前置胎盤の原因は?入院時の治療法は?詳しく解説
赤ちゃんには、母親から栄養を運ぶ役割をしている胎盤と言われるものがあります。
胎盤は赤ちゃんの臍(へそ)の緒と繋がっていますので、赤ちゃんの命綱ともいえるべき存在です。
その胎盤が配置されるべき場所になく、出産の入り口になる子宮口やその周辺を覆ってしまうことを前置胎盤と言います。
今回は前置胎盤の原因や治療法について解説していきます。
前置胎盤の種類
前置胎盤は大きく分けて3つの種類と前置胎盤と同じリスクの高い低置胎盤があります。
全前置胎盤
胎盤が子宮口全般を覆い、赤ちゃんが子宮口から出てこようとしても出てこれない状況になっています。
辺縁前置胎盤(子宮口の周り、周辺)
胎盤の端が子宮口の端にほとんどくっつきそうな位置(辺縁)にある状態を言います。
部分前置胎盤
胎盤の一部分が子宮口を覆う事を言います。
低置胎盤
胎盤が子宮口の近くにあり、子宮口に届きそうな事を言います(子宮口から2㎝以内にある場合)
そのくらいの割合で前置胎盤になるのか?
国によっても違いますが、現在の日本では200例に1例の割合で前置胎盤になると言われています。
これは割合にするとかなり低く、ほとんどの妊婦さんはあまり心配しすぎなくてもいいでしょう。
しかし、どの妊婦さんでもなる可能性があるのが前置胎盤ですので、なってしまっても適切な処置を受ければ大丈夫だという気持ちでいてくださいね。
前置胎盤はいつわかる?
前置胎盤は早ければ20週目を迎えた時に判明します。
診察で判明する場合もあれば、出血が続くので調べてみたら前置胎盤だったなど症状から判明する場合もあります。
ただ、前置胎盤は早ければ(20週目などに判明した場合)28週目までには、自然に改善する場合が多いです。
ただし、改善するかどうかはやはり個人差があり、前置胎盤になりやすい人というのはいますが、必ずしもその人たちがなるわけではなく、個人差があります。
どのような人がなりやすいの?
前置胎盤は以下のような人たちがなりやすいです。
- 多産(3人以上と言われています)
- 子宮筋腫や子宮内膜症などを持っている人
- 帝王切開出産をした人
- 喫煙
- 双子や三つ子などの出産経験
- 高齢(これは今でも議論されている課題です)
しかし、妊娠というのはまだまだ解明されていない部分も多いです。
当てはまったからと言って前置胎盤になるわけでもなければ
当てはまらないからと言って、大丈夫と言うわけでもありません。
前置胎盤の症状
前置胎盤は通常妊娠後期(28週目)から症状が現れます。ただ、20週目あたりの痛みのない出血でも前置胎盤の恐れがあります。
出血の色は通常鮮血であり、真っ赤な色鮮やかな出血が大量に起こります。この痛みや兆候なしの大量の出血のために、出血性ショックを起こして気絶して転倒したり、そのまま入院になってしまったりする人もいます。
また、全ての人に起こるわけではないですが、子宮が収縮する人もいます。
時期により前置胎盤のリスク度
1.20週目~28週目
出血などがありますが、安静にして子宮が成長していくのを待っていると、前置胎盤が自然に解消する場合も多いです。気を付けるに越したことはないのですが、あまりリスク度は高くありません。
2.32週目~34週目で前置胎盤と診断された場合
自然出産は大量の出血により緊急事態を引き起こす可能性が高く赤ちゃんや母体にもリスクが跳ね上がります。ですので帝王切開により出産させます。
なぜ前置胎盤は危険なの?
