原因不明の下痢や便秘、腹痛に悩まされていませんか?
もしかしたら、過敏性腸症候群かも知れません。
この記事では、過敏性腸症候群の症状と治し方について説明しています。
過敏性腸症候群とは?
過敏性腸症候群は、腸(大腸)が活発に動きすぎることで、下痢や便秘、腹痛などお腹の不調が数ヶ月にわたって続く病気です。
炎症や潰瘍などはないため、病院で検査を受けても何の異常も見つかりません。
過敏性腸症候群の発症には、ストレスが深く関与しています。
ですので、真面目な人、几帳面な人、神経質な人、緊張しやすい人、責任感の強い人がなりやすいです。
ストレスの多い現代社会では、10人に1人が過敏性腸症候群です。
症状は、
- 緊張やストレスを感じると、突然、腹痛が起こり、下痢する
- 下痢が治まったと思ったら、今度は、便秘が続く
つまり、突発性の腹痛、下痢と便秘を繰り返すのが過敏性腸症候群の典型的な症状です。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の最大の原因は、ストレスです。
不安や緊張などのストレスを感じると、脳から腸に対して信号が送られ、セロトニンの分泌が起こります。
セロトニンの分泌が起こると、腸は活発に動き出し、腹痛や下痢を起こします。
また、過敏性腸症候群では、食べ物など些細な変化も敏感に感じ取る腸の知覚過敏が同時に起こっています。
このため、刺激物や冷たいものを食べたりすると、腸が敏感に反応し、異常を脳に知らせます。
異常を知らされた脳は、腸に対して、動きを活発にして、排便してしまうよう指令を出します。
これにより、腹痛や下痢が起こります。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群は、症状から、下痢型、便秘型、下痢と便秘の混合型、ガス型に分けることができます。
診断基準
➀1ヶ月に3日以上、腹痛や下痢又は便秘がある
➁排便すると症状が治まる
➂下痢の場合:泥状もしくは水様性の便で、排便回数は多い
便秘の場合:コロコロしたウサギの糞状の硬い便で、排便回数は少ない
➀から➂の症状が3カ月以上続いていると、過敏性腸症候群と診断されます。
下痢型の症状
- 排便回数は、1日に3回以上
- 便は、泥状もしくは水様性
- 突然に便意が起こる
便秘型の症状
- 排便回数は週に3回以下
- 便は、コロコロとしたウサギの糞状の硬い便または力んでも出ない
混合型の症状
- 混合型のベースは、下痢型
- 下痢が続いた結果として便秘が起こる
ガス型の症状
- お腹が張って苦しい(腹部膨満感)
- おならが頻繁に出る
- おならの臭いは、強烈であることが多い
◎便の質一覧表
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過敏性腸症候群の治し方
過敏性腸症候群は、ストレスが関与しておこります。
このため、一度なると、お腹の不調がストレスとなり、なかなか治りません。
ここでは、家庭で取り組める過敏性腸症候群の治し方について説明いたします。
病院で処方される過敏症腸症候群の薬
過敏症腸症候群の治療で使用される代表的な薬としては、
1:セレキノン
腸の蠕動運動を調整する作用があります。
つまり、過敏症腸症候群では、活発化した腸の運動を抑制します。
2:イリボー
下痢型の過敏性腸症候群に使用されます。
セロトニン受容体に作用し、腸の過剰な運動を抑える作用があります。
ただ、副作用として、便秘が起こることがあります。(特に女性)
3:コロネル
腸内において、水分を吸収し、便の固さを調節する作用を持つ樹脂成分です。
薬としての作用は全くありません。
4:ラックビー、ビオフェルミン
大腸で働くビフィズス菌(Bifiobacterium)製剤です。
便秘型、ガス型の過敏性腸症候群に効果的です。
5:ビオラクチス
小腸で働く乳酸菌(Lactobacillus casei)製剤です。
下痢型の過敏性腸症候群に効果的です。
6:ロペミン
強力な痢止め剤です。
下痢型過敏性腸症候群の頓服薬(どうしても下痢を止めたいときに飲む薬)として使用されます。
市販で購入できる過敏性腸症候群に効く薬
薬局やドラックストアに行くと、沢山の整腸剤が販売されています。
でも、どれが良いのか分からないことも多いのではないでしょうか?
そこで、市販で購入できる薬の中から、過敏性腸症候群におすすめの薬を2つ紹介いたします。
1:セレキノンS
病院で処方される「セレキノン」と全く同じ薬です。
腸の動きを調整する作用があり、過敏性腸症候群には、必須の薬と言えます。
セレキノンを購入する前に、症状をチェックしましょう!
