血糖値が下がらない!妊娠糖尿病の症状・検査・治療法・インスリン導入基準も
妊娠糖尿病とは
糖尿病とは糖分の代謝(分解してエネルギーになる過程)が上手く行われず、血液中の糖分が異常に高くなることです。
糖分が異常に高くなることにより、体中の機能が徐々に正常に働かなくなっていきます。
妊娠糖尿病とは、妊娠してから始めて「糖分の代謝異常(血糖値が正常よりもかなり高くなる)」と診断された場合に妊娠糖尿病と言われます。
ですので、元々糖尿病の既往歴(その病気をした経験がある)がある方や、妊娠中に「糖尿病」と正式に診断が下された場合には、妊娠糖尿病とは言いません(この場合には、糖尿病合併妊娠と言われます)。
妊娠糖尿病の症状
症状は個人差があり、初期症状がほとんどでない人もいます。
1.初期の症状
発汗(じっとり、変な汗をかく)、手足のふるえ、動悸(どきどきする)、異常な空腹感、体が熱く感じるなどの症状があります。
2.中期~末期の症状
脱力(体に力が入らない)、眠気、疲労感、集中力の低下、物がぼやけるなどの症状があります。
3.低血糖昏睡
意識がなくなり急に倒れて問いかけにも応答できなくなります。
妊娠糖尿病の合併症で奇形になる確率は?
実際に正確な奇形児の確率は出されていません。
妊娠後に妊娠糖尿病の治療開始した人たちの奇形児の割合は9.0%です。
この数字だけを見ますと、しっかりと治療を妊娠中に行えば奇形児になる割合も少なくなるということが分かります。
ですので、考えすぎるのは大変良くないことです。
しかし、正常な妊婦さんよりも奇形児の生まれる可能性は3~5倍に増えることは米国・日本などの統計で既に出されていますので、まずは治療を行うことが大切です。
参照資料:日本糖尿病・妊娠学会
http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/b/q02/
出産後でも妊娠糖尿病が治らない!注意
妊娠後に妊娠糖尿病になる人というのは妊娠していない時ですので、妊娠糖尿病ではなく糖尿病と診断されます。
妊娠後下がるはずの血糖値が下がらずに、高血糖のままの人はいます。
元々糖尿病になりやすい体質(糖尿病は遺伝や体質も関係が深い病気です)だったのが、妊娠を機に糖尿病になり血糖値が高いままになってしまう人たちです。
実際に妊娠糖尿病になった人で、そのまま糖尿病になってしまう人は糖尿病でない人よりも7倍の確率で糖尿病になりやすいという結果が出ています。
糖尿病は早期発見・早期治療がとても大切です。適切な治療を行えば、胎児に異常も無く、再び妊娠もできるようになります。
妊娠糖尿病の検査と診断基準
多くの産婦人科では、初めにスクリーニングテストと呼ばれる、糖尿病かどうかを調べるテストを実施するところが多いです。
3血糖値の数値はどれくらいが危険?
