前頭葉は脳の司令塔と呼ばれ、判断力や思考力、集中力や注意力、記憶など様々な働きを担っています。
そんな前頭葉の働きが障害されることが起こったら、機能が低下してしまったら、どうなってしまうのでしょうか?
今回は、前頭葉障害や機能低下で起こる症状について説明していきます。
前頭葉障害と機能低下の違い
前頭葉障害とは、認知症や脳梗塞、脳出血などの病気や交通事故などによる損傷によって、前頭葉が機能しない後遺症が残り、日常生活や社会生活に支障が起こっている状態を言います。
一方、機能低下とは、病気や損傷を前提とせず、老化やストレスなどで前頭葉の働きが悪くなった状態を言います。
前頭葉障害又は機能低下が起こる原因
どういったことが原因で、前頭葉障害や機能低下が起こるのでしょうか?
具体的にみていくことにしましょう。
老化
脳の神経細胞は、20歳を過ぎると徐々に減り始めていくと言われています。
そして、前頭葉は、歳を重ねたとき、最も早くに機能が低下する場所であり、40歳を過ぎると、老化が始まり、前頭葉の働きが悪くなる機能低下が起こります。
ストレス、うつ病
脳は、ストレスに非常に弱く、ストレスがかかり続けることによって発症する例えば、うつ病では、脳の血流が低下したり、情報を伝達処理するために必要な物質(セロトニン、ドーパミンなどの情報伝達物質)が分泌されにくい状態となっています。
結果、視覚や聴覚、味覚などを通じて脳へ情報が入ってきても、情報を集めて、判断し、処理する前頭葉の働きが悪くなっているため、気分の不安定さや意欲の低下、集中力や判断力の低下など、前頭葉の機能低下に起因した症状が起こります。
「ストレスによって脳が萎縮する?ストレスが脳に与える悪影響と脳萎縮を防ぐ方法」
認知症
認知症と一口にいっても、アルツハイマー病、脳梗塞や脳出血が原因の脳血管性認知症、若い方に多い前頭側頭葉型認知症、主に後頭葉に病変が認められるピック病等、いくつも種類がありますが、どれも脳の神経細胞の変性や破壊が起こります。
アルツハイマー病では、前頭葉と海馬の神経細胞の変性や破壊が顕著ですし、脳血管性認知症では、脳梗塞や脳出血の場所に応じた脳障害が、前頭側頭葉型認知症では、前頭葉と側頭葉、ピック病では、主に後頭葉の障害が起こります。
認知症の種類によって、主として脳の障害が起こる場所が少しずつ違いますが、前頭葉は脳の司令塔で、側頭葉や後頭葉、頭頂葉からの情報が入ってくる場所です。
また、認知症は進行性の病気で、徐々に脳全体に病変が広がっていきます。
ですから、たとえ、前頭葉以外の場所が主に障害されていたとしても、前頭葉に情報が入ってこないため、前頭葉は働くことができず、前頭葉障害が起こりますし、また、認知症の進行とともに、前頭葉の神経細胞にも変性や破壊が生じ、前頭葉障害が起こります。
高次機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故などによる脳外傷、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、脳炎・低酸素脳症などの病気が原因で、脳が部分的に損傷を受けたことが原因で起こる脳の障害で、記憶障害、注意力や集中力の低下、物事を計画的に実行できない遂行機能障害、感情がコントロールできない感情障害などの症状が起こります。
発達障害
発達障害とは、脳機能の発達に偏りがあり、人とのコミュニケーションが苦手であったり、集中力を維持するのが苦手であったりする一方で、絵を描くことが得意であったり、覚えることが得意であったりと、アンバランスな状態が起こる脳の機能障害です。
発達障害は、生まれつきの障害で、上4つとは違うため、まるまるで別に説明していますので、詳しくは、「発達障害とは?」(準備中)を読んでください。
前頭葉障害又は機能低下でみられる症状
前頭葉障害や前頭葉の機能低下がみられる主な病気について簡単に説明しましたが、
前頭葉の障害があったり、機能が低下すると、どのような症状が起こるのでしょうか?