2:ヤクルトBL整腸薬 36包
小腸で働くカゼイ菌と大腸で働くビフィズス菌の両方が入っています。
成分(1包1g):カゼイ菌(Lactobacillus casei)50mg、ビフィズス菌(Bifidobacterium breve)50mg
1日3包服用することで、カゼイ菌とビフィズス菌が、210億個摂取できます。
カゼイ菌と言っても、種類が色々あります。
ヤクルトBL整腸薬に含まれているカゼイ菌は、L.カゼイ.シロタ株です。
いわゆるヤクルト菌ですね。
酸に強く、胃酸や胆汁によって死滅することなく、腸まで届きます。
*カゼイ菌の働き
・悪玉腸内細菌の代表である大腸菌の増殖を抑えます。
その結果、有害物質の産生が抑制されます。(ガスの産生抑制)
・腸の運動を整え、下痢や軟便、便秘を解消します。
また、カゼリ菌が働く小腸は、免疫細胞がたくさん集まっているところです。
・免疫細胞の働きを活発にし、免疫力を高めます。
ビフィズス菌もカゼイ菌同様に色々な種類があります。
ヤクルトBL整腸薬に含まれているビフィズス菌は、B.ブレーベ.ヤクルト株です。
乳児期の赤ちゃんの腸内にはビフィズス菌がたくさん存在しています。(腸内細菌の95%がビフィズス菌です)
その多くが、B.ブレーベ.ヤクルト株です。
年を取るにつれて、腸内のビフィズス菌の数は減少します。
65歳以上では、1%しか存在していません。
*ビフィズス菌の働き
大腸内では、悪玉菌と善玉菌が陣取り合戦を行っています。
善玉菌が減ると、その分、悪玉菌が増えます。
大腸内における善玉菌の99.9%はビフィズス菌です。
ビフィズス菌を摂取すると、大腸内で増殖します。
すると、悪玉菌が減ります。
つまり、腸内環境(腸内フローラ)を整えることができます。
結果、便秘や下痢を改善させます。
そのほか、B.ブレーベ.ヤクルト株には、潰瘍性大腸炎の症状緩和や再発防止作用もあることが報告されています。
下痢型、混合型、ガス型にオススメ!食事療法
過敏性腸症候群に対する治療として、低FODMAP食による食事療法があります。
FODMAPとは、
Fermentable 発酵性
Oligosaccharides オリゴ糖
Disaccharides 二糖類
Monosaccharides 単糖類
and
Polyols ポリオール類
の略です。
FODMAPを多く含む食べ物は、小腸で吸収されにくく、水分を腸内に引き込む作用があります。
また、大腸において、腸内細菌の餌となり、発酵されることで、大量のガスが作られます。
つまり、FODMAPを多く含む食べ物を食べることは、過敏性腸症候群の症状を引き起こすことにつながります。
そこで、FODMAPの少ない食べ物(低FODMAP食)を食べることで過敏性腸症候群の症状を改善できるのではないか?と考えられました。
実際に、オーストラリア、アメリカなどで行われた研究によると、低FODMAP食を1~4週間続けることで70
から80%の人に症状の改善が見られたと報告されています。
- たんぱく質、乳製品
牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉、魚介類、ツナ缶、たまご、ハードチーズ(チェダー、パルメザン、コルビーチーズ、スイスチーズ)、モッツァレラチーズ、クリームチーズ
- 穀物、豆、ナッツ類
米、餅、木綿豆腐、グルテンフリーのパンや麺類、
マカダミアナッツ、ピーナッツ - 野菜
タケノコ、ピーマン、チンゲン菜、きゅうり、ニンジン、セロリ、とうもろこし、なすび、ホウレンソウなどの葉物野菜、カボチャ、レタス、山芋、トマト、ズッキーニ、大根、じゃがいも、もやし、ネギ(緑部分)
- 果物
バナナ、ぶどう、グレープフルーツ、マスクメロン、キウイ、レモン、ライム、オレンジ、金柑、パッションフルーツ、パイナップル、みかん、いちご
- 飲み物
コーヒー、紅茶、日本茶、麦茶
*コーヒーと紅茶は1日コップ1杯まで - 調味料、その他
バター、マーガリン、オリーブオイル、マヨネーズ、こしょう、さとう、しお、メイプルシロップ、マスタード、サラダドレッシング、しょうゆ、酢、バルサミコ酢、ゴマ油、サラダ油
- たんぱく質、乳製品
カッテージチーズ、アイスクリーム、チョコレート、クリームソース、牛乳、コンデンスミルク、エバミルク、ブリーチーズ、リコッタチーズ、ホイップクリーム、サワークリーム、ヨーグルト、ココナッツミルク、ココナッツクリーム
- 穀物、豆、ナッツ類
小麦、小麦粉を使った製品(パン、麺類、ビスケットなど)ライ麦、レンズ豆、ピスタチオ、大豆製品(納豆、みそ、絹豆腐)、カシューナッツ
- 野菜