スクリーニングテスト後に血糖値の異常が認められる場合には、経口ブドウ糖負荷テストを行います。
経口ブドウ糖負荷テストとは、75gのブドウ糖を飲み血液中のブドウ糖の値を時間の変化と共に計測するテストです。
基準は以下のようになります。
この基準値が1つでも上回れば、すぐに妊娠糖尿病の治療を開始いたします。
*妊娠糖尿病は胎児にも影響があるので、一般的な糖尿病の基準値よりもさらに厳しく設定されています。
空腹時 | 92㎎/dL |
ブドウ糖摂取後1時間後 | 180㎎/dL |
ブドウ糖摂取後2時間後 | 150㎎/dL |
さらに、この段階で妊娠糖尿病と診断されていない妊婦さんも、血糖値のコントロールが悪くなる妊娠中期にも同様のテストが実施されます。
*妊娠前に糖尿病と診断されている人は、定期的に血糖値チェック・眼底検査・尿検査・腎臓の検査(尿検査と共に)を行います。
妊娠糖尿病の治療
妊娠糖尿病の人は基本的には糖尿病の人と同じ治療を行います。
しかし、妊娠中は使用できる薬とできない薬があるので、家族や他の人の糖尿病の薬を勝手に飲むのは絶対にやめましょう。
治療方法は大きく分けて3つの治療方法があります。
妊娠糖尿病の治療①食事療法
妊娠糖尿病も糖尿病も糖分をコントロールすることが一番効率よく血糖値をコントロールできます。
そこで、病院や栄養士さんが行っている低糖質ダイエットや妊娠糖尿病プログラムなどがあれば、参加するのをおすすめします。
*食事に関してのおすすめ資料(p18外食~)
妊娠糖尿病の治療②運動
激しい運動ではなく、妊娠中でもできるような運動を病院で相談してみましょう。
妊娠は個人差が激しく、普通に運動を行っても大丈夫な人もいれば、絶対安静の人もいます。
ですので、自分の体調や医師からのアドバイスに従って運動を行いましょう。
妊娠糖尿病の治療③薬
基本的に飲み薬ではなく、インスリン注射を行います。
先端恐怖症などの人は医師に相談して代替治療を行います。
飲み薬は胎児の血液に混ざってしまいますが、インスリンは胎児の血液には混ざらないので安心して使用できます。
胎盤のフィルターによりインスリンは通過できません。
赤ちゃんには影響ありません。
治療基準
一般的に、産婦人科ではHbA1c値(3か月以上の血糖値の割合を示す指標の数値)が5~6%以下に下がるようにアドバイスがされます。
また、妊活をしている女性は5%以下に下がるように指導されています。
妊娠糖尿病の食事
妊娠糖尿病と判断されたならば、まずは低糖質ダイエットを考えましょう。
食事メニュー
糖質というのは、制限するのが難しいくらいどの食品にも少なからず含まれています。
ですので、低炭水化物ダイエットのメニューを参考にして日々のメニューを決めましょう。
さらに、塩分も妊娠中は気になります。特に和食は塩分が多くなりがちです。
そこで、レモン果汁やお酢など塩分の代わりになりそうな調味料を使い工夫してみましょう。
*香辛料の中には、刺激の強すぎるものも多く含まれています。
ですので、香辛料を使用する場合には量に気を付けてあまり刺激の強い物は使用しないようにしてください。
妊娠糖尿病の食事メニュー例
1.朝
トースト、卵、お茶(ミルクはお腹の調子がいい人だけ)
2.低糖質ランチ(外食の場合)
おかず、スープ、豆腐かサラダ
3.おやつ
ナッツ類など
4.夕食
肉類、煮物、サラダかスープ(ドレッシングはバルサミコなどのお酢)、お茶など
食べていいおやつ
血糖値が急激に上がらない食べ物がおすすめです。
ナッツやプロテインバー(市販のもの)なども空腹時にはいいでしょう。
食べてはいけないもの
急激に血糖値が上がりやすいケーキやスナック菓子です。
体が欲するのですが、妊娠糖尿病の場合には命取りになりかねませんので、どうしても食べたい場合には、時間をかけて食べたり、少量をあらかじめお皿に出して食べるようにしましょう。
妊娠糖尿病の予防方法
予防方法は糖尿病と同じです。規則正しい生活を送ることが望ましいです。また糖分の摂取には十分気を付けましょう。
1.食事
糖質の摂取には十分気を付けるとともに、カロリーオーバーにならないようにしましょう。
妊娠していても1日に約200KCal以下しかオーバーしてはいけません。
2.運動
体調が悪い日は別ですが、それ以外はできるだけ普通の生活をし、悪阻(つわり)などで動けない状態が続くようであれば、医師に相談してみましょう。
3.生活
妊娠初期や後期は体調的に家事・育児が辛い場合が多いです。そのような場合には、旦那さんや家族に遠慮なく協力を頼みましょう。
まとめ
妊娠糖尿病は妊婦さん誰にでも起こりうる病気であり、奇形児が生まれやすくなるなど胎児にも影響が出ます。
しかし、早期発見・早期治療により妊娠の継続や再び妊娠もできます。ですので怖がることなく妊娠生活を過ごしましょう。