前頭葉障害や前頭葉の機能低下で起こる症状について詳しく、具体的に説明していきます。
物忘れ
前頭葉の機能低下で起こる物忘れは、思い出す力の低下のよる物忘れです。
ですので、覚えたはずのことが思い出さなければいけない場面で、なかなか思い出すことができない症状が出ます。
具体例:
買い物に行ったけど、買うはずのものを忘れて帰宅してしまった。
友達と久しぶりに会って話をする約束をしていたのに、当日忘れてしまっていた。
状況を判断しての行動ができない
前頭葉の働きが悪くなると、周囲の状況や自分がおかれている状況を把握し、その状況に応じた対応や行動をとることができなくなります。
具体例:
他の人がレジに並んでいるのに、レジの順番を待てない。
雨なのに散歩に出かける。
会議中に話を聞かず、スマホをいじる。
計画的に又は段取りよく行動することができない
前頭葉は、物事の先を予測しながら行動していく計画力や実行力に関与しているの場所であるため、前頭葉の機能が衰えてくると、物事を段取りよく進めることができなくなってきます。
具体例:
1つの料理を作るのに時間がかかる。
仕事の優先順位を決めることができない。
1つのことにこだわり、次になかなか進めない。
注意散漫となり、ミスが多くなる
前頭葉は、脳に入ってきた情報が集まる場所でもあり、休むことなく、集められた情報を瞬時に適切に処理しています。
こうした前頭葉の情報処理能力の低下は、注意力の低下や集中力が続かない症状として現れてきます。
具体例:
火の消し忘れや水道の閉め忘れ。
アクセルとブレーキを間違える。
うっかりミスが多くなる。
同時に2つのことを行うのが難しくなる
同時に2つ以上のことを行うためには、それぞれに注意を払いながら、そして、それぞれの作業の進行状況を記憶しながら、こなしていかなければいけません。
そうした注意分配と作業記憶にも前頭葉は関与しています。
ですので、前頭葉の働きが衰えてくると、1つ1つなら物事をこなすことができるが、2つ以上同時に行おうとすると、混乱して上手く進めることができなくなってきます。
具体例:
パソコンで必要な資料を探しながら、かかってきた電話の応対をする。
料理をしている最中に、急な雨で洗濯物を取り入れると、料理を焦がすなどミスが出る。
感情が上手くコントロールできない
イライラや不安、楽しいや悲しいなどの感情、やる気をコントロールしているのも、前頭葉です。
うつ病やパニック障害障害などの心の病気では、前頭葉の働きが低下しているために、イライラしやすかったり、些細なことで不安になってしまったりするとも言われています。
具体例:
急にイライラして激しく怒ってしまう。
ちょっとしたことで不安になってしまう。
突然、悲しくなって泣いてしまう。
笑ってはいけない場で、笑ってしまう。
悲しかったかと思うと、急にイライラしはじめる。
今まで当たり前に出来ていたことができなくなる
今まで経験して身につけてきたことは、記憶として脳に保存されています。
こうした脳に保存されている過去の経験に基づく記憶を呼び出すことは、前頭葉の重要な役割の1つです。
前頭葉の機能が低下すると、過去の経験に基づく記憶を呼び出すことができず、今まで当たり前にできていた作業ができなくなります。
具体例:
テレビのスイッチを入れることができない。
洗濯する手順がわからない。
言葉がなかなか出てこない
会話をするには、相手が言った言葉を理解することと、言葉を選び出すことの2つが必要です。
このうち、言葉を選び出す作業を行っているのが前頭葉です。
前頭葉の働きが衰えてくると、イメージや映像は浮かんでいても、それを言葉として出すことが難しくなり、人の名前や物の名前がなかなか出てこなくなります。
具体例:
会話の中に、あれ・これ・それが多くなる。
人の名前や物の名前がなかなか出てこない。
このように、前頭葉の働きが悪くなったり、機能低下が起こると、日常生活に支障をきたす様々な症状が出てきます。
前頭葉の機能は、病気でなくても、年齢とともに低下していくため、日頃から前頭葉を鍛えるトレーニングを生活の中の取り入れて、前頭葉の機能低下を少しでも防いでいくことが必要です。
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