前置胎盤による危険は以下の3つです。
1.出血多量
激しい出血が止まらなくなり、母体や胎児に酸素の供給が行き渡らなくなってしまします。最悪の場合、赤ちゃんも死産、お母さんも死亡という結果になってしまう可能性も高いです。出血量はバケツから血液をぶちまけたような大量の出血が起こります。
2.前置癒着胎盤
通常は出産後、自然に胎盤が剥がれ落ちるのですが、前置癒着胎盤では胎盤が子宮壁にくっついてしまい、胎盤がそのまま子宮内に残ってしまいます。多くの場合には、出産後そのまま子宮を取ってしまう(子宮全摘)ことが多いです。
3.早産
前置胎盤が原因により、出産が早まってしまう可能性も高く、赤ちゃんが十分成長しないまま生まれてしまうことも多いです。
*注意!
日本は世界有数の医学先進国です。
ですので死亡するケースは稀です。
ほとんどが前置胎盤のせいではなくそれ以外の原因があり死亡しています。
しかし、海外ではまだまだ前置胎盤から子宮癒着が起こり、子宮全摘出のために死亡するケースも多いです。
帝王切開になるのか?自然分娩になるのか?
前置胎盤で一番怖いのは、大量の出血と赤ちゃんが子宮の中で呼吸や成長が出来なくなってしまうことです。
先ほども述べましたが、20週目から28週目までは、子宮が大きくなる時期でもあります。
ですので、前置胎盤かもしれないと診断されても、子宮が成長するにつれ胎盤も子宮口から離れ前置胎盤が解消する人が多いです。
解消してしまえば、自然分娩になります。
一方、34週目あたりに正式に前置胎盤と診断された人は、36週目や子宮と赤ちゃんの状態を見て帝王切開で出産することになります。
妊婦さんの状態や赤ちゃんの状態により、医師があ判断するので、症状があまりないという人でも帝王切開になる場合もあります。
前置胎盤が癒着胎盤になる確率
前置胎盤と診断されたからと言って、必ずしも前置癒着胎盤(胎盤が子宮壁にくっついてしまい、子宮摘出しなくてはいけない状況)になるとは限りません。
ですが、前置胎盤から帝王切開を行い出産した人は次の出産のときに癒着胎盤になる確率は自然出産の人よりもかなり高くなります。
例えば、4回帝王切開をした人は、自然分娩をした人と比べて60%以上も癒着する割合が跳ね上がります。
診察の仕方
まず、出血をしている場合には、超音波(エコー)により20週目当たりで前置胎盤の疑いが持たれ経過を観察します。
そして30週目前後に正式に前置胎盤の診断が下されることが多いです。
また、前置胎盤かどうか疑わしいが判断がつきにくい場合には、MRIで最終的な判断をくだします。
*注意:20週目に内診(触診)を行った場合、大出血を起こす可能性があるので、内診は前置胎盤という可能性が完全になくなった場合にのみ行います。
まずはエコーが前置胎盤の場合には最適な診断方法です。
入院の時の治療法
治療は妊娠周期により違ってきます。
1.36週目前までに診断された前置胎盤
まずは、出血を止めるための治療が行われます。
赤ちゃんの体が小さい場合には、肺の成長を促すコルチコステロイドなどの投与が行われ、早産に備えます。
入院は床上安静と言い、前置胎盤により出血が収まる迄はベッドから動かないよう寝たきりの入院生活をすすめられます。
出血が止まると、歩いたり退院が許可されますが、それも家庭環境(小さな子供がいて動き回らなくてはいけないなど)や母体の状況を見て、医師により判断が下されます。
また退院になっても、生活の行動範囲や活動範囲はかなり制限された生活になります。
少しの出血から大量の出血を引き起こす場合が多いのが前置胎盤ですので、自宅に帰ってもなるべく安静にしているように伝えられます。
2.36週目以降
時期や母体または赤ちゃんの状況を見て、帝王切開による分娩の計画をします。
母体または赤ちゃんの状態が不安定な場合には、直ぐに分娩の支度にとりかかります。
寝る向きはどちらがいい?
逆子の場合には、寝る向きや逆子体操に効果があると言われていますが、前置胎盤ではあまり寝る向きは気にされていません。
また、医学的な根拠やデータもないので、どの向きで寝たら前置胎盤が改善するということもありません。自分の寝やすい寝方で寝てくださいね。