ねぎ(白い部分)、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、さやいんげん、マッシュルーム、オクラ、エンドウ豆、たまねぎ、にんにく
- 果物
アボガド、りんご、アプリコット、缶詰の果物、さくらんぼ、ドライフルーツ、いちじく、
グアバ、ライチ、マンゴー、洋ナシ、パパイヤ、もも、プルーン、プラム、柿、すいか - その他
ココナッツ、はちみつ、ピクルス、人工甘味料(ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、オリゴ糖
低FODMAP食による食事療法のやり方
1:高FODMAP食を食べない、低FODMAP食を中心とした食事を1カ月行います。
2:症状の改善が認められたら、高FODMAP食を1日1品目、3日に1回のペースで食事に加えて行きます。
加えていく食品は、食事療法を始める前は、食べていた食品からです。
4:食事に加えて症状が、ぶり返す場合は、その食品は、症状を引き起こす原因食品と特定し、今後は、食べないようにします。
5:1カ月食事療法を行っても、症状が改善しない時は、あと2週間続けてみます。
食事療法中は、プロバイオティクス(生きたまま腸まで届く乳酸菌やビフィズス菌)を摂取して、腸内環境の改善にも努めます。
注意!
プロバイオティクスが配合されている飲み物やサプリメントには、腸内細菌を増やす働きを持つプレバイオティクスが含まれている事があります。
プレバイオティクスは、高FODMAPですので、食事療法中は、プレバイオティクスが入っていないものを選びましょう。
※プレバイオティクス
オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸など)や食物繊維の一部(ポリデキストロース、イヌリン等)
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便秘型は、乳酸菌+ビィフィズス菌+オリゴ糖が効果的!
便秘型の過敏性腸症候群では、腸内細菌のバランスを整えるだけでなく、腸内に水を引き込み便を柔らかくする必要があります。
乳酸菌とビィフィズス菌(プロバイオティクス)に加えて、オリゴ糖を摂取すると効果的です。
例えば、ヤクルト400(乳酸菌)とミルミルS(ビィフィズス菌+オリゴ糖)です。
症状緩和に役立つリッラクス法
過敏性腸症候群では、自律神経の乱れが症状を引き起こす原因の1つとなっています。
そこで、乱れた自律神経を整えるリッラクス法を紹介いたします。
筋弛緩法
準備:横になり、腕を体の横に置き、目を閉じてください。
下半身・体幹・上半身・肩の順に、筋肉をほぐしていきます。
1:下半身
つま先を前のほうに押し出して足の筋肉を緊張させ、そのまま、「3」数えます。
数え終わったら、一気に力を抜きます。
2:体幹
背中をそらすように体に力を入れて、そのまま、「3」数えます。
数え終わったら、一気に力を抜きます。
3:上半身
グッと力強くこぶしを作って、力を入れて前に突き出し、「3」数えます。
数え終わったら、一気に力を抜き、下ろします。
4:肩
肩を後ろに引いて首をそらし、あごを前に突き出し、「3」数えます。
数え終わったら、一気に力を抜きます。
これらを数回、繰り返します。
寝る前に行うと、効果的です。
ツボマッサージ
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、活動的な神経です。
逆に、副交感神経は、リラックス神経です。
過敏性腸症候群では、ストレスによって、交感神経が優位になり、自律神経のバランスが乱れています。
そこで、副交感神経の働きを強めるツボを刺激して、自律神経のバランスを整えます。
親指で指圧します。
1:5つ数えながら、押していきます。
2:7つ数えながら、力を入れた状態を保ちます。
3:5つ数えながら、力を抜いていきます。
これを数回繰り返します
1:老宮(ろうきゅう)
左手の生命線と人差し指の延長線と中指の延長線
が交差するところに存在。
2:内関(ないかん)
手首から指2本分肘側。
3:合谷(ごうこく)
手の甲で、親指と人差し指の骨が交差するくぼみ。
まとめ
過敏性腸症候群は、珍しい病気ではありません。
ですが、ストレスが関与しているため、一度発症してしまうと、なかなか治りにくい病気でもあります。
症状が改善しても、ストレスが加わると再発することも多いです。
日頃からのストレスを貯めない工夫が再発防止になります。
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