れるといった訴えが聞かれます。
多くは足から症状が始まり、次第に手や顔面の筋肉が動かしにくくなり、飲み込みがしにくい、呂律が回らないといった症状もみられます。
また自律神経症状として、血圧の変動が大きくなったり、不整脈がみられたりする事もあります。
重症の場合は呼吸筋が麻痺してしまい、息苦しさが生じて人工呼吸器が必要となる場合もあります。
これらの症状は徐々に進行していきますが、多くは4週間ほどでピークに達した後、徐々に落ち着いていき半年から一年程で改善していきます。
症状の強さや後遺症などは個人差があり、全体の5%は呼吸不全にて亡くなる事もあります。
ギランバレー症候群の原因
ギランバレー症候群の原因はウイルスや細菌の感染によるものです。
通常私たちの体は、ウイルスや細菌に感染した際には、それらを排除して攻撃するための免疫が備わっています。
ギランバレー症候群の場合、免疫が自分の神経を攻撃の標的だと誤認してしまうため、末梢神経がダメージを受け症状が現れるのです。
免疫による攻撃は一時的なもので終わるため、ピークを過ぎると症状が徐々に和らいでいくのですが、ダメージが大きければ大きいほど後遺症が残り、命が危険にさらされてしまいます。
ギランバレー症候群の原因で因果関係がわかっているのはサイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマ、カンピロバクターの感染です。
カンピロバクターはギランバレー症候群全体の20-30%を占める主要な原因で、主に家畜に潜んでいる食中毒菌です。
特にニワトリにいる事が多く、感染すると下痢や嘔吐、発熱などの食中毒症状の後に、ギランバレー症候群の症状が現れる事があります。
カンピロバクターは熱に弱いため、加熱が不十分な鶏肉を食べる事で感染しやすいといわれています。
ギランバレー症候群の分類
ギランバレー症候群は脱髄型と軸索障害型の二つにわけられます。
神経は脳からの指令を体の各部位に伝える電線のような役割を果たしています。
その指令を伝える電線の中心にある芯の部分を「軸索(じくさく)」、軸索の周りを覆っている「髄鞘(ずいしょう)」という鞘があります。
ギランバレー症候群は軸索が障害される軸索障害型と髄鞘が傷害される脱髄型、両者が混合した混合型とに分類されます。
脱髄型の方が予後は良好で、日本では混合型が多いとされています。
ギランバレー症候群の診断
ギランバレー症候群は主に神経内科で診断が可能です。検査としては以下のものが行われます。
筋電図検査
筋電図検査では神経から筋肉への指令の伝達に異常がないかを調べるものです。
異常があれば、伝達の速度が遅かったり、途切れてしまっている所見がみられます。
検査によって脱髄型か軸索障害型かの判別が可能です。
血液検査
血液検査にて、免疫の抗体数値に異常がないかを検査します。
抗ガングリオシド抗体、抗糖脂質抗体などが検出される事があります。
髄液検査
腰椎に針を刺して髄液※採取して細胞数や蛋白を調べます。
ギランバレー症候群では蛋白の数値の向上がみられます。
※髄液
脳室や脊髄を満たしている液で脳や神経を保護する役割を果たしている。
ギランバレー症候群の重症度
ギランバレー症候群の重症度の治療としてHughesの運動尺度が使用されています。
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ギランバレー症候群の治療法
ギランバレー症候群は治療を行わなくても自然に症状が軽減していくため、予後の良い疾患といわれています。
しかし中には重度で適切な治療がなされないと、後遺症が残る人もいるので早めに治療を開始する事が重要です。
ギランバレー症候群の治療法は以下のものがあります。
免疫グロブリン大量静注療法
ヒト免疫グロブリンを点滴にて注入して免疫の働きを調整します。通常は5日間行います。ギランバレー症候群の治療において第一選択として行われます。
血液浄化療法
血液の液体成分である血漿を分離して、血漿の中に含まれる有害物質を除去してから体内に再び戻す治療法です。
一度に大量の血液を採取する必要があるため、カテーテルを血管内に挿入していったり、針を刺したりして行います。
ギランバレー症候群のリハビリ
ギランバレー症候群は免疫グロブリン大量静注療法、血液浄化療法と合わせてリハビリを行う事で回復を早めたり、後遺症を軽減させる効果が期待できます。
ギランバレー症候群は発症してピークに達するまでの時期を麻痺期、ピークから回復に向かう時期を回復期、状態が安定する安定期に分けられそれぞれの時期で内容や目的が異なります。
医師の指示のもと、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)とリハビリを行っていきます。それぞれの時期のリハビリについてみていきましょう。
麻痺期のリハビリ
麻痺期はギランバレー症候群を発症してから徐々に手足の動きが困難になり始め、歩く事が困難になったり、呼吸が行いにくくなる時期です。
この時期は積極的に運動を進めていくというよりかは、関節が硬くならないように、呼吸がしにくくならはいように二次的な予防を進めていくのが大切です。
無理のないように行っていきます。
関節が硬くならないように関節可動域を行います。
関節が正常に動く範囲内をしっかりと動かしたり、筋肉をストレッチ、マッサージしたりして可動域の維持に努めます。
呼吸機能の低下を予防するために、胸郭(肺や内臓を保護する肋骨や背骨などの骨で囲まれた部分)の可動域訓練、腹式呼吸の練習、痰を吐き出す訓練などを行います。
回復期のリハビリ
回復期はギランバレー症候群によって生じた麻痺が回復し始める時期で、徐々に手足の動きが戻ってきます。
麻痺の影響で生じてしまった筋力低下や神経と筋肉の指令伝達を促通していく事を中心に行います。
筋力低下に対しては筋力増強訓練を行います。
無理な重量はかけないように、軽い負荷の運動を反復して行っていきます。
自分で関節を動かす自動運動、理学療法士や作業療法士に支えてもらいながら動かす自動介助運動を中心に行っていきます。
また起き上がり、立ち上がり、歩行などの動作訓練も行っていきます。
安定期のリハビリ
ギランバレー症候群の症状は落ち着き、状態が安定している時期です。
後遺症によって支障のある動作の再獲得や社会復帰に向けた応用的な訓練を行います。
具体的には長距離歩行や階段動作、仕事や家事における細かい手作業など、より生活に実用的な内容のリハビリとなります。
まとめ
・ギランバレー症候群は自分の免疫異常によって生じる自己免疫疾患で、主に末梢神経が障害される。
・主な症状は風邪のような症状の後に、手足の痺れや運動麻痺、自律神経症状が出現する。
・ほとんどはピークを過ぎると改善に向かうが、呼吸筋が重度に障害されると死に至る場合もある。